Ryohu、盟友Suchmos YONCEとの再会に至るまでの背景 それぞれの歩みが交わった特別な一曲に
まず、RyohuとYONCE(Suchmos)が今このタイミングでマイクを交わしていることに深い感慨を覚える人も少なくないだろう。それはリスナーのみならず、この2人と近い目線と場所で、音楽とさまざまなカルチャーをクロスオーバーさせながら、たしかに自分たちで時代を動かしている瞬間と感覚を共有してきた同業のミュージシャンやクリエイターたちも。そして、あるいは天を仰ぎこの曲を聴かせたい人のことを思うかもしれない。
Suchmosが2015年にリリースしたアルバム『THE BAY』収録の「GIRL feat. Ryohu」以来、RyohuとYONCEがここに並び立っている。
そう、Ryohuにとって2022年の第一声となるデジタルシングル「One Way feat. YONCE」は、YONCEにとってもSuchmosの活動休止後、オリジナル楽曲としては最初に発する歌声を記録するものとなった。軽快でありながらどこまでもヒューマニスティックかつドラマティックな気配をまとっているこの「One Way feat. YONCE」は、Ryohuのキャリアにとっても特別な楽曲として存在し続けるに違いない。Ryohuはここを皮切りに、そのすべてに客演を招いたデジタルシングルを5カ月連続リリースする予定である。
振り返れば、2020年11月にリリースした1stアルバム『DEBUT』のリリース時に筆者が行ったインタビューでRyohuは、次作の構想についてこう語っていた。
「今回は自分自身を歌うことに重きを置いたけど、次はフックをフィーチャリングゲストに歌ってもらう曲がいくつかあってもいいと思うし。今まで一緒に遊んできた人、意外と一緒に曲は作ったことがなかったけど仲の良い人、ステージ上のセッションはしたことあったけど初めて一緒に作る人とか、そういう人達と制作してみたいと思いますね」(※1)
なるほど、まさに初志貫徹というべきか、あの時点で描いていたイメージをここから具現化していくのだと想像する。ソロとしては初のメジャー流通作でもあった1stアルバム『DEBUT』は、Ryohuが10代からラッパーとして歩んできた音楽人生の道のりであり、そこで目にした忘れがたい景色や出会った人たちと分かち合ったかけがえのないフィーリングをときに歌としても語りながら、当時30歳になったばかりの自らの実像をリアルに映し出した作品だった。
Ryohuというラッパーの生き方は、本当に自由だ。今でも“若きミュージシャンたちが一瞬にして伝説を残したバンド”というような切り口と熱量をもって語られることが多いズットズレテルズのMCとして。東京を代表するヒップホップクルーの1つであるKANDYTOWNにおいてビートメイクも手がける中心メンバーとして。ペトロールズやBase Ball Bear、そしてSuchmosといったバンドの楽曲に客演として参加しているラッパーとして。ときにクラブやライブハウスのステージに飛び込みで現れ、フリースタイルでフロアを盛り上げるマイク持ちとして。Ryohuと出会う機会はこれまでいろいろな場所に転がっていたし、それは今も不変だ。
そういったバックグラウンド/バックボーンもすべて楽曲に注ぎ、処女作然としたドキュメンタリー性が強かった『DEBUT』を経て、Ryohuが今ここにYONCEを迎え楽曲を作り上げたことは、やはり改めて感じ入るものがある。