『やなぎなぎ 10周年記念 セレクションアルバム -Roundabout-』インタビュー

やなぎなぎ、ロマンを追い求める10年間の旅路 「メルト」カバーから最新曲「Roundabout」に繋がる創作の日々を辿る

 やなぎなぎが、2月23日に『やなぎなぎ 10周年セレクションアルバム -Roundabout-』をリリースした。本作にはファン投票を基に彼女のこれまでの作品からセレクトした楽曲+新曲も加えた全16曲を収録。レーベルの垣根を越え、「メルト10th ANNIVERSARY MIX」「終わりの世界から」などの楽曲や、ライブなどでは演奏されている「深遠」「CorLeonis」といったデビュー前の楽曲などもセレクトされている。

 メジャーシーンにおいて歌い手の存在感が高まっている昨今、ガゼル名義でニコニコ動画に投稿した「メルト」カバーがきっかけで注目を集め、そこからメジャーアーティストとしてキャリアを重ねてきたやなぎなぎは、その草分け的存在とも言えるだろう。今作を発端に、彼女のアーティストとしての歩み、そして創作活動の原点について話を聞いた。(編集部)

体感的には昨日デビューしたくらいの気持ち

やなぎなぎ「ビードロ模様」MV short ver.

ーーまずはメジャーデビュー10周年、おめでとうございます。

やなぎなぎ:ありがとうございます。

ーーこの10年は長く感じましたか? それとも短かったですか?

やなぎなぎ:短かったですね。以前にベスト盤(2019年の『やなぎなぎ ベストアルバム -LIBRARY-』『やなぎなぎ ベストアルバム -MUSEUM-』)をリリースしたときもあっという間に感じましたけど、またそこから年月が経ってしまったことに驚いています。振り返るとたくさんの作品を制作してきましたけど、作っているときは夢中になるので、本当に一瞬で過ぎ去った感覚です。体感的には昨日デビューしたくらいの気持ちですね(笑)。

ーー10年の活動の中でいろいろな経験をしてきたと思いますが、そのなかでも記憶に鮮明に残っている景色や思い出はありますか?

やなぎなぎ:いろいろありますけど……1stアルバム(『エウアル』)のライブ(2013年開催の『やなぎなぎ1st album発売記念ワンマンライブツアー「エウアル」』)はすごく記憶に残っています。それまでは全然ライブをやってこなかったので、自分の音楽を舞台で表現するにはどうすればいいのか悩んでいたんですけど、そのライブで自分からお願いして映像演出などを取り入れていただいて、やなぎなぎとしての舞台を実現できて。

ーー“ライブ”というモノづくりの楽しさを知ったわけですね。

やなぎなぎ:そうですね。あとは「自分ひとりではできなかったこと」というのが大きかったです。ライブの映像演出は自分ひとりでは絶対にはできなかったことで、手伝ってくださる方の助けを借りて、みんなでひとつの作品を作れた感覚を得られたのが、すごく嬉しかったです。

ーーやなぎさんはメジャーデビュー前から同人で音楽活動を行われていましたが、それは個人での制作がメインだったわけですものね。

やなぎなぎ:きっとメジャーデビューしていなかったら、今でも自分ひとりで全部作っていたんだろうなと思います(笑)。

ーーこの10年の創作活動で、一番変化を感じるのはどんなことかを聞こうと思っていたのですが、今のお話がその答えにも繋がるのかなと。

やなぎなぎ:確かに、たくさんの人と関わってきたことは、この10年間の活動で大きな部分だと思います。楽曲を提供させていただく機会もありましたし、あるいは、イベントで私の曲を聴いてくださった方が、「自分もこういう活動をしているんです」とお声をかけてくださることもあって。いろんな方が自分の曲に何かを感じて聴いてくれているのをリアルに感じられたことが、曲作りにも多かれ少なかれ影響していますね。

ーーそれは例えば?

やなぎなぎ:それまでは、誰かと楽しむための曲を書いたことがなかったんですけど、「そういう曲も人生で一回くらいは書いてもいいかもしれない」と思うようになりました(笑)。周りの人からの影響はたくさんありましたね。

ーーそういった影響が創作面だけでなく、例えばご自身の性格やパーソナルな部分に変化をもたらしたこともあったのでは?

やなぎなぎ:どうでしょう? 自分の根っこにあるものは全然変わっていなくて、今も変わらず人見知りですし、できれば(配達された)荷物も玄関に置いていってくれるほうが嬉しいです(笑)。でも、ライブやイベントに来てくださる方は、自分の曲が好きで聴きに来てくれていると思えるようになりました。昔はそれすらも疑っていて、ステージに立ちながら「この人たちはどういう気持ちでここにいるんだろう?」と考えてしまうことがあって(苦笑)。今はライブに来てくださる方とのコミュニケーションを繰り返すことで、「みんな本当に私の曲を聴きに来てくれているんだ」という安心感が形成されてきました。

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