増加する“対バン”ライブ、その理由は? アーティストと観客、それぞれの目線などから考える

 新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とする行動制限がなかった今年のゴールデンウィーク。『ARABAKI ROCK FEST.22』『VIVA LA ROCK 2022』『JAPAN JAM 2022』など、各地で音楽フェスが開催されたが、現時点ではクラスターなどは報告されていない。それは、これまで継続してきた厳しい感染対策、そして出演者、来場者、イベントスタッフらによる努力がもたらした、ライブシーンにおける一つの成果と言えよう。

 未だ予断を許さないが、ライブシーンは少しずつその勢いを取り戻し始めているように思う。そんな中、いわゆる“対バン”形式でのライブやツアーが数多く開催されている。すでに開催中、また今後行われるものも含めると、一部ではあるが以下のようなラインナップが並ぶ。

<主な対バン形式でのツアー/ライブ>(開催月:ゲスト)

・yama×ACIDMAN(5月)
・flumpool(5〜6月:sumika、高橋優など)
・サンボマスター(6月:My Hair is Bad、Vaundy)
・女王蜂(6月:氣志團、UNISON SQUARE GARDEN)
・WurtS(6月:PEOPLE 1)
・水曜日のカンパネラ(6〜7月)
・HYDE(6〜8月:Dragon Ash、THE ORAL CIGARETTESなど)
・崎山蒼志(6〜8月:スガ シカオ、折坂悠太など)

 そのほか、Da-iCE、04 Limited Sazabys、UNISON SQUARE GARDENらもゲストを招いたツアーを行うなど、まさに対バンでのステージが盛り上がりを見せている。もちろんこれまでにも同形式でのツアーやイベントは頻繁に開催されてきたが、コロナ禍以降、徐々にライブシーンが回復していく中で気になる動きではある。

 なぜ今、対バン形式でのツアーなどが盛んに行われているのか。そこにはコロナ以降の様々な要因が関係しているのではないか。そこで、音楽ブログ『ロッキン・ライフ』を運営し、自らライブイベントも主催する“ロッキン・ライフの中の人”に意見を聞いた。

 まず、徐々にライブシーンが復活している中、どのような理由や背景があって対バンでの公演が増えているのか。ロッキン・ライフ氏は「集客力」「内向きだった活動の打破」、二つの理由が挙げられるのではないかと考える。

「コロナ禍を経て、一部のアーティストを除くと、ライブでの集客が大きく下がったと聞いています。それを改善するための一つのアプローチとして、対バンイベントを組んでいる、と考えられます。単独の場合、そのアーティストのファンしか足を運ばないケースが多いですが、対バンだと対バン相手のファンも足を運ぶ可能性があります。また、ワンマンよりも“お得感”や“その日限りの特別感”が出てくるため、参加することの意味づけを強く打ち出せる=集客が上がると考えられるのです。加えて、ここ数年は閉じた空間での活動を余儀なくされていたアーティストがほとんどだったため、今年は積極的に外向きに活動したい、現場で実際に人と組んで活動したい、というモチベーションから積極的に対バンイベントを開催しているのではないでしょうか」

 確かに、先に挙げた対バンツアーのラインナップを見ても、特別な公演、パフォーマンスが目撃できるかもしれないという期待が生まれる。またそうした祝祭感に包まれた空間を、なるべく多くの人と共有したいという気持ちも芽生えてくるように思う。

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