Base Ball Bear、ジェニーハイ、Nulbarich……ラッパーとのコラボで拡大するバンドの音楽表現
時代と共に音楽のトレンドが日々変化しているなかで、2010年代以降の音楽シーンの変遷のひとつとして挙げられるのが、バンドとラッパーのコラボだ。Suchmos×Ryohu、RADWIMPS×Miyachi、SPARK!!SOUND!!SHOW!!×R-指定などがその一例として挙げられるが、バンドの在り方自体も多様化している昨今、シーンを代表する様々なバンドが、今年もラッパーとコラボすることで新たな表現法を見出している。本稿では、そうしたコラボの例をいくつか取り上げながら、拡大していくバンドでの音楽表現について考えてみたい。
Base Ball Bear×valknee
バンド結成20周年の集大成となるニューアルバム『DIARY KEY』をリリースしたBase Ball Bear。同作には気鋭の女性ラッパー・valkneeをゲストに迎えた「生活PRISM feat. valknee」が収録されている。
これまでも2013年リリースのミニアルバム『THE CUT』収録の同名曲でRHYMESTERがゲストボーカルとしてラップを入れたり、2019年にリリースしたEP『ポラリス』収録の「PARK」で小出祐介(Vo/Gt)がラップを披露したりと、様々な形でラップを取り入れてきたBase Ball Bearだが、フィーチャリングでラップを入れて、かつ小出自身もラップをするというのは「生活PRISM」が初の試みとなった。
爽やかなイメージも強いBase Ball Bearとギャルラッパーとも呼ばれるvalkneeのコラボは、当初意外な組み合わせだという印象を受けたが、実際に聴いてみるとかなりマッチしている。3ピースのシンプルだが洗練されたBase Ball Bearのバンドサウンドに、軽やかに乗る小出とvalkneeのラップが、なんとも心地よい。Base Ball Bearらしさを残しつつ、valkneeのガールクラッシュ的な魅力もしっかりと感じられる。本曲はコロナ禍の現代社会を様々な角度から描いた作品だが、2人の掛け合いで歌われることにより、会えない時間が続いたが、それでもこの時代で共に生きてきたんだということを改めて認識できた気がした。
バンドを結成してからの20年間、ひとつの型にハマらず様々な表現法に挑んできたBase Ball Bearだが、「生活PRISM feat. valknee」はまたひとつ楽曲の幅をグッと広げた楽曲になったことだろう。
ジェニーハイ×ちゃんみな
川谷絵音、中嶋イッキュウ、くっきー!、新垣隆、小籔千豊で結成されたジェニーハイ。バンドのギタリストであり、プロデュースも担う川谷絵音の書く楽曲の幅広さはもはや言うまでもないが、彼がこの個性の強いバンドに仕掛けた飛び道具がトリリンガルラッパーのちゃんみなだ。
ちゃんみなが参戦した楽曲「華奢なリップ」は女性の強がる心を歌ったポップナンバーで、中嶋とちゃんみなのダブルボーカルにより、女性の弱く脆い一面と強気な二面性を見事に表現している。中嶋の綺麗に伸びる高音と、ちゃんみなの力強い歌声のハーモニーも絶妙で、この曲の持つ色気を最限に引き出していく。
本曲は配信リリースされた後、2ndフルアルバム『ジェニースター』の1曲目に収録されている。歌し出しがゲストボーカルである本曲をアルバムのトップバッターという重要なポジションに持ってくるあたり、本人たちにとってもかなり自信のある1曲に仕上がっているという自負があるのだろう。複数のバンドを掛け持つだけでなく、数多くの楽曲提供もする川谷絵音の引き出しは一体どこまであるのか。彼が出す新曲には毎回ワクワクさせられてばかりだ。