フジロック不参加でもSNSトレンドに 鈴木雅之、中村佳穂、clammbonらによるYOASOBIへのエール

 鈴木と同日、フェス最終日に出演した中村佳穂もまた、YOASOBIの音楽を苗場に轟かせた一人だ。冒頭「GUM」のパフォーマンスの流れで「夜に駆ける」のフレーズを差し込んだ場面は、現地、配信問わず、観た者を少しばかり驚かせた。ほぼ即興に近い形での歌唱だったため、中村自身がどのような意図で歌ったかはわからない。だが、鈴木雅之と等しく、そこにはアーティスト同士でしかわからない感情が込められていたように思う。“きっとこの曲をここ(苗場)で歌いたかった”はず、そんな思いが中村のパフォーマンスからは感じられた。

 YOASOBIの出演がキャンセルとなり、フェス開催のわずか5日前にオファーを受けたのがclammbonだった。3人は自らの持ち曲と共にYOASOBI「優しい彗星」を1コーラスだけカバー。原田郁子(Vo/Key)の声のせいか、一瞬clammbonの新曲かと思ったが、ミト(Ba)と伊藤大助(Dr)が音を重ねることで「優しい彗星」の輪郭がはっきりと見えてきた。演奏後、「フルコーラスは彼らがここに戻ってきた時に取っときましょう」とミトが語ると会場は温かい拍手に包まれた。

 SNSのトレンドにもなった3組のパフォーマンス。鈴木雅之による力強く斬新な「怪物」、中村佳穂でしか歌うことのできない即興的な「夜に駆ける」、たおやかに披露されたclammbonの1コーラスだけの「優しい彗星」。YOASOBIがいないフジロックだったが、不思議とYOASOBIがいたフジロックであったように感じたのは、こうしたアーティストたちによる“ささやかなエール”によるものだ。

 来年以降、カバーされた3曲、そしてさらなるアンセムを従えて、苗場にYOASOBIの2人が登場する瞬間が今から楽しみだ。

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