中島愛が語る、5thアルバム『green diary』で表現した“シンガーとしての意思” 記念碑的な1枚の制作秘話

中島愛、シンガーとしての意思

「30年後の誰かがこのアルバムで救われていたら嬉しい」

ーー続いてtofubeatsさんが書かれた「ドライブ」。tofuさんは過去にアレンジでの参加がありましたが、楽曲提供は初ですね。

中島:はい。これは一番自分の中に深く潜る曲にしたかったので、イメージカラーは「心に張っている藻」です(笑)。これまで“寂しい”とか“切ない”はいろんな曲で表現してきたけど、“虚しい”には挑戦したことがなかったんですね。気持ちにぽっかり穴が開いたような、空虚な感じを繊細なディテールで曲にしてくれるのはtofubeatsさんだろうと。

ーー個人的には〈B面の曲〉というフレーズがすごくいいなと思いました。

中島:本当にいいですよね。最初にデモを聴いたとき、グッと来すぎて深夜に1人で泣きました(笑)。具体的に「こういうワードを使ってください」とお願いしたわけではなかったんですけど、tofubeatsさんとはレコードの話をするラジオなどでご一緒する機会もあったので、そこから自然と掬い上げてくれたんだと思います。

ーー言葉を介さずとも通じ合える部分があったんですね。

中島:この曲のレコーディングで印象的な出来事があって。私はあまり声色を変化させられるタイプじゃないので、「歌い方の工夫で少しでも違いを出さないと」って自分に課しているところがあるんです。そんなふうに自分を追い詰めながらやっていたら、tofubeatsさんが「いや、ずっと変わらないことをやれるほうがすごい。そのアイコン的な歌声がむしろ中島さんの武器なんじゃない?」みたいなことをポロッと言ってくれて。目から鱗でしたし、その一言ですごく気が楽になったんですよ。

ーーそしてシングル曲「水槽」を経て、ラストナンバーは葉山拓亮さんによる「All Green」です。これはどんなイメージでお願いしたんですか?

中島:もともとアルバムの最後は「All Green」というタイトルの曲で締めようと決めていて。ロケットとかが発射するときの「進め」という意味ですけど、「これから先も自分が歌手としてやっていけるように」という願いを込めつつ、現状も反映した曲を、と。

ーー葉山さんという人選は、中島さんの希望で?

中島:そうです。小学生の頃からファンなので、自分の大好きな人に「君はこれからも進んでいきなさい」と言われたら、どんなにネガティブな自分でも間違いなく進めるだろうなと(笑)。いつかお願いしたいとずっと思っていた人ではあるんですけど、「葉山さんにお願いするのは何かを成し遂げてから」みたいな、願掛けのように考えていたところがあったんです。

ーー今回、ようやくその時が来たと。

中島:メジャーレーベルでアルバムを5枚も出せるなんて、かなり難しいことだと思うんですよ。普段あまり自分を褒めることはないんですけど、その点に関しては「よくやったね」と思えたので(笑)。

ーーしかも中島さんの場合、途中お休みしていた期間もありますから、継続的に活動して5枚目に到達するよりも、はるかに難易度が高そうに思えます。

中島:贅沢な話ですよね……。2017年に復帰第1弾シングル『ワタシノセカイ』を出したときは、「次がなくてもしょうがない」くらいの気持ちでした。というか、わりと毎回「これが最後の作品になってもいい」と思って作ってるんですよ。それは後ろ向きな意味ではなくて、常に自分の中にあるものを全部出し切っているという意味で。そのことも葉山さんにお話ししたら、「もっと早く頼んでくれればよかったのに」って言われましたけど(笑)。

ーー「All Green」はメッセージ的には前向きで力強い歌だと思うんですけど、そのわりには淡々とした味わいの曲に仕上がっているのが面白いなと感じました。

中島:今回のアルバムには「頑張っていこうね!」みたいな励ましを入れないことにしたんです。そういう強いメッセージよりは、私が励まされたかったので(笑)。すごく深くて前向きな歌詞なんだけど、つぶやきに近い淡々とした感じが理想通りで嬉しかったですね。

