“特別”から“いつも”のフジロックへ 2020年中止の決断、今年のラインナップの狙いまで運営スタッフに聞く

2022年にフジロックを開催する意義とは?

ーー今年はアルコールの提供が復活しますよね。メリットとデメリット両方あると思うんですが、決められた背景には何があるんですか?

藤川:去年と同じようなコロナの状況だったら、たぶんできなかったです。だいぶ下火になってきて、今だから(提供に)踏み切れたっていうのはもちろんあるんですけど、去年は多くのルールに縛られたがんじがらめのフジロックだったわけで、それを“特別なフジロック”としたんですけど、もともとフジロックってあまりルールづけしない、お客さんを信用して一緒に作っていくところが理念としてあったので、ルールで縛るものじゃないところに戻すのが “いつものフジロック”の一番大きなところですね。でもいきなり全部戻すわけにはいかなくて、世の中の状況と折り合いをつけながらやっていかなくちゃいけない。今の状況でできる最大限のところまで戻していくようなイメージが、 “いつものフジロック”で目指すところです。

ーーRED MARQUEEの深夜枠の復活も喜びの声が上がっていました。

藤川:頑張りました。今年は去年に引き続きPALACE OF WONDERの開催がないんですけど、RED MARQUEEは去年、(夜の)12時で終わってもう何もない状態だったので。今年は(朝の)5時までやりたいっていう、強い社員の希望で(笑)。これは6月頭ぐらいに決まったんです。

ーー直近ですね。

藤川:そうなんですよ。その時まではそれそれ2時までだったんです。それから関係各所との交渉の末、3時間延ばすことができ、めでたく5時までにしましょうと。 

ーー出演者に関しても、RED MARQUEEの深夜枠をやるぞとなってからのブッキングですよね。

藤川: ブッキングスタートが6月頭からだったので、さすがにそこから海外のアーティストを呼べなかったのは残念なんですけども。それでも日本を代表するアーティストの方々にご協力いただいて、例えば田中フミヤさんと石野卓球さんが並ぶのはなかなかレアですよね。

ーーGypsy Avalonのラインナップも発表されて。フジロックに行って初めて社会的なことに興味を持ったという人も多いですよね。

藤川:もともとそれが日高の狙いでしたからね。音楽を聴きにきて楽しくやってる中で、心が開かれている状態で何かきっかけを提供したいねっていう。やっぱり社会の状況を伝えられるきっかけを作るのは、あれだけのお客さんに来ていただく、ものを作る主催者側の役目でもある。それは私たちも日高の言う通りだと理解して、ずっと続けてきている感じですね。

ーー本当にそうだと思います。

藤川:ところで、大阪でフジロックのイベントを開催していたのですが、そこで新潟から取り寄せて提供しているもち豚と一緒にビールも味見したんですけど、今年のハイネケンは美味しかったです(笑)。

ーーそれは楽しみですね(笑)。コロナとの付き合い方がわかってきた3年目ですけど、その状況の中でフジロックを開催することの意義を聞かせていただけますか。

藤川:これは自己中心的な言い方かもしれませんが、我々の立場からしてフェスティバルを開催しない=仕事をしてないことになるんですよね。我々はフジロックを生きがいに感じて、そのために時にしんどいことをやって、喜びを分かち合ったりしている。だから2020年に開催できなかった時のことを考えると、生きた心地がしないんですよね。なので、今年フジロックを開催する意義は何かと言われれば、個人的にはそうした思いがあるからということになりますね。会社としてはやっぱりフェスティバル、イベントの灯火を消さない、続けていくっていうのももちろんありますし、今後10年、20年、そのまた先のことを見据えながら、今何をしないといけないのかというのをもう一度考え直したいです。それこそ“いつものフジロック”をもう一度考えないといけないんじゃないかなと思いますね。

 話は少し逸れますが、実は僕、3歳から16歳ぐらいまでずっとクラシックをしていたんですよ。クラシックって200〜300年前に作られた曲があって、作曲家がいて何人も何人も受け継いで今に至っている。曲とイベントは全然違いますけど、今後フジロックがもし一つの文化になれるのであれば、日高が始めた「フジロック」というリレーのバトンを受け継ぐ人の一人になりたいと思ってます。そして我々の次の世代、そのまた次の世代にその文化をどんどん受け継いでいってほしい。その歴史の中でもしかしたら形は変わっていくかもしれないですけど、こんなにも我々がいいと思うものを後世に受け継いでいけたら嬉しいですし。改めて、今年フジロックを開催する意義はそこですかね。

ーーでは今年参加しようとしてる方に伝えたいことは?

藤川:去年に引き続きお越しいただく方々に対しては、もう本当に、昨年はお金や労力、時間を費やしていただいたにも関わらず、不自由な思いや負担ばかりをかけてしまって本当に申し訳ないと思ってます。今年ご来場いただける方々は深夜のステージ、そしてお酒の提供も復活しました。広大な敷地で、数多くのアーティストのライブ、それ以外にもトークやご飯、それに自然など、いろんな出会いがあると思います。胸をワクワクさせながら、楽しいフジロックに来てください。マスクに関しても先日ガイドラインを発表しました。人混みを避けれる場所を見つけてマスクを外して、苗場の澄んだ美味しい空気をいっぱい吸い込んでください! そしてコロナ対策ばかりに注目が集まってますが、苗場は自然豊かです! 2019年までのフジロック同様に雨対策や気候・気温の変化など激しいので、くれぐれも健康に安全に気をつけてお楽しみください!

■イベント情報
『FUJI ROCK FESTIVAL’22』
2022年7月29日(金)・30日(土)・31日(日)新潟県 湯沢町 苗場スキー場
主催:SMASH CORPORATION
企画・制作:SMASH CORPORATION / HOT STUFF PROMOTION

『FUJI ROCK FESTIVAL’22』公式サイト:https://www.fujirockfestival.com

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