増加する“対バン”ライブ、その理由は? アーティストと観客、それぞれの目線などから考える
しかし、そうした特別な演出や祝祭感はワンマン=単独公演でも感じられるはず。また反対に、対バンであるがゆえのデメリットなどはないのか。ロッキン・ライフ氏にメリット/デメリットを聞くと、演者側/観客側の目線に分けて以下のように答えが返ってきた。
演者側
<メリット>
・集客力が上がる(対バン相手のファンも呼び込める可能性がある)
・モチベーションの向上
・自分のファン以外にもライブを観てもらえる可能性がある
<デメリット>
・披露できる曲目が減る
・リハーサル・準備などに手間や時間がかかる可能性がある
・初めての対バン相手の場合、ホスト側は単独よりも気がかりな点が増える(裏でのケアやファン同士の交流など)
観客側
<メリット>
・その日限りのセットリスト(カバー曲の披露など)が観られる可能性がある
・その日限りのMCが聞ける可能性がある(互いのエピソードなど)
・両者の熱の入ったパフォーマンスを目撃できる
<デメリット>
・単独よりもアーティストごとのライブ尺が短くなる
・単独とは違う客層に対して違和感を持ってしまう可能性がある
(違う文化を持っているアーティスト同士の対バンだと、まれにファン同士で衝突する可能性も。例えばペンライトを持つ・持たないなど)
・セットチェンジする間(転換中)の時間が単独より長い
個人差があるのは前提にメリット/デメリットはあるものの、やはりその日限りでしか味わうことのできない特別な体験を期待してしまう。演者も観客も、そうした予定調和ではない瞬間を生み出したい、体験したいからこそ対バン形式のライブに可能性を見出しているのかもしれない。
では、対バン形式のライブがシーンの勢いを取り戻す一つのきっかけになるとして、今後ライブシーンはどうなっていくのだろうか。ロッキン・ライフ氏は以下のように語る。
「まずは、今までライブに行けなかった人たちも、ライブに行けるような空気感・状況になってほしいです。そして、落ち込んでいたライブの集客力が改善できたら良いなと思います。その結果、音楽を生業にしている人たちも潤うようなレベルにまで持ち直したら嬉しいですね。今はまだ“声を出してはいけない”、“ソーシャルディスタンスを保つ”など一定の制限が課されています。そういうルールをなくしても問題ない、安心してそういった制限なしにライブができる、という状況にまで改善されたらと考えています。ただ、その流れで懸念があるとすれば、観客のスタンスはここ数年で大きく分断されており、下手に“自由”を標榜すると、“前の声を出さないライブがよかったのに……”となる可能性もある。イベントなどのコンセプトに沿って、参加する人全員が納得のできる形で次のフェーズに進むことができるのが望ましいと考えています」
対バンでのライブが生む特別感や祝祭感、そこで味わった体験と経験は、きっとこの先のライブシーンにおいてメリットとなるはずだ。制限がなくなるのを待つのではなく、ライブを行いながら、そして足を運びながら、コロナ以降も楽しむことができる状況を作り出していくべきではないだろうか。