ーー「Over & Over」で異様な始まり方をして、「All Green」であっさり終わるという。アルバム全体の流れも非常に美しいですね。

中島:ここから1曲目に戻りたくなるんですよ。自分で通して聴いたときに、確認のためとかじゃなく自然とリピートしちゃいましたから(笑)。すごくいい終わり方だなと思っています。

ーーそうして完成した『green diary』ですが、10年後や20年後にご自身のディスコグラフィを振り返ったとき、この5枚目のアルバムはどういう意味を持つ作品になっていると思いますか?

中島:「中島、よくやった!」って感じでしょうか(笑)。私はどちらかというと台本を渡されて「こうしてください」と言われたほうが気持ちが乗るタイプだったりするので、いざ自分主導で作るとなったとき、「私のやりたいことって……?」と途方に暮れてしまって。しかもデビューからこれまでがすごく恵まれた環境だったので、ある意味満足しちゃってる部分もあるんですよ。野心がないのがコンプレックスでもあったんですけど、「やる」と言ったからにはやるしかない。なので、制作はけっこうハードだったし苦しかった。「曲も書いてないくせに」って感じですけど(笑)。ただ、最終的には自分で「何回でも聴きたい」と思えるアルバムができましたし、すごく記念碑的なものになったなって。

ーー実際、中島愛ヒストリーの中では“自我の目覚め”みたいなひとつのマイルストーンになり得る作品なんじゃないかなと思います。

中島:うんうん、そうですよね。なおかつ私の願いとしては、30年後の誰かがこのアルバムで救われていたら嬉しいなと。私自身が中学生の頃に80年代という全然違う時代のメッセージに救われた経験があるから、このアルバムも何十年か後に再び発掘されてほしい。そう思える作品になったなと思います。

■商品概要
中島愛『green diary』
2021年2月3日(水)発売
・グッズ付き完全生産限定盤(CD+BD+GOODS)8,900円+税
※巾着口付きトートバッグ+アクリルキーホルダー付き
・初回盤(CD+BD)5,000円+税
※三方背ケース付き
・通常盤(CDのみ)3,000円+税

<CVD収録曲>
M-1:Over & Over(作詞・作曲・編曲:三浦康嗣)
M-2:GREEN DIARY(作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴)
M-3:メロンソーダ・フロート(作詞:児玉雨子 作曲:SoichiroK、Nozomu.S 編曲:Soulife)
M-4:ハイブリッド♡スターチス(作詞・作曲・編曲:清竜人)
M-5:髪飾りの天使(作詞・作曲:吉澤嘉代子 編曲:清竜人)
M-6:粒マスタードのマーチ(作詞・作曲・編曲:宮川弾)
M-7:窓際のジェラシー(作詞:Summer Valentine 作曲:RAM RIDER 編曲:FILTER SYSTEM、RAM RIDER)
M-8:ドライブ(作詞・作曲・編曲:tofubeats)
M-9:水槽(作詞:新藤晴一 作曲:矢吹香那 編曲:トオミヨウ)
M-10:All Green(作詞・作曲・編曲:葉山拓亮)

<Blu-ray収録内容>
・「GREEN DIARY」「水槽」「髪飾りの天使」MV
・2019年2月2日に開催された『フライングドッグ10周年記念LIVE 犬フェス!』ライブビューイングより「星間飛行」「サタデー・ナイト・クエスチョン」映像

 ※1月20日よりアルバムリード曲「GREEN DIARY」のみ先行配信スタート

特設サイト
アルバム制作に対する思いや作家陣との打ち合わせの様子などが、中島愛自身の言葉で綴られているここだけのダイアリー公開中

■関連リンク
中島愛 オフィシャルファンクラブ“LOVE with YOU”
中島愛 オフィシャルHP
中島愛 オフィシャルTwitter
中島愛 公式YouTubeチャンネル

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