2020.12.29 16:00

神宿、楽曲＆ビジュアルイメージの刷新で飛躍遂げた2020年　個々人の活躍や個性も際立つターニングポイントに

文＝西廣智一

　こういった変化・進化は音楽面のみに限ったことではない。特に今年の神宿に驚かされたトピックにもうひとつ、ビジュアル面での変化も挙げられる。これは「Brush!!」のアートワーク＆MV、およびアルバム『THE LIFE OF IDOL』のアートワークに顕著で、メンバー全員が20歳を超えたことに伴ってか、グループとしての統一感が強い“アイドルアイドルした”以前のパブリックイメージから一人ひとりの“個”の強まりを感じさせるものへと進化。特に「Brush!!」ではファッションのみならず髪色も変えるなど、楽曲にフィットしたビジュアルで新境地を伝えた。

神宿 KAMIYADO「Brush!!」MV

　ここまで変わることに対して躊躇なく、どんどん新たなトライを見せられるのも、最初に述べたようにメンバー一人ひとりの実力や個性が際立ち始めたことも大きい。そこに対する自覚がより明確になったのも、神宿における2020年の大きなトピックだろう。これは結成5周年という区切りのタイミングを経たこと、メンバー全員が20歳を超えたこと、そしてコロナ禍で自身と向き合う時間が増えたことも影響しているのだろう。特にこの春以降、さまざまな形で個々が自分の個性を開花させ始めている。

神宿 KAMIYADO「Twenty 」MV

　塩見に関しては言うまでもなく、作詞という武器を手に入れたことが大きい。もともとソロ活動の一環でアニメのコラムをメディアに寄稿するなど、文章に関わる仕事も行ってきただけに、言葉に対する意識は人一倍強いのではないだろうか。現時点におけるその集大成が、自身の生誕祭で初披露されたソロ楽曲「Twenty」であり、ここでは作曲にも初挑戦している。

一ノ瀬みか - Watermelon Sugar (Harry Styles) COVER

　一ノ瀬はこの春から、YouTubeにカバー曲のソロ歌唱動画を不定期に公開。その選曲もジャズスタンダードの「Fly Me To The Moon」やジャスティン・ビーバー「Love Yourself」、BTS「Dynamite」、ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」と、彼女が歌唱力の高さを発揮するには最適なものばかりで（参考：神宿一ノ瀬みかに聞く、自分らしくあるために貫き通す信念「いつもポジティブな存在であることが私の個性」）、この動画がきっかけとなり『関ジャム完全燃SHOW』（テレビ朝日系）11月1日放送の「令和のアイドル界スゴいボーカリスト10人」に選出され、ファン以外からも注目を集めるようになったことも記憶に新しい。

　神宿にとって特に一人ひとりの個性を際立たせる上で大いに役立っているのが、神宿の公式YouTubeチャンネルだろう。このチャンネルではグループのMVやライブ映像のみならず、先の一ノ瀬によるソロ歌唱動画やバラエティ色の強い企画も多く、それぞれが好きなことにチャレンジして個性を発揮している。また、それらの動画をメンバーの羽島みきが監修していることも特筆すべきポイントだろう（参考：神宿羽島みきが語る、アイドルとしての転機と妹・羽島めいへの本心　「悩みがひとつなくなると人って本当に変われる」）。2019年からYouTuberとしてUUUMクリエイターに加入して以降、動画コンテンツに力を入れてきた神宿だが、そのWEB上での活動の場をうまく活用させることで個々がたくましさを身につけたのは間違いなく2020年だからこそ。こういった経験が、今後外の世界でどう活かされていくのかにも注目していきたい。

　このような成長や経験を経て、神宿が、そしてメンバー5人が2021年にどんな飛躍を研げるのか。新型コロナウイルスの猛威に音楽シーン全体が揺らぐ中、怒涛の勢いで1年を駆け抜けた神宿のこと、きっと来年もさらに面白いトピックを我々に提供してくれることだろう。と同時に、今年1年で身につけた武器がこの先どう進化していくのかも気になるところ。2021年の神宿は今年以上に目が離せない存在になるはずだ。