ayaho&曽我淳一、世代の異なる2人で目指した背中を押す音楽 『であいもん』を優しく彩るエンディングテーマ制作秘話

ayaho+曽我淳一『であいもん』EDテーマ秘話

 4月6日より放送中のアニメ『であいもん』(TOKYO MXほか)のエンディングテーマを、同作のために結成されたスペシャルユニット・であいもん(ayaho+曽我淳一)が担当している。メンバーは、作詞・作曲・歌唱を担当する京都在住で19歳のシンガーソングライター・ayahoと、元トルネード竜巻リーダーで、サザンオールスターズ、原由子、つじあやの、THE BACK HORN、楠瀬誠志郎、平原綾香、井上苑子、ほか数々の名だたるアーティストのレコーディングやライブサポートを務めてきた曽我淳一。世代の異なる2人が互いをリスペクトし合いながら作り上げた「ここにある約束」は、和菓子をテーマにしたアニメのストーリーとリンクする優しい1曲に仕上がっている。『であいもん』を楽しむ上で欠かせない音楽の魅力や、エンディングテーマの制作秘話について、ayahoと曽我にたっぷり語ってもらった。(編集部)

TVアニメ『であいもん』PV第2弾【2022年4月6日放送開始】

「『であいもん』は温かい気持ちで最後まで読める作品」(ayaho)

ーーayahoさん、アニメ『であいもん』のためにユニットを組むことが決まったとき、どういう気持ちでしたか?

ayaho:今までアニメの主題歌をやらせていただいたことはなくて、『であいもん』が私にとっての大きな一歩になったなと思います。正直不安もあったんですけど、曽我さんとご一緒させていただけるということですごく楽しみにしていました。役割も分担されるので、私だけの音楽じゃないっていうことも大きなポイントかなと思っていて。

ーー曽我さんはayahoさんの歌を初めて聴いたとき、どういう印象を受けましたか?

曽我淳一(以下、曽我):やっぱり声がまっすぐで強い歌だなと思いましたね。でも聴いていくと強いだけじゃなくて、ちょっとした憂いを歌の端々に感じて。このバランスは狙って出せるものではないので、ayahoさんの才能というか、持って生まれた素敵な部分だなと思いました。

ーー原作を読んだ感想を教えてください。

ayaho:最初から最後まで胸がじーんと熱くなるような感じで、しかも単に温かくて優しいだけじゃなくて、(雪平)一果の強い思いが描かれていて。山あり谷ありっていうストーリーも読んでいてワクワクしましたし、すごく温かい作品だなと思いました。

曽我:優しさが全面に溢れていますよね。漫画が扱っているキャラクター各々の事情は結構重たかったり複雑なんですけど、あくまでそれを優しく、重たい気持ちにならないで読み進められるというところが本当に好きな作品だなと。登場人物が喧嘩したりとかいざこざがあったりもするんですけど、みんなとにかく優しいので、安心して温かい気持ちで最後まで読める作品でした。

ーーayahoさんは京都在住ということですが、作中で描かれる舞台も京都ということで、馴染みのある部分は多かったですか?

ayaho:最初から最後まで、「あ~、分かるなあ」と思うシーンがすごくあって。例えば、キャラクターたちの方言とか、あと「祇園祭に行こう」と言っているシーンがあったりとか。私の家の近所にも和風なお店や家があるんですけど、そういう建物が作品の中でも描かれている感じで。普段の私の日常が漫画になっているかのようで、親しみやすさがありますね。

ーーエンディングテーマ「ここにある約束」はどういった部分にインスピレーションを受けて書き始めたんですか?

ayaho:原作者の浅野りんさんとやり取りさせていただいたときに、入れてほしいキーワードとして「約束」が挙がっていたんです。私も原作を読んで同じことを思っていて、一果がお父さんとの約束をずっと心の中にしまっている様子が描かれているので、約束という言葉は絶対に外せないなと。なのでタイトルにも使わせていただきました。あとは、一果や働いている人にとって緑松(和菓子屋)とはどんな場所かなとか、そういうことを思い描きながらこの曲を書いていきました。

であいもん(ayaho+曽我淳一)- TVアニメ『であいもん』エンディングテーマ「ここにある約束」リリックビデオ(Short Ver.)

