KALMAが歌う等身大なメッセージはなぜ響くのか バンドのストレートを投げ込む新曲「ジェットコースター」から紐解く
2月9日に配信リリースされたKALMAの新曲「ジェットコースター」。彼らにとって初めてのCMソング(昨年11月から12月にかけてオンエアされた、牛角の「がんばってる日常」篇に起用)として書き下ろされた同曲は、とても新しくて、同時にとてもKALMAらしい楽曲だ。これまでもたくさんいい曲を生み出してきた彼らだが、またしてもど真ん中に直球を投げ込んできたな、というのが最初に耳にしての感想だった。
2016年に札幌で結成されたKALMAは、畑山悠月(Vo/Gt)、斉藤陸斗(Ba/Cho)、金田竜也(Dr/Cho)の3人組だ。メンバー全員が2000年生まれという若さだが、地元札幌では早くから注目を集め、高校生のうちから地元のタワーレコードのインディーズチャートでトップを取ったり、北海道を代表するフェスのひとつである『JOIN ALIVE』に出演したりと話題を生み出してきた。2020年にメジャーデビューを果たすと、その名前は徐々に全国区に広がり、ライブの規模も拡大。昨年、初のフルアルバム『ミレニアム・ヒーロー』を携えて回ったツアーでは、恵比寿リキッドルームでのワンマンライブも成功させている。
結成以降、そうやってフルスピードで階段を駆け上ってきた彼らだが、その音楽においては決して背伸びすることなく、常に等身大の歌を紡ぎ続けてきた。高校生のときにリリースしたミニアルバム『イノセント・デイズ』では10代ならではの瑞々しい感情を、メジャーデビュー作となったミニアルバム『TEEN TEEN TEEN』では10代の総決算とその先に進んでいく決意を、そして『ミレニアム・ヒーロー』ではロックバンドとしての自分達の存在意義を。KALMAは、そしてその楽曲を生み出している畑山は、その時々で偽らざる自画像と思いを音楽にしてきたのだ。それゆえ、改めて過去から彼らの作品を聴き返していくと、わずか数年ーーとはいえ10代から20代へという激動の季節の中で、彼らの表現が大きく変わってきたことがわかる。
J-POP育ちの畑山が生み出すメロディの良さと、3ピースのシンプルなバンドサウンドという基本線は変わらないものの、サウンドの引き出しは確実に広がり、歌われる内容も、そこから浮かび上がるメッセージも、どんどん大きなものになってきた。初期作では自分を中心に半径5メートルくらいの景色が色濃く描かれていたが、作品を経るごとにその視野は広がり、KALMAの音楽を受け取る「誰か」のことがはっきりと捉えられるようになった。どっしりとしたロックサウンドに乗せて〈次は誰の番だ? 僕の番だ!〉〈そうさ 僕らが時代〉と歌う「Millennium Hero」から始まる『ミレニアム・ヒーロー』は、彼らがそんな「誰か」の思いも背負って音楽を鳴らす覚悟を歌ったアルバムだと個人的には受け取っている。そして間違いなく、その『ミレニアム・ヒーロー』の先で「ジェットコースター」は生まれている。
ジャカジャカとかき鳴らされるギターに乗せて人懐っこいメロディが溢れ出す冒頭から、このバンドの魅力のひとつである親しみやすい歌がじんわりと広がっていく「ジェットコースター」。だが、この曲の(そしてKALMA自体の)ポイントは、単に明るくて親しみやすいだけではないというところだ。メンバー3人でのユニゾンやコーラスで盛り上がるパートがある一方で、畑山がひとりで心の内を少しだけ覗かせるようなパートもある。そしてもがきながら歌詞にある〈優しい光〉を求めて思いっきり手を伸ばすように、クライマックスに向けてバンドの音もメロディもドラマティックに盛り上がっていく。