『AIR JAM』以降の“バンド主催フェス”がロックシーンにもたらした意義 『京都大作戦』『京都音楽博覧会』を中心に考察

 もうひとつ、『京都音楽博覧会』と『京都大作戦』が作り上げた、現在のバンド主催フェスから感じるひとつの流れに、「世代やジャンルの壁を越えたバンド同士の繋がりが見える」ところがある。そこには、そもそもくるりは音楽のアンテナの感度が高く、10-FEETはミクスチャーロックが出自という、それぞれの趣向が関わっている。あくまで個々のものであった両者の音楽的趣向が、フェス全体の流れに繋がっていった理由には、時代における音楽の聴き方の変化が重なったところにあると思う。それまではレコード屋で好きなジャンルの新譜の棚を漁るのが常だったけれど、2010年代から徐々に、ストリーミングで時代もジャンルも分け隔てなく音楽を聴く人が増えていった。その傾向と、近年のフェスのボーダレスなラインナップはマッチしている。それこそ『AIR JAM』に遡ると、出演バンドは「AIR JAM系」と呼ばれるほど、ひとつの世代とジャンルを象徴していた。実は様々な世代とジャンルのバンドが出ていたので、無理やりな括り方だったとは思うけれど、今となっては、ひとつのフェスのラインナップを指して「○○系」とは呼べないはずだ。

くるり - 潮風のアリア | Live from 京都音博2021

 そもそも「AIR JAM系」というのは周囲が言い出した言葉だし、以前も今もバンド側はそこを意識していないのかもしれない。そして『AIR JAM』の頃から、バンド主催フェスにおいて「バンド同士のリスペクトが見える」ところは変わっていないし、きっとバンド自身は、そこをシンプルに大事にしているだけなのだと思う。それが見えるのが気持ちよくて、ちょっと羨ましくて、私たちは足を運ぶのだ。今夏も、バンド主催フェスならではの、数々のドラマが生まれるはず。待った分だけ期待は高まる一方! 楽しみで仕方がない。

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