櫻坂46、日向坂46からバトン受け取り『W-KEYAKI FES. 2022』完結 尾関梨香&原田葵が卒業、グループの現在地伝えた公演に

 櫻坂46はつくづくドラマ性に満ちたグループだなと、この1カ月で実感させられた。7月21〜24日に開催予定だった『W-KEYAKI FES. 2022』のうち、櫻坂46が出演予定だった22日&24日の公演が複数メンバーのコロナ感染により開催中止。日向坂46が予定どおり21日&23日の公演を敢行し、「櫻坂46さんの分も魂や気持ちを背負って、『W-KEYAKI FES.』を盛り上げていきます!」(佐々木久美)と盟友たちへのエールを送った。

 当初は24日公演で尾関梨香&原田葵の卒業セレモニーを行なう予定だったこともあり、これによって2人がメンバーとともに過ごす時間も延びることに。そして、同会場での『W-KEYAKI FES. 2022』振替公演が8月19、20日に開催できることが決まる。欅坂46一期生としてグループに加入した尾関と原田にとって、8月20日に最後のライブを行うというのも非常に興味深い。というのも、翌21日は2015年に欅坂46(当時は鳥居坂46)最終オーディションが実施された日であると同時に、欅坂46結成記念日でもあるからだ。卒業を控えた2人にとっては、今回の振替公演は当初計画されていたもの以上に強い意味を持つ2日間になったことだろう。

 日向坂46がつないだバトンをしっかり受け取り、当初の予定から1カ月遅れで開催された『W-KEYAKI FES. 2022』櫻坂46公演。残念ながら、直前に関有美子が体調不良による休演を発表し、21人で臨む形となったが、初日の19日公演は天候に恵まれたこともあり、終始笑顔が印象的なステージが繰り広げられた。特にこの日はけやき坂46/日向坂46のライブ定番曲「NO WAR in the future」がカバーされ、キャプテンの菅井友香がセンターとして大活躍。また、アンコールでは8月3日に発売されたばかりの1stアルバム『As you know?』からリード曲「摩擦係数」、一期生楽曲「タイムマシーンでYeah!」が披露されるなど、日向坂46へのリスペクトを伝えつつ現在進行形のグループの姿を見事に提示してみせた。

 尾関&原田の卒業セレモニーを含む20日公演は、開演前から広大な空が厚い雲で覆われ、ライブが始まる頃には小雨がぱらつき始める。そんな中、尾関&原田が「最後まで一緒に素敵な思い出を作りましょう!」と元気いっぱいの影アナを務めると、会場の熱気も急加速。そのままオープニング映像へと突入し、桜色のジャケットに白いシャツ、スカート姿のメンバーがステージから登場する。ライブのオープニングを飾るのは、日向坂46公演同様に「太陽は見上げる人を選ばない」。欅坂46&けやき坂46時代、「W-KEYAKIZAKAの詩」同様に2組が合同で歌った数少ない楽曲のひとつだ。共通の衣装(日向坂46はジャケットが空色だった)を着てこの曲からライブを開始することは、オープニング映像にあった「伝説は、1本の欅から始まった」というメッセージとリンクするものがあり、同じ1本の木から枝分かれをして独自の色をつけていった2組の姿を体感するにはうってつけの演出ではないだろうか。

 そんな思いに耽っていると、メンバーが一度退出。改めてライブのオープニングSE「Overture」が爆音で流れ始める。2組が大木の根っこを冒頭で見せ、その後いかにオリジナリティを確立していったかを証明してみせる……以降のセットリストは、そんな櫻坂46の強い意志が伝わるものだった。

 動きやすい衣装に着替えたメンバーは、センターの山﨑天を中心に「Buddies」でライブを本格的に開始。普段は公演のクライマックスで披露される機会の多い「Buddies」だが、歌詞の内容的にもライブの幕開けにふさわしい1曲だと言える。尾関と原田も卒業メンバーのポジションに加わることで、同曲のパフォーマンスに参加(今回のライブでは、特に2人の出番が多く用意されていたように感じる)。その流れから「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」へと続くと、会場のボルテージも一気に高まり、『欅共和国』時代からお馴染みのウォーターショットが天高く打ち上げられることで、ライブに対する高揚感はさらに増していく。この2曲だけで早くもハートを鷲掴みにされた、というBuddies(=櫻坂46ファンの総称)も少なくなかったはずだ。

