Penthouse、ゴホウビ、daisansei……男女混合バンドが生み出す、ジャンルでは切り取れない“色合い”

 「バンド」というものは色々な切り口から切り分けることができるが、ざっくりいうと大きな切り口は二つあると思っている。ひとつは、ジャンル。ロックやジャズ、あるいは、メタルやハード、ポップやフュージョンといった、そういう類のもの。もうひとつの切り口は、バンドの形態。例えば、キーボードがいるバンド、6人組のバンド、といった類のもの。後者の切り口でバンドを分けてみると、ジャンルで切り分けたときとは違う方向性や見通しが見えることがある。そんな中でも、近年、目立っている印象を受けるのが“男女混合”という形態だ。

 もちろん、男女混合バンドといってもケースはいくつかある。ヤバイTシャツ屋さんやAwesome City Clubのように、明確な男女ツインボーカルで魅了するバンドもいれば、サカナクションやSaucy Dogのように、女性コーラスをここぞの場面で入れることで、楽曲の中に個性を際立たせているバンドもいる。あるいは、JUDY AND MARYや東京事変のようにボーカルが女性で、脇を固める楽器隊が男性という構図もある。当然ながら、ジャンルとは違う区分けなので、ジャンルとして捉え直すと、どれもバラバラには見える。が、こういうメンバー構成だからこそ表現の中に光が指している、そんな印象も受けるのだ。

 そんな前置きをしつつ、今のバンドシーンで熱いと思う男女混合バンドをいくつか紹介してみたい。

 まず、もっとも注目を集めている気鋭の男女混合バンドといえば、Penthouseではないか。洒脱で煌めきに満ちた都会的なサウンドと、鮮やかに混じり合う男女ツインボーカルが印象的な6人組バンドである。「...恋に落ちたら」や「恋標」に代表されるように、J-POP的な構成をより洗練させたメロディが印象的で、耳触りの良さとカラフルかつ上質なポップ性では定評のあるバンドだ。メロディが美しいからこそ、男女ツインボーカルの掛け合いが、ドラマチックで、華やかに響いている印象を受ける。

Penthouse - 恋標 / Signpost [Official Music Video]

 次に紹介したいのが大聖堂。ジャンルで区分けするとPenthouseと並ぶことはなさそうなバンドだが、男女の歌声が混じり合うことで生まれる繊細さと鮮やかさには通ずるものがある。サウンドでは、白黒写真が似合いそうな、懐かしさを感じさせる音色と柔らかいタッチのアンサンブルが魅力的なバンドだ。「チークタイムは踊らない」や「愛の惑星」など、薄暗い照明で照らされたジャズバーなどで演奏したら映えそうな艶やかさがある。ただ、バンド全体で楽曲を捉えると、単なる懐メロにはなっていない。その背景には、山本康博(Vo/Gt)の歌声に、尾花佑季(Key)のコーラスが合わさることで生まれる、メロディの奥深さがひとつの要素になっている印象を受ける。

大聖堂 - チークタイムは踊らない [Music Video]
大聖堂 - 愛の惑星 [Music Video]

 daisanseiも要注目の男女混合バンドである。自身のルーツをサウンドに色濃く出すバンドで、シンプルに見えてテクニカルなサウンド構成を楽曲に投じる。サウンドそのもので魅せるというよりも、楽曲の中心には研ぎ澄まされたメロディラインがあり、歌そのものの強度も強いのが特徴になっている。個人的には、サウンドのこだわりとメロディの美しさの両立のさせ方に、くるり的なエッセンスを勝手ながらに覚えている(思えば、くるりもまた、一時的に男女混合の時期があったバンドである)。

daisansei - ルートユー(Official Music Video)

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