2023.01.13 17:00

マネスキン、来たる新作『ラッシュ！』はバラエティ豊かなロックアルバムに？　先行曲から高まる、さらなる快進撃の予感

文＝松本侃士

　一方、昨年秋以降のライブで披露している「クール・キッズ」は、まるで「ザ・ロンリエスト」と対極を成すような70年代パンクロック調のナンバーだ。シンプルなコード進行と性急なビートによって豪快にフロアをアジテートしていく痛快な1曲で、すでに同曲はマネスキンの新しいライブアンセムの一つとなっている。これまで彼らは、多種多様な音楽ジャンル／要素を独自のフィルターを通して組み合わせることで様々なマネスキン流ミクスチャーロックを生み出してきたが、「クール・キッズ」は、そんな彼らのこれまでのディスコグラフィになかった新基軸の楽曲となっている。同曲に触れて、最新作『ラッシュ！』がかつてないほどにバラエティに富んだ作品になると予感した人も少なくないはず。「クール・キッズ」は、これまで私たちが熱狂してきた数々の楽曲たちはまだまだ氷山の一角に過ぎないことを示唆しており、新作の全貌、および、このバンドがこれから辿っていく未来への期待がますます高まる。

　続いて、本日配信リリースされた「ゴシップ feat. トム・モレロ」について。何よりも特筆すべきは、メンバーが熱いリスペクトを寄せるトム・モレロ（Rage Against the Machine）とのコラボレーションの実現だ。これまでマネスキンは、The Rolling Stonesやイギー・ポップをはじめとする数々のロックレジェンドとの共演を果たしてきたが、今回のように、尊敬するレジェンドアーティストと共に新曲を制作するのは同曲が初の試みとなる。トムによって鳴らされる重厚なギターリフ＆容赦なく炸裂する轟音ギターソロに刺激を受けるように、ダミアーノの歌声にも情熱が滾る展開に、否応もなく胸が熱くなる。いつかライブのステージ上で両者の共演が実現する日が来ることを期待したい。

マネスキン「ゴシップ feat. トム・モレロ」

　他にも、彼らの独自性の一つであるラップ調のボーカルを今まで以上に鋭く洗練させた「ラ・フィーネ」や、すでにライブで披露済みの必殺ベースリフを基軸とした「ガソリン」も、最新作『ラッシュ！』のラインナップに入ることがアナウンスされており、こうした楽曲名を挙げていくだけで、今作が無尽蔵のエネルギーに満ちた渾身の作品になることがはっきりと分かる。王道のロックンロールバンドが全世界の音楽シーンにおける主役の座に輝いていた時代は何十年も前に終わってしまったが、今作は、再びロックバンドが覇権を奪還する未来が到来することを信じさせてくれる。彼らの今後のキャリアのみならず、シーンの今後の動向をも左右するような重要作になることは間違いないだろう。

マネスキン「ラ・フィーネ」

　そして、最後に書き記しておきたいのは、マネスキンの物語は、現在進行形どころか、まだまだ始まったばかりであるということだ。『ラッシュ！』によって、彼らの2023年以降の快進撃がさらに加速していくことは決定的であるし、同作に揃えられたバラエティ豊かなロックチューンたちは、今はまだリーチできていない層のリスナーにも確実に突き刺さっていくはず。もし、この記事をここまで読み進めてきた読者の中に、まだマネスキンのロックに触れたことがない方がいたら、ぜひ先行配信されている楽曲を聴いてみてほしい。これからロックの新しい王道を切り開いていく彼らと、同じ時代を生き、次々とリリースされる新曲を聴けることは、2020年代のロックリスナーの最高の特権に他ならないと思う。

Måneskin - SUPERMODEL Live - Eurovision 2022