Mega Shinnosukeが示した“Z世代ならではの戦い方” アルバムへの期待値も十分な東京初ワンマンライブ

 グラフィティが描かれたレンガ柄のバックペーパー(「Thinking Boyz!!!」のMVにも登場する)がフォトスポットになっていたり、オリジナルグッズ以外に古着も売られていたり、ライブが始まる前から“Gen Z”な価値観に出会う。ポップなフィールドで活動する日本のアーティストではなかなかお目にかかれない空間だ。

 コロナ禍の影響で再三延期となってきた東京での初ワンマンがついに実現した7月1日。2000年生まれのMega Shinnosukeと主にハイティーンのファンが作り出した空間は、それを観る世代によって新鮮にも懐かしくも感じる部分があったと思う。どこか90年代のオルタナティブロックやギターポップがヒップホップと出会った頃の、未来の音楽にワクワクする感じもありつつ、ストリーミング世代ならではの時間軸関係なく広がる音楽の海の中で、直感に従って獲物を捕らえるしたたかさが同居していたからだ。

 開場BGMはジュリアン・カサブランカス、レミ・ウルフ&ドミニク・ファイクなど、今の彼の音楽のリファレンスがなんとなく分かるナイス選曲。タイラー・ザ・クリエイターの「See You Again (feat.Kali Uchis)」の音量が上がったところで、バンドメンバーが登場。今回はsooogood!(Gt/Cho)、Kenshiro Kameyama(Ba/Cho)、池田優太(Key/Cho from BREIMEN)、Ryosuke Takahashi(Dr/MNP)。グルーヴミュージックもロックも自らのセンスで消化し演奏できる、コレクティブ的な動きを見せる若手集団なのも注目度が高い。

 新曲「Thinking Boyz!!!」でスタートしたステージには、MVにも登場するマスクマンズ(Megaの命名)が踊り、いきなりアッパーなテンションだ。ノイジーなギターは今またトレンドになりつつあるが、グラムロックのテイストまでアレンジに組み込むセンスは、例えばマシン・ガン・ケリーのギターサウンドが軽く感じるほど。もっと言えばMega Shinnosukeの1曲はある時代のバンドやアーティストのフィロソフィーをそのまま体現しているかのようで、「Thinking Boyz!!!」ではBeastie Boysを、2曲目の「Wonder」ではカジヒデキのような良質な90年代ギターポップを続けて堪能しているような“濃さ”がある。決定的に過去のそれと違うのは、ラップを経由してきた歌詞のフロウであり、逃避願望にすでに縋れない現実の脅威が迫る、Z世代らしい軽快な戦い方だ。キャッチーな曲の中で、ピンポイントで切なさを誘発するメロディがフロアを沸かせているのかもしれないし、深いところで共感しているファンもいるのかもしれない。共感の幅は様々であるが、紛れもない楽しさと、Mega Shinnosukeという強いパーソナリティへの興味が尽きないのだ。

 「東京初ワンマンでどれぐらいMCをしたらいいのか、何を話したらいいのか分からない」と言いつつ、かなりの時間をMCに割いていたのも発見。2曲披露した後、ライブがないのに量産したグッズをみんなが着てきているのを見て安心したという話題や、早々のメンバー紹介など、ライブのテンプレは徹底的に無視。その後、インディーポップの旨味を凝縮したような「Sports」や、古今東西ハードロックにもあるようなハイスクール・ロックテイストの「School」、チルアウトヒップホップやネオソウル感のある「兄弟」と、新曲2曲も披露。この夏リリース予定の1stフルアルバム『CULTURE DOG』収録曲だという。このアルバムタイトルもシニカルなのか意思表明なのか、いずれにしても2ワード以上を接続した時のワードセンスがいちいち冴えている。

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