宇多田ヒカルが2022年に見せた飽くなき姿 コーチェラ出演や積極的な国内メディア露出を振り返る
そもそも前述したフェスへの出演も彼女が見せている変化の一つだろう。『VOGUE JAPAN 2022年7月号』でのインタビューで本人も「キャラ的にも歌唱法にしても、私はあまりフェスに向いているタイプではないし、きっかけもなかった」と話しているが、あのような開放感のある場でパフォーマンスする彼女の姿は今まで見たことがない。それだけでも、いかに今の宇多田ヒカルが大きな変化を迎えているかがうかがえる。同誌で「メインステージで歌うという経験を、アーティストというより人生経験として得ておかないと、という思いでした」とフェスに参加した理由を答えているが、これはいわゆる“人間活動”の延長線上にある感覚のようにも思えるし、シンプルに変化〜進化することへの前向きな姿勢とも受け取れる。
そんな中、8月28日深夜には『SONGS OF TOKYO』(NHK総合)に出演した。グローバルな人気のある彼女には打ってつけの発信の場と言える。そこで「自分と向き合うことの怖さ」について聞かれた彼女は「怖いですよね。でも今まで怖いなって思ったときになんでだろうって考えて、そこに突っ込んでいくと得るものがいっぱいあったんです。むしろ怖くないことばっかりしていたら成長はないじゃないですか」と成長することへのポジティブな意識を明かした。彼女のようにすでに盤石な評価を獲得したアーティストであっても、いまだに前進することを止めないその貪欲な姿勢に、純粋に驚かされた。
そして29日には『CDTVライブ!ライブ!』夏の4時間スペシャル(TBS系)に登場。「君に夢中」(TBS系ドラマ『最愛』主題歌)をテレビ初披露した。宇多田作品ならではの浮遊感のあるピアノのアルペジオに対して、現行のヒップホップの影響を多分に感じさせるリズムやフロウが複雑に絡み合うことで、結果的に“言葉”が観る者にストレートに飛び込んでくる。神聖さがありながらもパンチが効いており、その絶妙なアンバランスさに終始惹き込まれる素晴らしいパフォーマンスであった。
国内のメディアに宇多田ヒカルが立て続けに現れたこの夏。そこには、まだまだ変わり続けようとしている飽くなきアーティストの姿があった。そして、日本にいると意外と気づけない日本のことを、彼女の言葉を通して気づかされた気がした夏でもあった。
■関連情報
『SONGS OF TOKYO Episode 35 - 宇多田ヒカル』
日:https://www.nhk.or.jp/songsoftokyo/ja/
英:https://www.nhk.or.jp/songsoftokyo/
2022年10月26日(水)まで視聴可能
宇多田ヒカル『BADモード』
・ダウンロード&ストリーミング:https://erj.lnk.to/U36YCj
・CD:https://erj.lnk.to/B12skU