YOASOBI、初の海外ライブで変化した“世界”への意識 「夜に駆ける」から3年、挑戦の2022年を語る
世界に行くことが「夢ではない」と思えた2022年
――英語版EP『E-SIDE』『E-SIDE 2』も海外向けの活動の一つかと思うのですが、どのような思いで制作されたのでしょうか?
Ayase:このEPだけをめちゃくちゃ聴いてほしいというよりは、入り口の一つになってほしい。それこそインドネシアに行った時も、フィナーレで英語バージョンで「夜に駆ける(Into The Night)」と「怪物(Monster)」を歌ったんですけど、ikuraが英語で歌ってるのに、日本語版の方が聴き馴染みがある人が多いからか、お客さんは日本語で歌ってくれていて(笑)。だから、英語じゃなきゃとか、日本語だとだめっていうことはない。僕らが日本語のみではなく、海外の人が理解できる言語でも作っているという事実がすごく大事だと思っています。
ikura:翻訳をしてくれたKonnie Aokiさんが、楽曲それぞれのメロディ、歌詞、音の気持ち良さを、英語版にした時も損なわないように意識してくださっていて。そういった工夫をした上で英語版が受け入れられているんだとしたら、無理に海外の流行に寄せるのではなく、YOASOBIらしくJ-POPをやっていくべきだなと思いますね。
Ayase:僕は歌謡曲が好きだし、自分が小さい時に流れていたJ-POPのメロディたちをベストに美しいものだと思って曲を作っています。その中で、小説が原作だったり、アニメーションMVだったり、曲ごとに音にこだわりをもって作った歌謡的なメロディが、こうやって海外に受け入れられるとは僕も思ってなかったんですけど。でも、僕らが鳴らしている時点で“フロムジャパン”であることはにじみ出ていると思うので、そのプライドは持ったまま、柔軟に向こうの文化や空気感を吸収していく形で幅を広げていけたらと思います。
――今後は海外向けの活動をより重視していくのでしょうか?
Ayase:実はそこまで考えてなかったんですけど、この前インドネシアとフィリピンに行って、フェスのイベンターの方や現地のファンの方と話して、すごく意識するようになりましたね。「いつか世界に」とか、「J-POPも世界に負けないいい音楽だぞ」と言いながらも、自分自身が世界に対して勝手に壁を持っていた、鎖国的意識がひとつ外れた感じがしました。僕含め、日本の文化に自信を持てていなかったりする側面があると思うので、それに対して自信を持てたのは大きいですね。世界に行くことが「夢ではない」と思えたので、2023年以降の動きの中でも活動は考えています。
――2022年はお二人ともソロ活動も充実されていた年だったのではないかと思います。YOASOBIでの活動がソロにフィードバックされる、逆にソロ活動がYOASOBIにフィードバックされていると感じることはありますか?
ikura:YOASOBIの活動をするまで、物語に寄り添って曲と向き合うことはしてこなかったので、ただただ自分の生活で感じたことを書いていた頃と比べると、感受性はすごく豊かになったのかなと。いろんな作品と向き合いますし、主人公の気持ちになっていろんなことを表現して引き出しも増えてきています。ソロとYOASOBIでの活動は、お互いにいい形で影響をしあっていると感じます。
Ayase:YOASOBIは「小説を音楽にする」というある種の縛りプレイをしているので、原作にないことは言えないし、曲にできる幅が完全に決まっている。その中で、「自分はこういうことを言いたいな」と思うものが生まれた時にソロで生かせるので、精神的なバランスが取れますね。
人間、そんなに言いたいことばかりではないじゃないですか。1年にフルアルバム2枚、30曲作ったとしても、そのすべてに明確に強いメッセージを込められるわけではないし、ものすごいドラマが起こることなんて1年に1回あるかないか。「思ったより俺、書きたいことないんだな」と思う瞬間もあります。そういう時に、自分の頭の中じゃない場所から引っ張ってこられたストーリーを軸に曲を作っていくのは、クリエイターとして楽しいですね。どっちにもいいところがあって、どっちにも感じるストレスを発散しあえているのが気持ちいい。
――最終的にYOASOBIとソロ活動、どのようなバランスを目指していますか?
Ayase:僕は2023年以降、ソロもしっかりやっていきたいと思っています。ただ、どちらにウェイトを置くということはあまり考えていなくて。それぞれ真摯に向き合って、その時々で自分が力を注ぎたい注ぎ方で全力を尽くしていきたいと思ってます。理想型で言うと、半々くらいがちょうどいいんだろうなと。
ikura:私はYOASOBIとソロで役割が全く違うので、それをうまく切り替えながらどちらもやっている自分を楽しみたいです。もともとYOASOBIを結成した時はこんな風になると思っていなくて。でも、YOASOBIがあってこその自分があるというのも実感しているので、YOASOBIに追いつけるくらいに自分の活動を並行してできたらいいなと。
「休みたい」けど「休みが欲しい」とは思っていない
――「夜に駆ける」がビッグヒットになって以降、YOASOBIはすごいスピード感で活動されてきたと思います。休みたい、ゆっくりやりたいと思ったりはしませんか?
Ayase:忙しいと感じるし、「休みたい」とも言うんですけど、意外と休めてるんですよ。もちろん制作する頻度や本数は活動当初から考えると増えているので、この量をあの当時やっていたらパンクして逃げてると思います(笑)。でも、今は仕事の仕方に慣れ始めてきていて、「できない時に家に篭っていても、出ないものは出ないから無理」ということにやっと気づいたんです。だから、「休みたい」とは思ってるけど「休みが欲しい」とは思ってない。あと、一カ月とか長期で休暇に入っちゃうと、僕はそこでもう一瞬でブランクに入っちゃって、またペースを戻すのにすごく時間がかかる気がするので、継続的に「あー忙しい」って言ってるくらいの方がいいかもしれないですね。
――ikuraさんはいかがですか? あっぷあっぷされている感覚などは……。
ikura:ありまくりですね(苦笑)。特に今、自分の曲の制作とライブのリハーサルとエッセイと、しかも学生なので卒論を書く時期で、どうやってスケジュール組もう? ってなってます。でも、これまでの3年間がむしゃらに走り続けて向き合って乗り越えてこられたように、一瞬一瞬は忙しすぎて「休みたい」って思っても、一生懸命食らいついて頑張って、後から振り返って「いろんなことをやってきてよかったな、身になってきたな」と思える方が幸せ。3年間通して実感しているからこそ、2023年以降もがむしゃらに走り続ける方が自分には合ってるのかなと思います。
――最後に、2023年の目標や抱負、アリーナツアーへの意気込みなどをお願いします。
Ayase:とにかく健康に気を遣いたい。これからライブも増やしていくつもりなので、ジムでトレーニングを定期にやったり、食べるものとか、お酒も大好きなんですが節制したり。「全然寝れてなくて」って言うのはもうダサいなと思うので、寝て、すっきりした顔で現場に来られるように、自分の生活リズムをコントロールして、「自分の体を自分がちゃんと支配してるんだ」ということを俺の体にわからせる。
ikura:言い方かっこいい(笑)。
Ayase:「俺の体は俺のもんなんだぞ」という。
ikura:本当に体が資本だと思いますね。制作もライブもそうですし、体を壊したらなにもできなくなってしまうので。それに、私は忙しさでワーってなっちゃうタイプなので、来年はメンタルも鍛えていきたいです。制作と並行してライブモードに入らないといけなかったり、他にもやらなきゃいけないことがあったりして、いっぱいいっぱいになってしまうこともあったので、心も成長していけたらと思っています。
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