indigo la End、ドラマとライブが交差する初の武道館公演『藍』 リスナーとの愛と信頼が重なり合った美しい一夜

 11月1日、indigo la Endにとって初の日本武道館公演『藍』が開催された。indigoを意味する“藍”という一文字が公演名に冠されていたことからも象徴していたように、今回の公演には、披露された全25曲を通して結成以降の12年間の歩みを総括するという大きな意義が込められていた。その意味でこの日のライブは、メンバーにとって、そして長年にわたり彼らの音楽を聴き続けてきたリスナーにとって、特別なものになった。この記事では、そのメモリアルな一夜を振り返っていく。

 今回のライブにおいては、俳優の久保田紗友が主演を務めるドラマ映像が各パートの狭間にビジョンに映し出された。「たった一晩の経験が、人生を変えるわけなんかない。そう思っていた。」という言葉から幕を開けた物語は、すぐに時制が過去に遡り、そのまま恋人の男性と過ごした幸せな日々のシーンがフラッシュバックされていく。「このバンド、知ってる? 絶対好きだと思うよ。」「え、なんてバンド?」。主人公と恋人の会話を経て、再び時制は現在へと戻る。そして、「あれから10年以上が経ったのに、なぜか頭の中で懐かしい音楽が流れ始めた」という独白の後に、1曲目として初期の楽曲「sweet spider」が披露される。今回のライブには、ドラマの主人公と観客の心境がリンクする演出が随所に施されていて、まるで自分がドラマの主人公になったような深い没入感を味わった観客はきっと多かったはず。indigo la Endらしい、粋な演出だ。

 

 各メンバーの高い技術に裏付けられた端正な演奏、その重なり合いから生まれる緻密で豊かなバンドアンサンブルは、キャリアを重ねるごとに洗練され続けており、この日も極上のサウンドを高らかに鳴らしてくれた。「悲しくなる前に」における長田カーティス(Gt)のトレモロ奏法、「花をひとつかみ」における後鳥亮介(Ba)の大蛇のようにうねる豪快なスラップなど、それぞれの楽曲に各メンバーの巧みなプレイが織り込まれていて、改めて、このバンドが誇る演奏力の高さを思い知らされる。

 序盤の4曲を経て、再びビジョンにドラマが映し出される。2015年リリースのアルバム『幸せが溢れたら』を指して、「(前のアルバムと)どっちが好き?」と語り合う主人公と恋人。冒頭のシーンも示唆していたように、このやり取りから、 indigo la Endは主人公たちにとって思い出深いバンドであったことが伝わってくる。「もし、このバンドが武道館でライブしたら、焼肉に連れていって」と話す主人公を、恋人の「結婚する?」という言葉が遮る。そしてそのまま「想いきり」「雫に恋して」へ。〈ただただあなたに恋をしてた/ただただ目を見ては/随分長いことそうしてたっけな/片時も忘れずに/あなたを思い出しては/落ちる雫に恋して〉という「雫に恋して」の一節が、このドラマで描かれた恋愛模様と重なるように響き、楽曲の世界により深く引き込まれる。

 続けて披露されたのは、昨年発売のアルバム『夜行秘密』に収録された「夜行」「夜風とハヤブサ」の2曲。ジャジーなピアノの音色や鮮烈なシンセを駆使した最新のindigoサウンドを見せつけた後、再びドラマパートへ。ここで、主人公が大切にし続けているキーホルダーが映し出され、これこそが恋人との思い出の象徴であることが示唆される。indigo la Endの数ある楽曲の中でも、終わってしまった恋愛をテーマにしたラブソングの威力は凄まじいが、特にこのパートで披露された「チューリップ」における〈雲ゆきは  ずっとわかってたけど/一縷の光に期待してたの/私馬鹿だからさ/まだ願いたいよ〉という一節は、ドラマの力と相まっていつも以上に胸に深く染み渡った。

 この日初めてのMCパートで、川谷絵音(Vo/Gt)は、次に披露する楽曲について、「12年間の中で一番、個人的な気持ちを殴り書きしたような歌詞」と紹介した。その極めてパーソナルな楽曲をライブで披露することについて葛藤したことを振り返りながら、今回のセットリストに追加した経緯を明かした。そして、「夜の恋は」が披露される。〈2人は1+1になってしまった/分かってる  分かってるよ/それでも好きだと走り出してしまうくらい〉という胸の内に秘めた切実な想いに、丁寧に輪郭を与えていくバンド演奏が素晴らしく、まさにindigo la Endの真髄のようなライブパフォーマンスに強く胸を打たれた。

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