Nagie Lane、初オーガナイズイベントで見せた成長し続ける“タイミングの精度” 『TCC』第3弾のステージを観て

 euroが時おりマイクを近づけたり離したりしながら一音を出している姿は、自分のPAをしているようだ。マイク1本でどれだけ音の違いやエフェクト的な効果を出せるのかは、アカペラグループの出音を左右する。このグループのリズムを担うヒューマンビートボックスのbarattiとベースのeuroは、それが既存のグループの常識を超えていると思う。2人は、リズムを刻まないバラード以外はとにかく忙しい。他のメンバーも、メインボーカルのスタイルをとる楽曲以外は、歌った後に、ギターや管楽器、キーボードと様々な楽器を入れ替わり立ち代わり担当するため、ほぼ休むところがないのだが、前述したリズム隊の2人は、どこで息継ぎをしているのかと思うほど忙しい。

mikako

 “声だけで表現するシティポップ”というコンセプトだけに限らず、Nagie Laneのパフォーマンスは、かなりトリッキーなのだ。しかしながら、それをあまり感じさせないのが、このグループの非常に面白いところである。全員の佇まいもそうだが、特に女子の笑顔とフレッシュさは、その存在自体がポップで、華がある。この個性は、Nagie Laneの可能性に直結している大切なファクターだ。barattiのハイハットのカウントから、mayuがリードボーカルの「Kiss me dry」へとつなぐ。6人が和音でトーンを合わせるところでは、barattiが他のメンバーに歩み寄り、ステージ中央で全員が一瞬のアイコンタクトをする姿も。通常のバンドの場合、ドラム担当に該当するbarattiが歩み寄っていく姿は、個人的にはハイライトシーンだった。

keiji

 「LA・LA・LA LOVE SONG」の後MCでは、「黒沢さんがつないでくれたご縁で(今日の)ライブを作らせていただいております」とmikako。10月26日に2ndアルバム『待ってこれめっちゃ良くない?(Deluxe Edition)』のリリースと、アルバムを携えた東名阪ツアーを行うことを告げると、会場からはこの日1番の大きな拍手が送られた。続いて、ニューアルバムにも収録されている「ふらぺちる」をパフォーマンス。構成や展開が凝っている、じつにNagie Laneらしいと思わせる1曲だ。人の声だけで成り立っているのが信じられないほど、様々な音が目の前で揺れる楽しさ最上級のこの曲に、観客も身体を揺らしライドオンして楽しんだ。reiがリードをとった初披露の楽曲「あやまらない」では、しなやかなハーモニーを聴かせる。分かりやすいリズムのないバラードでも、音圧が下がらない。Anlyと黒沢 薫を呼び込み、8人で歌ったのはゴスペラーズのカバー「ミモザ」。原曲では黒沢がリードボーカルをとる曲だが、この日、黒沢以外のメンバーが歌う高音のパートを主に担ったのはkeiji。高音でも声を張り上げることなく、柔らかな声質を生かした歌い方に、彼のレンジの幅を感じたり、彼が入ったことでNagie Laneの音圧がボトムアップされたのだと思った。

 「ありがとうございました」とステージを後にした8人。鳴りやまない拍手に再び登場したNagie Laneは、ハッピーでかしましいビートナンバー「ピャバラバ」で揃いのダンスを披露した。最後はこの日の前日が誕生日だったbarattiを観客と一緒にお祝いし、3回目の『TCC』は幕を閉じた。

 4月に渋谷ストリームホールにて開催したワンマンライブ以降、様々なイベントに出演しライブを重ねてきたNagie Lane。この夏には複数のフェスも経験した。その成果が全員の“タイミングの精度”に表れていたステージだったと思う。一斉に歌い出すタイミング、リズム隊のタイミング、各メンバーの出す音の切り替えのタイミング……そんなすべてのタイミングが合うことによりバンドらしさが増したし、グルーヴも強くなったと思う。今が成長期だとしたら、これからどれほど成長するのだろう。そう思うと楽しみでならないが、まずは今のNagie Laneをまもなくリリースのアルバム『待ってこれめっちゃ良くない?』で、確かめてみたい。

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