アツキタケトモの音楽を相対的に考察 軸にある“歌謡”が醸し出す歌詞とサウンドのオリジナリティ

言葉の中に生命力が宿る、アツキタケトモの「歌詞」

 あるいは、小袋成彬との比較であれば、どんな違いを見出せるだろうか。楽曲にもよると思うが、ここでは歌詞に着目したい。小袋成彬の歌詞は内省的な内容のものが多く、内面に深く潜り込むようなアプローチが多い。しかし、アツキタケトモの「Family」は、冒頭でも述べたように現実社会とすり合わせをしながら言葉を綴っている印象を受ける。つまり、歌詞の視点が内側に向いているか、外側に向いているか、といった違いが感じられる。この視点によって、歌が導き出す結論や、歌の中で見出される気づきも変わってくるだろうし、ひいては言葉からにじみ出る印象の違いで、ボーカルのテンションやサウンドの意匠にも、それぞれの影響源を見出すことができるように思う。言葉の中に生命力が宿っているからこそ、歌謡曲的なメロディラインも活きている、と見立てることができそうである。

 前述の通り、いくつかのアーティストを取り上げながらアツキタケトモの音楽に踏み込んでいくことで、その突出した魅力を見出すことができ、やがてアツキタケトモらしさにたどり着くことになる。本稿においての結論を簡単にまとめれば、洗練されたサウンドの中で、「歌謡」に軸足を置いていることがアツキタケトモの音楽において重要な要素であり、ここが出発点になっていることで、他の音楽との様々な違いを生み出していると言えそうである。そして、これは国内の同じタイプのアーティストとの比較だけの話に収斂しないようにも思う。

 単純に聴いていて心地良い歌は世の中にたくさんあるが、サブスクリプションやYouTubeの普及によって国境を越えて音楽に接することができる今の世の中において、サウンドがワールドワイドであるかどうかということは、そこまで特権的な意味を持たなくなってきているように思う。だからこそ、「歌謡」という日本独自の音楽のエッセンスを楽曲に溶け込ませるアツキタケトモの音楽的な個性は重要な意味を持つ。世界の音楽を日本の音楽に取り入れるのではなく、世界の音楽と日本の音楽をフラットに分け隔てなく溶け込ませていくといった凄まじさが宿っている。このように確立されたものがあるからこそ、現実への眼差しを向けた歌詞・言葉が強い意味を持つのだろうし、アツキタケトモにしか描けない意味や価値が歌の中で提示されている。そんな風に思うのである。

(※1)
https://sensa.jp/interview/20210721-ao.html

アツキタケトモ「Family」

■リリース情報
アツキタケトモ
Digital Single「Family」
12月1日(水)リリース
https://atsukitaketomo.lnk.to/Family

■関連リンク
公式サイト:https://atsukitaketomo.com/
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