くるり、『天才の愛』での“ひらめきと探求”　「0から1に生み出されたものがどこまで飛べるのか」

大きいエネルギーを呼び出す媒介としてのアート

ーー今作は複数のインスト曲も印象的で、中でも「大阪万博」はただならぬ気配を感じるようなプログレ曲になっています。

岸田：これも長い時間かけてできてきた曲ですけど、ライブでやれる難しい曲を作ろうと言って始まって。

佐藤：『ソングライン』に「Tokyo OP」っていうインスト曲があるんですけど、ライブでやる時のことを考えると、もう1曲くらいあった方がいいんじゃないのってなったんですよね。

岸田：それで最終地点が見えないままやっていって、ここまでやったからもうええやろみたいな（笑）。

佐藤：作り始めた最初の頃は、割と自分達は音を詰め込むから、1カ所で1個以上音が鳴っていないものを作ろうみたいなコンセプトがあったんですよ。

岸田：最大発音数を制限するということですね。

佐藤：それで一番最初のパートは繁くんがそういう感じで作ってきて、それぞれの楽器が入り組んでいるから紐解いて見ると面白いんですけど、結果的にはバリッバリの音数になったという（笑）。「大阪万博」そのものを表現するところに向かったという曲です。

ーー万博では様々な国や地域の文化が並び、その歴史と未来の姿を映すような側面があるように思いますが、くるりの音楽もいくつもの音楽が混在してできているように思います。

岸田：なるほど。でも、僕はあんまりそういう風には思っていなくて。ここで言う大阪万博が何なんかって言ったら、最初のナレーションで言っていることですかね。

ーー〈昔人類は自分より大きな力、不思議な力を神や魔物の仕業と考えて恐れ、お面に象ってその力を借りようとしました〉というナレーションが入りますね。

岸田：オリンピックもそうかもしれないけど、万博では常人には理解できない大きなもの、例えば宇宙の動きとか、禍々しいスピリチュアルな現象とか、そういうものが動くじゃないですか。岡本太郎さんの太陽の塔もそうですけど、何かエネルギーの大きいものを呼び出す媒介としてのアートが好きで。1970年の万博にはそのイメージがありますし、そこに興味があるんですよね。まあ、こういう話は言えば言うほど胡散臭くなるけど......日常でできたささくれのような傷や、現実が困窮して膿んでいったものが、何かによってパーっと照らされて治癒される感覚。あるいは、どうやってその局面をくぐり抜けたのか、自分自身思い出そうとしても思い出せないけど急にできるようになったり、そういう不思議な経験を持っている人がたまーにいると思うんですよね。

ーーそうした得体の知れない力を表現しようとしたということですか？

岸田：合理的な考え方では当てはまらない不思議な力って言うんですかね。そういうものにはなってないとは思うけど、なぞらえていくことにチャレンジした曲かもしれないですね。なのでありえへん動きで絶体絶命感っていうのを出していて。最初の30秒くらいで、「あ、死んだ」みたいな箇所があるんです。そっからラスボスが出てきて常にヒットポイントが一桁の状態を維持するみたいな、そういう感じ？

佐藤：今のはわからへんな（笑）。

岸田：わからへん時は、わからへんて言ってくださいね？

ーー（笑）。

佐藤：でも、「大阪万博」も「野球」もそうなんですけど、やっぱり聴いているとパッと開ける感じがあるんですよね。正直、コロナ禍っていうのもあったと思うんですけど、曲の中でそういう開けた感じを味わえるっていうのは、自分達にとっても救いになったと思うんです。このアルバムを聴いてくれる人が、パッと聴いて同じことを感じるかって言ったらそうではないと思うんですけど、少なくとも僕らは全部の曲でそういう感覚を得られるように頑張りました。2020年はこのアルバムを作りましたって、胸を張って言える作品ではあると思います。

岸田：頑張るイコール辛いと思ってたけど、そうじゃなかったっていうのもデカいですね。辛いことをやったり、痛みに耐えたり、手を汚したり、そういうことの結果できましたっていうのとは全然違う感覚があります。

ーー音楽家として、また新しい場所に行けたような？

岸田：いや、そもそも僕らしか走っていないところやから。まあ、この道誰もきいひんやろなってこともわかっているんですけど（笑）。でも、そのうち気づくね。10年後、いや、5年後くらい。5年後くらいに、こんなことやってたんやって言われたい。はい、我々が先にやってました、ということです。

佐藤：（笑）。

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＜締切：5月22日（土）＞

■リリース情報
くるり『天才の愛』
2021年4⽉28⽇（水）発売
ダウンロードはこちら

完全限定生産盤A（CD+Blu-ray）¥4,950（税込）
完全限定生産盤B（CD+DVD）¥4,300（税込）
通常盤（CD）¥3,190（税込）

＜収録曲＞
M1.「I Love You」
M2.「潮風のアリア」
M3.「野球」
M4.「益荒男さん」
M5.「ナイロン」
M6.「大阪万博」
M7.「watituti」
M8.「less than love」
M9.「渚」
M10.「コトコトことでん (feat.畳野彩加)」
M11.「ぷしゅ」

＜完全限定生産盤 収録特典映像＞
・ライブ映像および『天才の愛』制作ドキュメンタリー（約80分）
・『LIVEWIREくるり in 京都磔磔 2020.07.11』
温泉 / 目玉のおやじ / コンバット・ダンス / ロックンロール / 心のなかの悪魔 / everybody feels the same

■ツアー情報
『くるりライブツアー2021』
6月2日（水）Zepp Namba 開場 18:00 / 開演 19:00
6月3日（木）Zepp Nagoya 開場 18:00 / 開演 19:00
6月7日（月）Zepp Fukuoka 開場 18:00 / 開演 19:00
6月9日（水）Zepp Haneda 開場 18:00 / 開演 19:00
6月10日（木）Zepp Haneda 開場 18:00 / 開演 19:00

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