桑田佳祐、音楽家の使命感とプライド 「SMILE~晴れ渡る空のように~」“どんな時代でも、人々を励まし、楽しませる”メッセージ
桑田佳祐の「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」がついに今週配信シングルとしてリリースされた。
オリコンデイリーデジタルシングル(単曲)ランキング(2021年7月12日付)で1位を獲得したほか、各配信サイトのデイリー/リアルタイムランキングでも1位となるなど、大きな反響を集めている「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」。昨年、民放共同企画『一緒にやろう2020』応援ソングとして発表されたこの曲の魅力を改めて紐解いてみたい。
民放共同企画『一緒にやろう2020』は、様々な課題に対しテレビ局各社が“一緒に”きっかけ作りを行い、より良い社会を作るという理念を掲げた企画。このプロジェクトの応援ソングとして制作された「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」もまた、“一緒に”進んでいこうというメッセージを力強く押し出している。
サウンドの基調は、きらびやかなシンセと打ち込みのトラック。そこにエッジの効いたギターのフレーズなどを取り入れることで、未来的なイメージと生々しい人間性を共存させている。大らかな解放感、そして、リスナー一人ひとりに語り掛けるような親近感を併せ持ったメロディを含め、“より良い社会を作る”という壮大なテーマにふさわしい楽曲と言えるだろう。歌詞の背景にあるのは、2020年に開催されるはずだった2度目の東京オリンピックだろう。〈人類が織りなす 夢と希望の舞台〉〈ここから未来を 始めよう〉といったフレーズは、そのことを端的に示していると思う。
新国立競技場近辺で撮影された「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」の民放公式スペシャルムービーが公開されたのは、2020年1月25日。周知の通り、世界はその後、コロナ禍に見舞われた。ロックダウンされる都市が相次ぎ、社会、経済、教育など、あらゆる分野で未曾有のダメージが拡大。もちろんエンターテインメント業界も例外ではなく、音楽、映画、演劇などはほとんどがストップしてしまった。
そんな過酷な状況のなかでも桑田佳祐は、積極的な活動を繰り広げてきた。まず2020年6月25日に、横浜アリーナで初の無観客配信ライブ『サザンオールスターズ 特別ライブ 2020「Keep Smilin’ 〜皆さん、ありがとうございます!!〜」』を開催。「真夏の果実」「東京VICTORY」「マンピーのG★SPOT」「勝手にシンドバッド」など新旧のヒット曲を次々と披露。「Overture」で「世の中は予期しないことがあるけど、これからも頑張ってまいりましょう」「笑顔を見せてください。また逢う日まで待ってます」「人生は世の中を憂うことより、素晴らしい明日の日を夢見ることさ」と歌い、50万人(推定視聴者)のファンにエールを送った(※1)。さらに大晦日には、無観客年越しライブ『サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ 2020「Keep Smilin’〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜」』を行い、エンターテインメント性に溢れたステージを展開。サザンのファンはもちろん、困窮する音楽関係者へのエール、医療関係者、エッセンシャルワーカーへの感謝や労いを表明した(※2)。その根底にあるのは“少しでも皆さんを元気づけたい、楽しませたい”という強い意思、そして、“SMILE(Smilin')”というワードだ。桑田が「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」に込めた人々へのエール、未来に向けた希望はそのまま、コロナ禍以降の活動につながっていると言っていい。
今年3月7日に行われた桑田佳祐(ソロ)の無観客配信ライブ『静かな春の戯れ〜Live in Blue Note Tokyo〜』も強く心に残った。約4年ぶりのソロライブであり、初のブルーノート東京公演となったこのライブで桑田は、「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」を初めて披露。「コロナ禍でも、(『SMILE〜晴れ渡る空のように〜』を聴くと)元気になれる気がすると言ってもらえて。アスリートのみならず、皆さんにエールが届くように初めて歌わせていただこうと」(桑田)というコメントともに、この楽曲が持つパワーを改めて証明した(※3)。