日向坂46 渡邉美穂、“ハッピーオーラ”体現した5年間の集大成 メンバー22人が勢揃いした愛溢れる卒業セレモニー

 アンコールでは空色のドレスに身を包んだ渡邉が、ひとりステージに登場。ここで何を話すかを事前に考えられず、ステージに立ったときの感情を伝えようと決めたという渡邉だったが、この5年間の活動で感じたこと、メンバーやスタッフ、家族、そしておひさまへの感謝などを15分近くにわたり吐露した。すべてを文字に残すことはしないが、個人的に特に印象に残ったのが握手会でのファンとのやりとりに関して。

「私に向かって涙ながらに、『美穂ちゃんのおかげで、人生が変わったんだ』と言ってくれて。『すごく苦しいことがあったけど、それを乗り越えることができた』って、涙を流しながら伝えてくれるんです。それを受け取ったとき、『自分は誰かのためになれていたんだ』『自分がかつて憧れていたアイドルの方々から生きる希望を与えられたように、私も誰かの希望になれているんだ』と(気づかされた)。もし私の存在にひとりでも救われた人がいたら、それだけで私はアイドルになってよかったなと思います」

 この言葉を聞いて改めて、彼女はファンによってアイドルになることができたんだなと実感した。きっとこの連鎖が、この先も新たなアイドルを生み出していくのだろう。これまでさまざまなアイドルの卒業ライブで、観る者の記憶に残る名スピーチはいくつも目にしてきたが、この日のスピーチもアイドル史に残る素晴らしいものだったと断言したい。

 その後、同期メンバーが加わりトークを繰り広げると、渡邉へのサプライズとして二期生8人と三期生の上村が「君のため何ができるだろう」をプレゼント。この日のために富田がピアノ伴奏を練習したというこの曲は、その場にいる者すべての涙腺を刺激する感動的な1曲となった。

 そして、ステージ上にメンバーが勢揃いすると、小坂や髙橋が渡邉との思い出を口にする。特に小坂はグループ加入当時、渡邉とともに先輩に混ざって活動することが多かったことから、同じ感情を共有することができて心強かったと話し、「(昨年から今年にかけての休養中も)ずっと美穂が私を離さないでいてくれて。それは私がここに戻ってくるきっかけにもなったし、もしそれがなかったら私は今、ここに立ててないかもしれないな」と涙ながらに本音を吐露した。また、髙橋も一緒に「Right?」を披露できた喜びを口にしつつ、この日の髪型がドラマ『声春っ!』(日本テレビ系)で渡邉演じる尼崎あまねを意識したものだと明かした。

 いよいよ次が、渡邉が日向坂46として最後にパフォーマンスする楽曲だ。佐々木久美は「私たちはずっと美穂の味方だし、おひさまも味方してくれるから、胸を張ってこれから先の人生を頑張ってください」とエールを送るも、「私が『次の曲』って言ったら、終わっちゃうんですよ……」と涙ぐむ一幕もあったが、最後の最後に「JOYFUL LOVE」で会場が虹色に染まり大団円を迎えた。

 最後の挨拶を終えると、客席から「5年間ありがとう」と記された紙が掲げられるサプライズが。この思いもしない光景を前に、渡邉は「私の大好きな日向坂46を、私が5年間いたこのグループを、これからも皆さんで守り続けてください。ありがとうございました!」と笑顔で思いを伝えてステージをあとにした。

 筆者がけやき坂46二期生で最初にインタビューしたのは小坂と渡邉であり、2020年からは『日経エンタテインメント!』で約2年半にわたり渡邉の連載『日向坂46・二期生 渡邉美穂の今日も笑顔で全力疾走』の構成を担当してきた。この卒業セレモニー前日に発売された書籍『私が私であるために』でも新規書き下ろしパートの構成を手掛けており、彼女のグループ愛や同期への並々ならぬ思いは事あるごとに耳にしてきた。その中で、彼女はかなり初期から「先輩と同期の橋渡し的存在」「一期生さんと三期生の潤滑油」と自分の役割を表現してきた。実際、彼女はその役割を見事に全うできていたし、だからこそこの卒業セレモニーでも先輩、同期、後輩から愛あるメッセージや感謝の言葉が伝えられる場面が多かった。そんな稀有な存在がグループを去ることで、日向坂46はここから新たな転換期を迎えることになるのではないだろうか。それは、誰かが渡邉の役割を務めるのではなく、個々の意識の変化によって新たな関係性を築いていくことになるのではないか。特に新メンバー加入を控えたタイミングだけに、そう感じずにはいられない。

 と同時に、誰からも愛されてきた渡邉だからこそ、この先新たな世界へ飛び込んでいっても成功できるはず。そう楽観視している自分がいる。と同時に、この卒業セレモニーを通じて再確認できた彼女のさまざまな個性・魅力は今後さらに増幅して、新たな世界で開花していくことだろうーーラストステージを通してそう強く実感したおひさまは少なくないはずだ。渡邉美穂の今後のさらなる活躍に期待しつつ、このテキストを締めくくりたい。

■セットリスト
日向坂46『渡邉美穂 卒業セレモニー』
2022年6月28日(火)東京国際フォーラム ホールA

00. OVERTURE
01. ハッピーオーラ
02. やさしさが邪魔をする
03. あくびLetter
04. 半分の記憶
05. 沈黙が愛なら
06. 青春の馬
07. それでも歩いてる
08. Right?
09. 僕なんか
10. NO WAR in the future 2020
11. 恋した魚は空を飛ぶ
12. 誰よりも高く跳べ!2020
13. 飛行機雲ができる理由
<アンコール>
14. 君のため何ができるだろう
15. JOYFUL LOVE

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