ルッキズムやカテゴライズへの“違和感”をニュートラルに捉えた楽曲「いれもの」 City Cyndromeが向き合う現代の生きづらさ

City Cyndrome、“違和感”と向き合い届けた楽曲

表現としての“あるべき姿”を優先

ーーMOMOさんは三浦大知さんなど数多くのアーティストに楽曲提供、鈴木さんはMVやライブ映像の制作をされています。提供する際の創作と、自身の創作ではやり方や向き合い方に違いはありますか?

MOMO:提供曲というのは、題材やテーマがすでに決まっているパターンと自由に任せていただくパターンがありますが、どちらもマス向けに書いている感覚はあります。みんなが共通して感じられる、普遍的な感覚ですね。対して、自分の楽曲は一部の人にしか理解されないかもしれないけれど強く伝えたい言葉を書いていて、「いれもの」はその最たる例かなと思います。

 でも提供曲と自分の曲でテーマが実は同じということは多いですし、どちらも大事に言葉を選んでいます。特に三浦大知さんには多くの歌詞を提供させていただいていますが、ご本人や制作スタッフに許容してもらえる範囲がとても広い気がしていて、表現の幅が拡がるし試される本当に素敵な仕事をさせてもらっている実感があります。感情にも、風景にもレイヤーがあると私は思っていて、提供曲は上澄みの部分を用いてわかりやすく届ける、自分の曲はそれらの下に存在している層から言葉を紡いでいるようなイメージです。

ーーそれは、何階層目にするか客観視しながら作るのか、それとも作りながら入り込んでいってしまうのでしょうか。

MOMO:「ここをどうしても書きたい」というテーマと階層を目掛けて書いていきます。どうしても、この感覚だけは言葉にしたいというのがあって、そこにたどり着くために歌詞にしますね。

鈴木:テーマをノートに書き溜めているとおっしゃっていましたよね。

MOMO:そう。書きたいこと、それを表現するための入り口やしっくり来る言葉を日々考えていますね。違和感だったり寂しさだったり、いろいろ感じてしまうタイプなんです。だから、言葉を溜め込んで、一つの作品になりそうな時に歌詞にまとめています。

ーー出口が先に見えていて、そこに向かうための入り口の材料を集めるタイプなんですね。

MOMO:そうかもしれません。必ずしもハッピーエンドが待っているわけじゃないし、何事にも絶対に解決策があるとは思っていなくて。提供曲というのは基本的に、一つの光を求められて書くことが多いのですが、人生そうとは限らないですよね。常に、迷いの渦中にいる。だから、私の歌は明確な答えがないかもしれないけれど、それでも許される感覚を歌っています。ものすごくテンションが高いわけでも、落ち込んで死に際にいるわけでもなく、中庸を漂っている。そこにいることが心地よいので、中庸をキープできるような歌を自然と目指すようになった気がします。

ーー鈴木さんは、自分の作家性を表現するために今回のプロジェクトをスタートさせたわけでなく、あくまでもいい楽曲を届けるための一表現として関わられているとおっしゃっていました。依頼仕事との違いはどんな点にありますか?

鈴木:歌詞や楽曲の世界観ありきで映像を作ろうとする意識は、依頼仕事でも今回のプロジェクトでも変わらないです。作家性は無意識に表出するものだと思いますし、演出という役割にもこだわりはないので、楽曲によっては、アニメーション作家の方など、様々なクリエイターの方々と一緒に作っていきたいとも思っています。

 大きく違う点は、普段は予算と納期が先に決まっていて、そこから楽曲との最適解を見つけていくというフローですけど、今回の場合は全て自主制作なので「楽曲の魅力を増す映像はこうあるべきだ」という表現のあるべき姿を先に決めて、予算について自問自答するところからはじまることです(笑)。自主制作だから、あれもこれもやりたい、と贅沢なことは言っていられないのですが、その分、映像化するにあたって一番大事なこと、譲れないポイントを絞り込んで、できる限り手を尽くしたいですね。

 あとは、表現を考える方向性の矢印も違うと思います。普段の仕事はファンを多く抱えている方の映像を作ることが多いので、すでに世界観が定まっていたり課題があったりします。タイアップとの兼ね合いなど、マーケティングの視点も入ってきますしね。でも、今回は本当に何もないところからやっているので、純粋に歌詞の世界観や楽曲のグルーヴ感を求めて、映像に落とし込むことを目指しました。

ーー最後に、これからの活動について教えていただけますでしょうか。

MOMO:2ndシングルとして、私達が出会うきっかけにもなった「キボウノ唄」を6月10日に新たなアレンジで正式にリリースしたところです。この曲では、どうしようもない喪失感と絶望の中で生まれる、諦めのような悟りのような感情を、キボウ、と歌っています。東日本大震災後にフリーダウンロードで公開した時と同じように、今の混沌とした日々の中で何か自分にできることはないかという気持ちで今回の正式リリースに至りました。3rdシングルは「しあわせな不自由」という曲で、自分の人生が自分だけのものでなくなる甘美さと、その代償について歌っています。

鈴木:「キボウノ唄」の映像を出すのは、撮影ロケーションにこだわりたい関係で、少し先になると思うのですが、この後もシングルのリリースが続くので映像プランを考えているところです。どれも大事な曲なので、1曲ずつ丁寧に楽曲に向き合っていきたいですね。

■リリース情報
1st Single「いれもの」5月10日 リリース
2nd Single「キボウノ唄」6月10日 リリース
各種配信リンク:https://linkk.la/CityCyndrome

■City Cyndrome 関連リンク
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