アヴリル・ラヴィーン、20年変わらないロックアイコンとしての存在感 Aimer、ビリー・アイリッシュらに与えた影響も
20年前、当時の音楽シーンはありとあらゆる面で今とは全く違う景色が広がっていた。未だCDが主流であり、YouTubeすら存在しなかった時代で、着うた文化が浸透していったのもこの年からである。90年代の残り香を感じつつも、00年代のモードが本格的にスタートしたタイミングで登場したのが、当時17歳のアヴリル・ラヴィーンである。
そんなアヴリルが2月22日に『スッキリ』(日本テレビ系)に出演。今週2月25日にリリースするニューアルバム『ラヴ・サックス』に向けてのインタビュー、そして同作より「Love It When You Hate Me feat. blackbear」のパフォーマンスがオンエアされる。2月11日放送の『ミュージックステーション 3時間スペシャル』(テレビ朝日系)では、アルバムからの先行シングル「Bite Me」を披露したアヴリルだが、同番組では多くのアーティストが彼女へのリスペクトを述べ、改めてその影響力の大きさを感じることができた。
具体的に言えば、『Mステ』ではAimer、LiSAらがアヴリルから影響を受けていることが紹介された。飛ぶ鳥を落とす勢いの2組からの発言を踏まえても、アヴリルが現行のJ-POPシーンに残した功績は大きいと言える。なお、yuiにいたってはアヴリルの1stアルバム『Let Go』をCDショップの試聴機で聴いたことをきっかけに音楽の道へ進むことを決意したほどで、その後、彼女が2000年代後半の女性シンガーソングライターブームの火付け役となったことを考えれば、改めてアヴリルの存在の重要性は増してくる。
だが、日本以上にその功績と重要性は世界での方が大きく、ビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ロドリゴといったポップスターが彼女からの影響を口にしている。
ビリーは2019年にPitchforkの企画“Over/Under”内にてアヴリルの名を挙げ、「私にとっての全て」とコメント、ひたすらその愛情の深さについて述べている(※1)。さらに、ビリーは同年7月のロサンゼルス公演のバックステージにてアヴリルと対面。その時の様子はInstagramにて確認できるが、ただただファンの1人となったビリーの表情を見れば、いかにこの瞬間が特別なものだったかがわかるはずだ。
「drivers license」のヒットでティーンの等身大の想いを描き、「good 4 u」では一転、ポップパンクの再熱を告げたオリヴィアもまた、アヴリルのことを「尊敬している」と述べている。2021年、Variety誌が主催する『Variety Hitmakers Brunch』にてSongwriter of the Yearに輝いたオリヴィア(※2)。同賞の授賞式にてプレゼンターを務めたアヴリルもオリヴィアを讃えており、その光景は弱冠17歳でデビューし成功を収めたアヴリルと似た境遇を体験するオリヴィアの背中を押すかのようであった。ちなみに、かのエド・シーランもオリヴィアのブレイクを受け、「何年も前から世界には新しいアヴリル・ラヴィーンが必要だと言ってきた」とラジオでコメントしていた(※3)。
アメリカのヒットチャートでは、以前から大勢のクリエイターらによるコライトでの楽曲制作がポピュラーとなっているが、オリヴィアやビリーのように主に自身で曲を書き(2人とも共同制作者にあたる人物はいる)、自らの体験・感情を飾らずに吐き出すシンガーソングライターとしても貴重な存在となっているように思う。AimerやLiSAも自らで作詞を手がけることもあるが、そんなアーティストたちがキャッチーなUSポップパンク/ロックに乗せて10代ならではの不満や悩みを包み隠さず歌ったアヴリルに影響を受けているのは、至極当然のことなのかもしれない。
最新のトピックとしては、TOMORROW X TOGETHERのメンバー、HUENINGKAIが「Sk8er Boi」をカバーしたことも話題に。キーは下げているものの、原曲へのリスペクトに溢れたこのカバーにはアヴリル本人もTwitterで反応している。アヴリルがデビューした2002年に生まれたHUENINGKAIだが、例えリアルタイムで体験していなくとも名曲は聴き継がれていくことを物語る、何とも胸熱なアクションである。