『FLYING FIRST PENGUIN』インタビュー

s**t kingzが明かす、表現し続ける理由「衝動や原動力は、これからも一番上に置いておかないといけない」

 s**t kingzが、“見るバム”『FLYING FIRST PENGUIN』をリリースした。

 「ダンス表現を作品として残し、たくさんの人に見てもらうには?」という思いから始まったという本作は、全曲オリジナル楽曲によるダンス映像アルバム。C&Kが手がけた「FFP feat.C&K」、SKY-HIをフィーチャーした「Oh s**t!! feat.SKY-HI」、メンバーのshoji、kazuki、NOPPO、Oguriのソロ曲などが収められ、ダンスグループとしての多彩な表現を体感できる作品に仕上がっている。

 昨年の6月、8月に配信ライブを行い、映像ならではのパフォーマンスを追求。11月には映画『チャップリンの独裁者』の伝説的な演説をダンスとともに伝える映像(The Great Dictator - Final Speech)を公開するなど、コロナ禍の1年を精力的に駆け抜けてきた4人。卓越したダンススキル、豊かな感情を含んだ表現力をエンターテインメントに結びつけるシッキンの魅力は、本作『FLYING FIRST PENGUIN』によってさらに大きく広がることになりそうだ。(森朋之)

s**t kingzらしい問題提起が初めて出来たのかもしれない

ーーまずはs**t kingzの2020年について聞かせてください。ライブこそ出来なかったものの、配信ライブをはじめ、かなり精力的に動いた1年だったと思うのですが、みなさんはどう捉えていますか?

shoji:舞台が延期になったり、出来なかったことも多かった1年だったんですけど、「いろんなものがルーティン化していたんだな」と初めて気付けたんですよね。そのうえで「今だったら何ができるだろう?」とみんなで考えて、実際に新しいことをいろいろと始められた1年だったと感じています。おそらく2020年がなかったら、それまでの活動の繰り返しをずっと続けていたんじゃないかなと。去年の活動を通して新しい方向性を見出せたし、「シッキンはもっといろんなことが出来る」「制限されればされるほど、新しいものを見つけられるグループなんだな」ということも改めてわかって。変わり続けていることにワクワクしてますね。

kazuki:生でパフォーマンスできなかったぶん、配信の映像作品にとことん力を入れた1年でしたね。そこまで映像に向き合ったことはなかったし、配信であっても、観てくださってる方には伝えられるんだなということもわかって。コロナがなかったから、そこまで考えられなかったかもしれないですね。

NOPPO:ネガティブな世の中が続いてますけど、ありがたいことに僕らはずっと忙しくしていて。s**t kingzはネガティブをポジティブに変えられるチームなんだなと再認識したし、自分たちのことを突き詰めて考えられた1年でもありました。これは今回のアルバムにもつながるんですけど、音楽の著作権のことについても自然に触れられたし、良いきっかけがたくさんありましたね。

Oguri:去年はむしろ、普段の年よりスピード感があった気がして。さっきshojiくんが言っていたようにルーティン化している部分もあったし、慣れが生じたり、人任せにしてるところもあったと思うんですよ。活動が制限されたことで、「改めて自分たちは何がしたいのか?」だったり、表現する理由、踊る理由についても話し合って、そのなかで「踊ることが好き」「モノ作りが好き」ということが浮かび上がって。そういう衝動や原動力は、これからも一番上に置いておかないといけないし、s**t kingzにとって大事な1年になりましたね。

ーー映画『チャップリンの独裁者』の有名な演説をダンスとともに伝える映像も反響を集めました。あの映像の発案はOguriさんだとか。

The Great Dictator - Final Speech / s**t kingz

Oguri:はい。Black Lives MatterがSNSで広がって、自分もすごく気になっていて。参加する予定だった舞台『ウエスト・サイド・ストーリー Season3』も人種差別がテーマになっていたし、自分なりにSNSの情報を見ていたら、他のダンサーがチャップリンの「独裁者」の演説をシェアしていて、すごくグッと来たんです。そのときにs**t kingzで踊っている絵が浮かんできて、次のリハーサルのときに「これ、みんなで踊ってみない?」って気軽な感じで提案したら、自分が思っている以上に「いいじゃん!」って賛同してくれて。

ーー皆さんはアメリカのレッスンを受けた経験もあるし、海外の活動も豊富。BLMに対しても、一般の日本人よりも「他人事ではない」という気持ちが強かったのでは?

shoji:そうかもしれないですね。ダンサー仲間は世界中にいるし、BLMの活動に加わっている人も多くて、どういう状況なのかを伝えてくれて。「自分たちは携わらなくていいんだろうか?」という気持ちもありました。日本にいると、人種差別の問題に触れることは比較的少ないかもしれないけど、制度的な差別は身の回りにもありますからね。そんなときにOguriから提案があって、「こういう衝動って大切だな」と思って。スタッフともたくさん話をしたんですけど、「この動画で何を伝えたいのか」「どんなスタンスで発信するのか」と説明を求められて、それに言葉で答えるのがすごく難しかったんですよ。ただ、4人のなかでは踊っている絵が見えていたし、言葉ではなく、ダンスで伝えることに意味があるという気持ちもあって。まずは実際に踊ったダンスを見てもらって、そのうえで「どうやって世の中に出していくか」を話し合ったんですよね。

kazuki:(BLMの運動に対しては)助けたい、サポートしたいという気持ちはあるんだけど、何をしていいかわらかなかったんです。自分が「差別やめようよ」といったところで別に何が変わるわけでもないなって。でも、あの動画を公開したとき、周りのダンサーたちがすごくたくさんシェアしてくれて。メッセージをくれた人も多かったし、僕らと同じように「気にはなってるけど、何をしていいかわらかない」という人をつなげられたのは良かったなって。

NOPPO:演説に合わせてパフォーマンスしたわけですけど、僕たち自身も言葉に影響を受けて、それが動きにつながって。気持ちを込めて踊ったし、その勢いや気迫みたいなものが伝わったのかなと。何回も考えて、話し合いながら作りましたからね。

shoji:動きのカッコ良さが見え過ぎないようにしたかったんです。「自分たちの踊りがカッコいい」ではなくて、「伝えたい思いがある」ということがわかる振り付けにしたくて。

Oguri:そのサジ加減は難しかったですね。そもそも言葉に合わせて踊ってるので、タイミングの取り方、動き方も普段とは違って。けっこう苦戦しました。

ーー振り付け自体もすごくカッコいいですけどね。

NOPPO:ありがとうございます。CDのジャケ買いじゃないけど、パッと見たときに感覚的に「いい」と思ってもらえたのかなと。

shoji:それがダンスの魅力ですからね。「こういう問題があるんだぞ」と言いたかったというよりも、「この動画、何だろう」と興味を持ってもらって、考えるきっかけになったらいいなと思っていたので。そういう意味では、s**t kingzらしい問題提起が初めて出来たのかもしれないですね。ずっと「楽しい!」「カッコいい!」を届けてきたグループなんですが、こういう問題提起も受け入れてもらえるんだなと感じられた貴重な経験になりました。

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