愛美×大塚紗英が見せたPoppin'Partyの日常 新鮮さな魅力に溢れたアコースティックライブを観て
その後は「国語の補習」という名の大喜利を挟んで、他のバンドのカバー曲へ。このツアーでは毎公演違うカバー曲を披露しており、昼公演と夜公演でもこの部分の選曲は異なっている。夜公演で披露したのはRoseliaの「Neo-Aspect」。愛美がサビの〈きっと悔しくって/情けなくって/涙したって/ここにいるよ〉という歌詞を感情たっぷりに歌い上げ、大塚紗英もストロークの間をたっぷり取ったり、伴奏にためをつくることでその声をより際立たせていく。シンプルな演奏だからこそ、細かなアレンジの妙もいつも以上に伝わってくる。
中盤にはボールターゲットの的にボールを投げて得点を競う「体育の補習」を経て、ギターをチューニングしながらMC。ここでは大塚紗英が「もう7年らしいよ」(プロジェクト発表からは6年)とバンドの歩みを振り返り、愛美が「(遠い目で)みんな元気かな……」と他メンバーに思いを馳せると、「一昨日会ったから!」と息の合ったツッコミが入り会場が笑いに包まれる。その後、大塚紗英が「バンドリ!が大きくならなかったら、みんなと出会えなかった」と感謝の言葉を伝え、「この5人でしかありえない」と語ると、愛美も「メンバーみんなが自然体になってくれたことが嬉しい。最初があったから今がある。今が楽しいのは、あの頃の私たちが苦楽を乗り越えたから」と思いを伝えて温かい拍手が起こった。
続いて大塚紗英がメインボーカルを取り、愛美がコーラスに回った「Returns」を経て、「最後の特別補習授業」では2人で即興作詞作曲に挑戦。演奏を担当する大塚紗英が即興で弾きはじめたコードに、ボーカルを担当する愛美が、「香澄」と「愛美」と某コンテンツの「秘密を抱えた『王子様』系ラッパー」(のCVを担当することから披露した男性風のラップ)を自在に切り替えながら歌を乗せていく。終盤にはメインボーカルとコーラスが入れ替わる一幕もあった。続く「ガールズコード」では、愛美が「最終兵器!」と言ってピアニカを弾きはじめ、ギターとピアニカと歌が重なって観客から特大のクラップが生まれる。そして「Home Street」では拍手がさらに大きくなり、ひとまずのクライマックスを迎えた。
最後は、「近くにいても、遠くにいても、どこにいても届けられるように歌いたい」と伝えて「Live Beyond!!」へ。曲の入りを間違えても顔を見合わせて笑いながら、自然に修正して会場を盛り上げていく様子は流石の一言で、そのハプニングも含めてみるみる魅力的な演奏に変わっていく。最後は学校のチャイムがなって有咲から連絡があり、2人が蔵練(劇中でPoppin'Partyが行なう有咲の自宅の蔵でのバンド練習)に向かうところで終了となった。
全編を通して感じたのは、様々な舞台を踏んできた2人ならではの、ミュージシャンとしての確かな実力が感じられたこと。『BanG Dream!』のリアルライブはメンバーが実際に演奏を行なっているため、このシリーズでの活動期間は、そのままミュージシャンとしての活動期間にもなる。そして実際に、小さな会場からはじまって、様々な大会場での演奏も乗り越えてきた彼女たちは、この6~7年の間に確かな腕を持ったミュージシャンになっている。日々様々なメディアミックス作品が生まれている声優コンテンツの中でも、やはり、こんなシリーズはそうそうない。普段とは違うアコースティック形式による新鮮な魅力と、『BanG Dream!』シリーズの本質的な魅力がどちらも伝わってくるような楽しいライブだった。