MELOGAPPA、しらスタら音楽系YouTuberのオリジナリティ アイデアと技術を駆使して届ける、新たな学びや発見

実力派のみが残っていくYouTuber界の土壌

 いまさら言わずと知れたことだが、YouTuber戦国時代である。“ぶっ飛んだことをやる”、“何かの技術が優れている”、“見た目がかわいい、あるいはかっこいいなど、惹きつけるものを持つ”だけでは簡単に見向きはされない。もともと有名なタレント、つまりはエンターテインメントの世界で奮闘してきた強者たちが参入してからは、ますます厳しくなった。これからのYouTuberは、自身の持っている武器を、知性と感性を駆使して活かしていくことが必須なのではないか。かつテレビでは取り上げられない深く鋭いテーマを撃ち抜き、それでいて最終的にはエンターテインメントに昇華していく……それって、すごく難しいのではないか。つまりYouTuberの成功者の門は、どんどん狭くなってきていると思う。

 そこを通過できるようなアイデアと技術の持ち主は、振り返ってみると2019年ごろから突出してきたように思える。その勢いにコロナ禍のおうち時間が加速をかけ、さほどYouTubeに興味のなかった人間も注目し始めた。そして現在の、いい意味で淘汰され、実力派が残っていく将来を想像させるYouTuber界の土壌が出来あがったのだろう。

 そんな中でも、今回は音楽系YouTuberについてとりあげたい。遡ればボカロや“歌ってみた”、近年では『THE FIRST TAKE』などがムーブメントを巻き起こし、そこをベースに飛躍していった人たちも少なくない。これらの先人のスタイルに挑戦するのではなく、新たな自分だけのスタイルを生み出す人が多いのが、昨今の音楽系YouTuberの特徴だ。

短調/長調へのアレンジ動画が話題になったMELOGAPPA

 その筆頭と言える存在が、MELOGAPPAだ。宮城県出身の「さくま」と「もり」の二人から成るユニットで、“色々な角度から音楽を楽しむYouTubeチャンネル”を掲げて2019年に始動。先日、チャンネル総再生数が1億回を突破したことも、大きな話題を呼んだ。そんなMELOGAPPAの面白さは、音楽の新たな魅力を発見させてくれるところに尽きる。多くの音楽系YouTuberのパフォーマンス、たとえば“歌ってみた”に対しては、他人のふんどしで相撲をとるにはかなりの実力がないと厳しいのでは、と考えている自分でも、彼らの数々の試みは興味深いと思えた。たとえば“短調にしたら絶望感がすごいシリーズ”で取り上げていたOfficial髭男dism「Pretender」や、“長調にしたらすごく明るいシリーズ”で取り上げていたAdo「うっせぇわ」を聴くと、短調や長調ってこういうことか!とわかると思うし、“調”が楽曲にどれだけ影響を与えているのかも知ることができる。“ご本人と歌う名曲短調アレンジシリーズ”もあり、本家のアーティストへのリスペクトも伝わってくる。

「Pretender」を短調にしたら絶望感がすごい / Official髭男dism / Minor Ver.【MELOGAPPA】
【うっせぇわ / Ado】長調にしたらNHKっぽさがすごい【MELOGAPPA】

 また、“CMソングのフレーズだけでオリジナル曲つくってみた”シリーズも面白い。耳馴染みのある数々のCMソングを違和感なくつないで、音楽的にかっこいい一曲にまとめあげているのだ。これはあのCMソングだ、と発見していくのも楽しいし、CMソングってこんなにキャッチーなものばかりなのか、と改めて気付くこともできる。こういった、誰でも知っているような畑で、誰もが思いつかなかったような作物を育てる、そのアイデアと技術(編曲のスキルも含む)が、MELOGAPPAは優れていると思う。

【公式MV】CMソングのフレーズだけでオリジナル曲つくってみた《Part3》【MELOGAPPA】

 2022年春には、全国6会場7公演のZeppツアーも決定。そんな人気者たちだけに、ふたりのキャラクターを好んでいる人も多いだろう。しかし本音を言うと、私はそのアイデアと技術に目がいってしまう。それだけ際立っているということなのだと思う。

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