向井地美音の覚悟から考える、今アイドルに求められるリーダー像 高橋みなみや指原莉乃の発言にも見えた責任の重み

「私がこのグループで生きていくためには、そこしかなかったんです。どのポジションでも、極めるのは難しいことですが、覚悟ができました」

 この言葉は、AKB48在籍当時の高橋みなみが、書籍『涙は句読点 普通の女の子たちが国民的アイドルになるまで AKB48公式10年史』(2016年/日刊スポーツ新聞社)のインタビューで、センターへ返り咲きたい想いを押し殺し、総監督という立場に就いたことで自分の居場所を見つけ出したときを振り返ったものである。

 高橋は、グループの牽引役としていつもすべての責任を背負っていた。彼女が総監督就任時は、メンバーの恋愛スキャンダルによる脱退や処分が相次ぐ混乱期でもあった。スキャンダルが表沙汰になると、高橋はすぐに説明や謝罪の対応をおこなった。さらに就任して間もなく、前田敦子というAKB48を象徴するシンボルも卒業した。総監督としてグループをまとめた高橋は、私たちが想像している以上に気苦労が絶えなかったのではないか。

櫻坂46 松田里奈が新キャプテン就任のプレッシャーを語る

 11月10日、櫻坂46は松田里奈の新キャプテン就任を発表した。しかし松田は、11月14日放送のラジオ番組『レコメン!』(文化放送)のなかで「不安です。『できない』ということが、これからどんどん出てくると思う」とかなりプレッシャーを感じている様子だった。それくらい、日本のトップアイドルグループの「キャプテン」という肩書きは重いものなのだ。AKB48をかつてリードした高橋みなみが話していたように、相当な「覚悟」が必要なのかもしれない。

 かつてHKT48を劇場支配人として引っ張った指原莉乃が、写真集『スキャンダル中毒』(2016年/講談社)のなかで「“引率役”とか“指導役”のイメージで見られることもあって、アイドルとしてのかわいげを出しにくくなるんじゃないかな、と思っていたんですよ」「そっちに重点を置きすぎると、アイドルとしての自分が薄れちゃうのかな、と思ってて」と口にしていたように、自分という個人よりもグループ全体のことを考えて動かなければならない(ただ同書では、それでも応援してくれるファンの存在が支えになったと語られている)。

 牽引役はある意味、アイドルとして捨て身になる必要があることを感じさせる。そういったキャプテン/総監督としてのあり方を強く印象づけたのが、岡田奈々の報道をうけて声明を出したAKB48の総監督・向井地美音である。Twitterでの「今まで曖昧になっていた『恋愛禁止』というルールについて改めて考え直す時代が来たのだと思います」という投稿は、向井地本人も激しい非難を浴びることを想定していたはず。彼女の「覚悟」が伝わってきたコメントだった。

 同時期、向井地はグループが『NHK紅白歌合戦』だけではなく、12年連続優秀作品賞を受賞してきた『レコード大賞』も逃したことを受け、謝罪し続けていた。総監督として現在、彼女がかかえている心労は計り知れないものがある。

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