ーー優しくも強い意思を感じる楽曲ですよね。様々な登場人物や和菓子などのモチーフがある中で、中心に据えたのは一果だったんですね。

ayaho:そうですね。個人的にも一果が大好きなので、彼女を頭に浮かべて書きました。

ーー歌詞には〈包み込んで〉など、和菓子を連想させる言葉も入っています。

ayaho:和菓子って手で作るじゃないですか。本当に大事に一つひとつ作られている印象なので、作中でも和菓子が人と人を繋いで緑松を包み込んでるなとすごく感じて。なのでその単語も絶対に使おうと思って入れました。

「いろんな表情を見せてくれる歌声を消さないように」(曽我)

ーー漫画の中でも人と人が繋がったり仲を深めるシーンでは和菓子が一緒に描かれていますもんね。おふたりは和菓子にどういうイメージを抱いていますか?

ayaho:祝い事とかお礼にぴったりで、上品なイメージがありますね。あとは小さい頃からおばあちゃんが大福を作ってくれたりしていたので、そういう優しさが込められた食べ物かなって思います。

曽我:和菓子って物語を背負っているなと思います。作中でも結構説明されてますけど、「こういうときにこういう願いを込めて食べるんですよ」というのが和菓子には一つひとつ強くあるから、半分は食べ物なんだけど、半分は儀式というか。僕自身はそんなに普段は食べないんですけど、妻がそういう仕事をしているので、前に京都で和菓子巡りをしたことがあるんですよ。裏路地の「こんなところに?」みたいな場所にあるお店がすごい有名店だったりするんですよね。

ーーやっぱり京都って至るところに和菓子屋さんがあるものなんでしょうか。

ayaho:そうですね。あとは抹茶屋さんとか。私が住んでいるのも宇治市なので、抹茶屋さんだらけです(笑)。

曽我:畑とかもあったりするの?

ayaho:茶畑もあります。おばあちゃんも5月頃になったら朝5時くらいからお茶摘みにいったりしていますね。今まではそんなに意識していなかったんですけど、こういうお仕事をいただいて思い返すと、結構和菓子とか抹茶に触れてきたなと思います。

ーー曽我さんは曲を聴いたとき、どういう印象を受けましたか?

曽我:最初は、エンディングテーマなのに結構テンポの速い曲だなと思いましたね。でもただ元気なだけじゃない曲だったので、『であいもん』のエンディングに合っていると感じました。

ーーフルートが入っているアレンジに優しさを感じます。

曽我:最初は曲が持つ元気さをもうちょっと膨らませていく方向のアレンジを出していたんですけど、そういう役割を木管楽器でやってみたら結構優しくなったんです。元の曲のテンポ感も失われずに上手い感じでいったなと思って、最終的にはフルートを吹いてもらうということで落ち着きました。

ーー今回は『であいもん』という作品のテーマもある中での編曲でしたが、そういう中での編曲にはどういう難しさがありましたか?

曽我:ayahoさんが『であいもん』を一生懸命読んで感じた要素が楽曲の中に詰まっていたので、僕が間に入ってバランスを取るみたいなことはなかったですね。もらった曲を単純により良くしていけば絶対にアニメとも合う曲になると思ったので。秒数の関係でテンポをどうするとか、構成のどこまで入れるかっていう仕事っぽい悩みはありましたけど、内容に関してはayahoさんがすごく練って作った曲だなということがすぐ分かったので、あまり苦労しなかったです。でも、ayahoさんの声はいろんな表情を見せてくれるので、それを消さないようにということは意識しました。いろんな編曲を施すのはそれはそれでテクニックとしてはできちゃうんですけど、今あるこの声の良さを消さないで、最後まで残す編曲にしようかなって。そのバランスを考えながら、楽器を録音するときもミュージシャンに協力してもらいました。

ーーカップリングの「あなたがそばにいてくれたら」は前半の展開が面白いなと思いました。

ayaho:私はいろんなパターンの曲を作りたくて、Aメロ、Bメロ、サビっていうのは意識せずに、まずは自分の思った曲の構成を勢いで作ってみて、おかしかったら変えてみたりするくらいの感じで決めるので、あまり意識してはいないんですよね。ゆったりしている曲ではあるんですけど、そんなに重い感じでじわじわしなくていいかなって。人の背中を押せる応援歌のような内容になっているので、あえて重すぎず、1番はAメロ、サビみたいな感じであっさりいけるような曲にしました。

ーーサビの存在感がすごくあるなと。曽我さんはこの曲を聴いたときの印象はいかがでしたか?

曽我:僕はAメロもサビに聴こえたので、最初は「サビ始まりの曲なんだな」と思ったんです。そのあとにサビが来たから、「どっちがサビだろう?」と思ったくらい。さっきayahoさんが言っていたみたいに、Aメロ、Bメロ、サビみたいな構成じゃないから、「ここがサビだぞ」と強調しすぎることなく、自然に繋がって、かつ広がりが出るように編曲したいなと思いました。僕の中ではAメロも結構気に入ったので、最後にAメロの歌詞がもう1回出てくる展開は僕から提案させてもらいました。

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