オリヴィア・ロドリゴ、ティーンからの絶大な支持を集められる理由とは？　本人コメントと共に紐解く

文＝ノイ村、取材協力＝UNIVERSAL MUSIC JAPAN

「一生のうちにやってみたいことは山程ある」

　（少なくとも今のところは）オリヴィアの楽曲には、今を謳歌したり、自分自身の素晴らしさを称えるといった100%ポジティブに振り切ったものはない。だが、完全にネガティブに飲み込まれているというわけではなく、「enough for you」に象徴されるように、その中でも何とか自分自身を大切にしながら、前を向こうとしている姿が特徴的だ。その在り方こそが、エンパワーメントが重視されながらも、一方で閉塞感が漂っているように感じられる現代の中で、彼女が絶大な支持を集めることが出来た理由なのかもしれない。多忙を極める生活の中で、オリヴィア自身もあくまで自分を守ることに重きを置いている。

「時間管理がうまくないといけないんだけど、あまり得意じゃないんです。とにかく精一杯努力して、自分のための時間を作ることも大切だと思う。努力することと自分を大事にすることは同じくらい重要だから」

　「brutal」ではボロボロになりながら「どこから始めて良いかも分からない」と歌うほどに混乱の中にいたオリヴィアだが、今の彼女はあくまで冷静に、だがしっかりとした希望を抱きながら、将来の可能性に想いを馳せている。特に関心を抱いているのはミュージシャン活動を始める前から関わっていた映像の分野だ。

「私は小さい頃から映画のセットで育って、そんな環境の中で、周りの方からすごくたくさんのことを学びました。ミュージックビデオの監督をするのはとても楽しいし、（撮影に）時間もあまりかからない。でも、いつか映画の監督をやってみたいですね。まだわからないけど、一生のうちにやってみたいことは山程あるから」

　あらゆる物事が途轍もない速度で消費され、0か1かの明確な2択が求められ、インパクトのある見出しばかりに手を伸ばしてしまう生活の中で、複雑な感情をリアルに、丁寧に描いたオリヴィア・ロドリゴの音楽は、じっくりと自分と向き合う時間を聴くものに与えてくれる。それは、彼女と同世代の若者だけではなく、全ての人々にとって今最も必要なものかもしれない。