BTS JUNG KOOKとSUGA、ソロでも発揮する音楽的才能 それぞれのアプローチの違いに迫る

まだ見ぬ答えを発見していくSUGAの音楽

 BTSの楽曲プロデュースのみならず、ソロ名義のAgust D、そして他のアーティストのプロデューサーとしても活躍しているSUGA。Rolling Stone誌のインタビューでも「BTSのメンバーとしては調和に、Agust Dの場合は音楽の荒削りさに、他のアーティストの場合はプロデューサーとしてマス市場における人気にフォーカスしているよ」とアプローチの違いについて語っていたのが印象的だ(※1)。

 もともとSUGAは自らフロントに立つよりも、制作サイドを希望していた。それゆえに、メタ的に物事を見つめる能力が高い。BTSではアイドルとしての顔も持ちながらも、ラッパーとしての実力もしっかりと見せていく。Agust Dでは自分自身の内なる叫びを形にし、そのヒリヒリとする歌詞に驚かされることもしばしば。他のアーティストに向けた楽曲もそれぞれの“らしさ“を生かしたプロデュースで音楽ランキングの上位をさらっていく。何が今そのシチュエーションで求められているのか、それを見極めて作品にしていくバランス感覚が天才的なのだ。

 それは自分自身の歌声に対しても言えそうだ。2019年3月には、公式YouTubeチャンネルにてSUGAのレコーディング風景が公開された。そこでは担当するラップ部分を何度も録っては聴き返す姿が映し出されるのだが、テイクごとに異なる雰囲気を次々と出していく引き出しの多さに驚かされる。

[BANGTAN BOMB] SUGA's '신청곡 (Song Request)' recording behind - BTS (방탄소년단)

 例えるなら、JUNG KOOKのレコーディングが極小のストライクゾーンど真ん中に向けて投げる度に速度を上げていくのに対して、SUGAのレコーディングは球速もボールの通るルートも異なる多彩な変化球。まだ誰も投げたことのない魔球を編み出そうとするかのようだ。それくらいの違いを、2人のレコーディング風景から感じることができる。

 持ち前の落ち着きのある声色を最大限に生かしたどっしりとした歌声から、少しかすれ気味に繊細さが伝わってくる歌声、ちょっぴりライトな弾むような歌声……たくさんある答えの中から、何が一番しっくりくるものなのか。やがて苦悶の表情を浮かべてソファに倒れ込むSUGA。

 その姿を見ていると、彼が目指している音楽は「発明」なのではないかと思えてくる。今回の多くの人が耳にしたことのあるプリセット楽曲を新たな形にアレンジするのもまたひとつの発明。常に、まだ見つけられていない最適解を導き出し、みんながやろうとしてできなかったことを音にしようとしている。まだまだ彼の中で発掘されていない音楽たちが、BTSとして、Agust Dとして、他のアーティストの楽曲として……あるいはさらなる新しい扉から飛び出してくるかもしれないと思うと、楽しみでならない。

※1:https://rollingstonejapan.com/articles/detail/34925/6/1/1

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