J-POP×インドモチーフはなぜ相性がいい? ゆず、ラストアイドルの楽曲&MVを機に考察

J-POPとボリウッド音楽にも通じる「何でもあり」感

 J-POPは「良い」と思ったものは何でも取り入れる。その柔軟性が魅力であり、面白いところだ。時代の流れとともに、ときには西洋音楽の影響を受け、ときには民族音楽のテイストを取り入れながら、独自の進化を遂げてきた。

 この「何でもあり」感は、いわゆるボリウッド音楽(インド古典音楽とは異なる)とも通ずるところがある。インドの古典音楽を伝承する一方で、自由な発想のもと変化を遂げてきたボリウッド音楽。J-POPとボリウッド音楽には、ときにはちゃめちゃとも言える発想さえ自由に取り入れる、音楽的スタンスの近さを感じる。

 とはいえ、元来インドの古典音楽には厳密なルールがある。「ラーガ」と呼ばれる旋法を遵守しながら、即興の音楽を奏でるのがインド音楽の美学だ。この「ラーガ」には「心を彩る」という意味があるという。音楽の様式は変容を遂げつつも「自由に心を開放し、好きなように彩る」、そうした古典音楽の根幹は脈々と受け継がれ、ボリウッド音楽が放つ圧倒的な解放感と非日常感、幸福感に反映されているように思う。

 きらびやかな空間のなか、皆が笑顔で、自由に歌い、踊る。この世界観は到底、日本にはないものだ。だからこそ我々は、ボリウッド音楽に憧れや楽しさを覚え、心惹かれる。この底抜けの明るさと華やかさこそ、インドモチーフがJ-POPリスナーから愛される一番の理由ではないだろうか。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter(@akino_ippo)

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