 最初のMCでは、菅井が「今回の『W-KEYAKI FES.』、一度は断念せざるを得ない状況になってしまって申し訳ない気持ちだったんですけど、本当にたくさんの方々のおかげで、こうして最終日を迎えることができました。あのとき、日向坂のみんながつないでくれたバトンを受け取ることができて、こうして最終日を迎えられて、本当にうれしい気持ちでいっぱいです」と感謝の気持ちを伝える。続いて、欅坂46時代にはお約束となっていた「尾関はどう?」という“振り”が繰り出されると、「きたーっ!」と破顔した尾関が「これも今日で最後だよ(笑)」と切り返す。そして、「寂しい気持ちもあるんですけど、今はBuddiesの皆さんとメンバーと、すべての皆さんでたくさん笑って過ごしたいなと思います」とライブへの意気込みを語り、続けて原田も「メンバーと、配信をご覧になっている皆さんとここにいるBuddiesの皆さんとで、雨を吹き飛ばしたいなと思います!」と力強く宣言した。

 その後は「Microscope」「それが愛なのね」と、前日のセットリストに含まれていなかった楽曲を連発。1年前は持ち曲が少なかった彼女たちも、さらにシングル2枚とアルバム1枚を重ねたことで、連日のライブでもセットリストを組み替えることができるようになったことが、この日の公演からも窺えた。特に後者では会場中の回廊に散ったメンバーが、ホースや水鉄砲を使った放水やCO2噴出でBuddiesと笑顔の交流を深めていく。雨脚が少しずつ強まっている状況ながらも、この“夏の風物詩”的光景を前にしたらもはや天候は関係ないのかもしれない。

 序盤はアップテンポで幸福感の強い楽曲が続いたが、ここからは現在の櫻坂46らしい緩急に富んだ流れに突入する。まずは、切なさを伴うピアノハウスをバックに櫻エイトによるダンストラックパート。冒頭で森田ひかる&山﨑がシンクロ度の強いペアダンスで観る者を魅了すると、続いて小池美波、小林由依、田村保乃が豪快なダンスを繰り広げるなど、個々の技量の高さと一体感の強さが伝わる、終始見応えのあるパフォーマンスを楽しむことができた。その流れから、藤吉夏鈴センターの「偶然の答え」へと続くのだが、ここで序盤の空気が一変。メンバーは強弱はっきりしたパフォーマンスと微細な動きを見せる表情で、楽曲の放つ切なさを見事に表現していく。中でも、藤吉の表現力には終始目を奪われ、曲披露を重ねるごとにその説得力がどんどん増していることに気づかされた。

 新たに加わったピアノイントロダクションから「五月雨よ」へと流れる構成も、この公演の見どころのひとつだっただろう。雨がどんどん強まることで、楽曲の世界観がさらに強調されることとなった、と感じたのは筆者だけだろうか。前回の『W-KEYAKI FES. 2021』では櫻坂46単独公演のみ雨や濃霧という悪天候に見舞われたが、結果としてそういった状況も演出として味方したこともあり、どんな状況に陥ってもすべてプラスへ転化させる力も櫻坂46の魅力のひとつと言えるのかもしれない。

 ウォーターショットや放水が加わったことで、よりパーティ感が増した「思ったよりも寂しくない」を経て、前日には披露されなかった「無言の宇宙」をパフォーマンス。ここでは卒業した渡邉理佐に代わり、原田がセンターを務めたことでBuddiesを歓喜させる。陽が落ち始めた薄暗い環境と雨というシチュエーションが、この曲が持つ切なさを強調し、さらに自身も卒業を控えた原田が中央で歌うことによりさらに儚いものへと昇華。今このタイミングにしか出せない空気と相まって、より感動的な仕上がりとなった。

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