DECO*27、Rockwell&DMYM/No.734と交わすOTOIRO創作対談 初音ミクを取り巻くクリエイティブの全貌

DECO*27×DMYM/No.734対談:テーマ=アートワーク

DECO*27 - 8th Album「MANNEQUIN」Trailer

ーーDECO*27さんとアートディレクターのDMYM/No.734さんが一緒に組むようになったきっかけから教えてください。

DECO*27:最初に会ったのは初音ミクの10周年、ボカロ周りのクリエイターが集まる呑み会でした。初対面だったんですけど、DMYM/No.734がぐいぐい発言してくれる子で(苦笑)。当時、自分の作品にそこまでものを言ってくれる人がいなくて。その会が終わった後も気になっていたんですね。結果、その後に自分の作品を作るときに影響を受けて。それからOTOIROを立ち上げることになって、名刺のデザインをお願いしたんだっけ?

DMYM/No.734:クリエイターやスタッフの名刺のデザインをやらせていただきました。

DECO*27:上がってきたものがすごくよくて。そうしたらDMYM/No.734から、「私がOTOIROに入ったらどうなりますか?」って、またぐいぐいこられたんですよ(苦笑)。

DMYM/No.734

ーーおもしろいなあ。

DECO*27:うちの会社、そのときはまだデザイナーがいなかったんです。動画クリエイターとイラストレーターはいて。クリエイティブ的にも必要だし、ディレクションは大事だと思って「じゃあ、入る?」って誘いました。

DMYM/No.734:すべて間違っていないですね(苦笑)。学生の頃からDECOさんの「モザイクロール」などを聴いていて。音楽に対してビジュアル表現を付けることって自分たちでもできるんだってきっかけをDECOさんやakkaさん(Animation Director)に作品を通じて教えてもらったんです。私のような次のボカロ世代が今後、これからより広がるこのカルチャーでやっていくならどうしたらおもしろいかなと考えて。動画ももちろんですが、やはり次はパッケージとディレクションのデザイン領域が大事だと思って。当時もイベントなどでパッケージも出すアーティストはいましたが、もっと模索の余地がたくさんあるなと。自分が音楽に対してビジュアルを付ける仕事をしたいと思っていたので、どこに向かうべきかという道を決めてくれた側面もあります。

ーーひとつの指針を見せてくれたのがDECO*27さんだったんですね。

DMYM/No.734:DECOさんは、その後も変わらないスタイルでありつついいものを作り続けていて、さらに新しいOTOIROという新しいスタイルを作るタイミングで、世代と観点が違う自分がいたらもっとおもしろいことができるんじゃないかなって。それで、あの発言へと至った感じなんです。

DECO*27:なるほどね。呑み会でぐいぐいきてただけじゃ、ヤバい奴になっちゃうもんね(笑)。

ーー(笑)。クリエイティブなつながりというわけで。DECO*27さんは、ビジュアル面の魅力、大事さに早い段階から意識的でしたよね。

DECO*27:音楽と映像とイラストの組み合わせが大事だというのは、最初の頃から考えていました。それこそ、いまはうちに所属していますけどakkaが最初「二息歩行」で“PVつけてみた”だったかな……ワンコーラスの動画をアップしていて。その動画がオリジナルより観られていて。それがあって、「モザイクロール」や「弱虫モンブラン」を一緒にやったんです。いままで自分なりに頑張って曲を作って、最初の頃はpiapro(CGM型コンテンツ投稿サイト)からイラストをお借りして。それで表現をしていたときよりも、曲について、こんな気持ちを込めたとか、こんな表現にしたいとか話し合って映像を作ることができると観られ方が全然違うなと思って。再生数もそうなんですけど、曲に対する印象の付き方が違うんですよ。それを、2009年前後ぐらいにはじめて。

ーー10年以上前だ。ボカロカルチャーの黎明期ですね。

DECO*27:そして、前の事務所を辞めた後に個人事務所を作るのもいいと思ったんですけど、それだけじゃ僕的にワクワク感が足らなくって。じゃあ、今まで大事にしてきたこと、音楽に対して色を付けるということを、もっとより良い状況で作品をファンにみんなに届けられる仕組みを作りたいなと考えたんです。それで、クリエイティブチームOTOIROを作ろうと考えました。

ーーなるほど。

DECO*27:難しいのが、イラストレーターでも、イラストだけでなく他のお仕事をしている方もいて。昼は別で働いて、副業的にイラストを描いている。そんな方に対して、自分の作品であまり無理なスケジュールを言えないという気持ちもありました。そこで自分たちの会社に入ってもらって、仕事を人生にしていただくことでより時間も使えるし、頭も使ってもらえると思ったんです。

ーー素晴らしいじゃないですか。そして、無理なスケジュールも言えるようになったと(苦笑)。

DECO*27:無理なスケジュールは……パッと思いつきを相談することはあるにはあるんですけど、MVをいきなり作っては、あんまりないかな(苦笑)。うん、あまりないと思います。すごく早めにデモですって、渡しているので。

DMYM/No.734:(笑)。

ーーDECO*27さんの細やかな性格はすごいですよね。こうして、OTOIROというクリエイティブチームにアートディレクターとしてDMYM/No.734さんが加入し、イラストや動画、デザインを手がけるIROチームにとって、大きな一歩になったと。

DECO*27:そうですね。OTOIROを作ったことで、僕にとってもファンにとっても嬉しいことがふたつあって。まずクリエイティブの量が増えたこと。クリエイターに時間を割いてもらえる環境を作れたからですね。あと、僕のモチベーションが上がりました。文字通り、自分で舵を切れるというか。僕が「こうありたい!」っていう意見を、みんなでああだこうだ言いながら作り上げていけるという。音楽を作っているときは孤独になりがちなんですけど、映像のアウトプットまで見据えてチームでやっていると楽しいですし、結果、曲を作る時間も増えて映像もたくさん作れて提供できる量が増えました。

ーー海外でもヒップホップ界隈などクルーというか、チームでクリエイティブやられる方々増えましたよね。相乗効果が高いと。

DECO*27:もうひとつは質が上がりました。DMYM/No.734が、OTOIROデザイン部のリーダーをやっているのですが、僕は一切絵を描けないので口頭で伝えるんですね。それをしっかり形として起こしてくれるんです。人間って、話しているだけだと欲しいものが曖昧で、目の前に出してもらえるとわかりやすいというか。そんなことを繰り返しているうちに、僕もオーダーの伝え方を成長できたと思うし、自分なりにデザインや構図など研究というか勉強をしていますね。

ーーDMYM/No.734さん、OTOIROに入って、これまでとは大きく変わったところはありますか?

DMYM/No.734:まず、同じ空間で集中して制作できる環境がありがたいです。あと、アーティストが今どんなモードで音楽が生まれてきているかシームレスに知れることです。どんな表現をする上でも中心にあるのは音楽なので、単体の仕事ではなく前後の流れを知っていると、この曲の後にこの曲がくるからこんな表現にしようなど、工夫ができるんですね。DECOさんによく言うのは「前回こうだったから、次はこっちが良くないですか?」とか。そんな提案ができるようになりました。音楽にもっと近づいている感覚があります。

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