SWAY、20年越しで完成させた“人生のサントラ” 守るべきものがあるからこそ貫く攻めの姿勢

 SWAYが2ndフルアルバム『Stay Wild And Young』をリリースした。前作『UNCHAINED』は“ビートメイカー、ラッパーに自分をプロデュースしてもらう”というコンセプトを掲げた作品だったが、3年半ぶりのフルアルバムとなる本作は、SWAY自身が制作を主導。

 iTunes ヒップホップ/ラップランキング1位を獲得した「チョコレート」、ルーペ・フィアスコをフィーチャーした「Under The Stars feat. Lupe Fiasco」などの既存曲のほか、タイトルトラック「Stay Wild And Young」をはじめとする新曲を含め、彼自身のルーツ、センス、テクニックが濃密に刻まれたアルバムとなった。「人生のサントラと呼べる作品になりました」という彼に、本作の制作について語ってもらった。(森朋之)

カニエ・ウェストの姿勢は人間として参考にしている

SWAY

ーーニューアルバム『Stay Wild And Young』がリリースされました。前作『UNCHAINED』から3年半ぶりのフルアルバムですが、この期間はSWAYさんにとってどんな時期でしたか?

SWAY:本当にいろいろなことがありましたね。母親が亡くなって、自分に家族ができて。コロナ禍でお世話になった人との別れも経験しましたし、DOBERMAN INFINITYで武道館ライブやアリーナツアーをやらせていただいて。自分のことで言えば、ワンマンライブだったり役者としての活動だったり……振り返り切れないですね。すごく悲しいこと、食らったこともあったし、めちゃくちゃ嬉しいこともあったので。

ーー感情の動きが激しかった?

SWAY:そうですね。コロナになってからはゆっくり考える時間ができて。リリースやツアーもそうですけど、すべてのサイクルが当たり前だと思ってたところがあったなって気づきました。当然ですけど、コロナがなければ活動にブレーキをかけることもなかっただろうし、自分を見直すという意味では、必要な時間だったのかもしれないです。本当にいろんな変化がありましたね。DOBERMAN INFINITYの去年のホールツアーのとき、イヤモニを使わなかったんですよ。感覚をフルオープンにしたかったし、直で音を聴きたくて。実際、すごく気持ちよかったですね。以前は「失敗しちゃいけない」「完璧にやらないと」みたいな縛りを感じてたんですけど、去年のツアーはより感情的にやれて。もちろんお客さんは声が出せない状況だったんですが、空間で鳴っている音を身体で感じられるのはすごくよかったです。

ーーなるほど。それだけいろいろな経験があれば、ソロアーティストとしてやりたいことも増えそうですね。

SWAY:DOBERMAN INFINITYでもやりたいことは実現できているし、ソロに関しては「自分自身のニュースを音楽にする」ということにフォーカスしてましたね。それがソロとして作品を作る意味なのかなと。

ーー今回のアルバムに対して、「俺の人生のサントラだ」とコメントしていて。

SWAY:ずっと憧れていたんですよ、そういうアルバムに。10代のときに聴いてたUS、日本のヒップホップは、アーティストが自分自身を題材にした作品が多かったんです。彼らのライフスタイルにも憧れたし、ずっとカッコいいなと思っていて。いつか自分もこういうアルバムを作りたいなって……そのまま20年近く経っちゃいましたけど、ようやくできましたね。

ーー歌うべきことがあった?

SWAY:引き出しはめちゃくちゃ増えましたね。そういえば最近、カニエ・ウェストのドキュメント作品(『jeen-yuhs: A Kanye Trilogy』)が配信されたじゃないですか。カニエは大学を中退してプロデューサー、トラックメイカーとして世に出たんだけど、ラッパーとしては葛藤を抱えていて。「ギャングでもない、刑務所に入ったこともないヤツがラッパーなんかなれない。ビートだけ作っとけ」みたいに言われて、悩んでたんですよね。『The College Dropout』(2004年にリリースされたカニエ・ウェストのデビューアルバム)はめちゃくちゃカッコいいアルバムですけど、当時、「何が大学だよ」みたいなことも言われてたんだなって。

ーー大学に通ってたこと自体、ラッパーっぽくないっていう。ナンセンスですけど、当時はそういう雰囲気だったみたいですね。

SWAY:でも、カニエがその状況を突破して作品を出したからこそ、自分も聴くことができて、すごく刺激を受けて。しかも、今もめちゃくちゃ攻めまくってるじゃないですか。最前線で活躍し続けて、ビートを作りまくって、リリックを書きまくって。あの姿勢は人間として参考にさせてもらってます。自分も常に作っていたいし、そういう人間でありたいので。

ーーSWAYさんの今回のアルバムタイトル『Stay Wild And Young』もすごいインパクトですよね。

SWAY:頭文字を並べると“SWAY”なんですよ。以前、ファンのために絵を描く企画があって、そのときにパッと思い浮かんで。それ以来、ずっと「あの言葉、良かったな」って頭のなかに残ってたんです。今回アルバムを作るにあたって、『Stay Wild And Young』をタイトルにしようと。

ーーこの言葉にふさわしい内容の作品になるだろう、と?

SWAY:というより、「こうありたい」という感じですかね。今年で36歳になるし、家族もできて。守るべきものがあるんだから、普通だったらディフェンスに回るべきなのかもしれないけど、「こういう時期だからこそ、攻めたい」と思って、このタイトルが結びついたんです。ソロでリリースできていることもすごいし、グループでもどんどん夢を叶えさせてもらってますけど、やりたいことはたくさんあるし、「こうなりたい」という理想もあって。そこを目指したいんですよね、やっぱり。

ーー今のSWAYさんの意志が示されたタイトルなんですね。1曲目の「Stay Wild And Young」の冒頭のリリックにも、その思いがしっかりと刻まれていて。壮大なサウンドも、アルバムの幕開けに相応しいなと。

SWAY:このトラックは、2020年11月にやったオンラインのソロライブのオープニングに使ったSEがもとになってるんです。それをアルバムのイントロに持ってきたいと思ったときに、トラックメイカーのルーカス・バレンタインに「映画のメインテーマみたいな曲にしたいんだよね」って相談して。ルーカスがストリングスを入れてくれたんだけど、「語りが入ってたらカッコいいな」と思い付いて、この形になりました。JAY-Zの『アメリカン・ギャングスター』というアルバムのイメージもありましたね、自分のなかには。あの作品は映画(リドリー・スコット監督の『アメリカン・ギャングスター』)にインスパイアされてるんですが、今回のアルバムは自分の人生を描いてるので、通じるものがあるのかなと。

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