櫻坂46、渡邉理佐卒業コンサートはグループのターニングポイントに ライブの“見せ方”から感じた変化

 さて、その櫻坂46“以外”の楽曲というのが欅坂46時代の楽曲であり、22日公演では全20曲中8曲(うち1曲は4曲分のメドレー)を占めるという予想以上に多くの欅坂ナンバーが披露された。巨大なLEDスクリーンに映し出された緑色の欅の木を前に、じっと佇む渡邉。この時点で、古くからのファンには感慨深いものがあったことだろう。そして、彼女が右手をそっと上げると、彼女の左側に1期生8人による“土生タワー”があることに気づく。多くのBuddiesの予想通り、ここで「二人セゾン」が投入される。奇しくもこの日の会場は、欅坂46がラストライブを無観客配信で行った国立代々木競技場第一体育館。その思い出の場で、あえて1期生9人のみでパフォーマンスし、センターを渡邉が務めるという頼もしさは、かつて感じたことがないほどに感動的なものだった。

 21日公演こそ、アンコールラストに「風に吹かれても」が選出されたが、それ以外の欅坂46時代のシングル表題曲は「世界には愛しかない」のみ。初日の「手を繋いで帰ろうか」、2日目の「僕たちの戦争」、そして2日共通の「青空が違う」「制服と太陽」「太陽は見上げる人を選ばない」「危なっかしい計画」といった楽曲は、大多数が思い浮かべる欅坂46のパブリックイメージとは異なるテイストのものばかりだが、もちろんこれも欅坂46らしさに満ち溢れた楽曲たちばかり。櫻坂46のテイスト、そして卒業ライブというテーマ、さらに現在の渡邉のモードを踏まえた上でこうした選曲になったのだとすると、非常に合点がいく。実際、「二人セゾン」はもちろんのこと、「世界には愛しかない」や「風に吹かれても」、そして「太陽は見上げる人を選ばない」は現在の櫻坂46にもピッタリだったし、何より今このタイミングにこそ歌うべき歌詞ばかりだという事実にも気づかされたのだから。そんな中、1期生の面々が過去を振り返りながら歌っているようにも見えた「制服と太陽」は、その曲調と演出(これまでの思い出の写真が次々に映し出される)によってこの上なくノスタルジックな仕上がりだったことも付け加えておく。

 驚きの連続だった欅坂46ブロックを終えると、ライブ後半は再び2期生も合流した櫻坂46ブロックへ。ここでは森田ひかる、藤吉夏鈴、山﨑天といった各曲のセンターメンバーがその存在感を遺憾なく発揮(同様に、序盤に披露された「流れ弾」における田村保乃も、だ)。曲ごとに表情や醸し出すオーラを自在に操る森田の存在感や、「五月雨よ」で得た経験が良い方向に作用し始めている山﨑のフレッシュさはもちろんだが、この日は何よりも藤吉の表情、パフォーマンスにおける表現力の豊かさに目を奪われた。渡邉から溺愛されていたことも大きく作用していたのかもしれないが、「偶然の答え」「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」とタイプの異なる楽曲を立て続けに披露しても、曲ごとの表現の変化が実に見事なもので、この2曲では彼女の一挙手一投足に夢中だった。この2日間、藤吉がどんな気持ちでライブに向き合ったのかは本人にしかわからないが、この経験を経て彼女がこの先どんな進化を見せるのかが楽しみでならない。

 もちろん、ここに触れていない2期生もそれぞれにかつてないほどの強いオーラを放っており、もはや1期生に負けないほどの存在になっていることも再確認できた。渡邉は卒業を決意した理由のひとつとして、2期生の成長と頼もしさを挙げたが、この2日間のステージでの佇まいを見ればそれも納得できる。と同時に、そんな後輩たちに対して、時には直接アドバイスを送り、時には背中で思いを伝えてきた渡邉が2期生から愛されていることも、ライブ中のMCなどから十分に伝わってきた。そういった姿勢は、まさに欅坂46時代の円陣時の掛け声にあった「謙虚、優しさ、絆」そのものだと気づかされる。

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