シングル『WILL』インタビュー

TRUEが語る、5周年で得た音楽観と『WILL』への思い 「叶えたい夢があるから、止まるわけにはいかない」

たくさんの方の愛や意志をきちんと曲に反映させたい

ーー時期が前後してしまいますが、2018年にアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と出会い、TVアニメのOP主題歌「Sincerely」を経て、今回、劇場版の主題歌も担当することになりました。どんな曲にしたいと考えてましたか。

TRUE:5周年を経て、私にとっても1年半ぶりのリリースなので、そういった意味でも集大成ですし、作品としても、テレビシリーズがあって、外伝(『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 –永遠と自動手記人形』)があって、今回の劇場版が最後の集大成となります。そういったこともきちんと意識して、アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズを締めくくる作品に相応しい楽曲を作るべくスタッフと議論を重ねた結果、全員の総意をもって劇伴を担当されているEvan Callさんに曲をお願いしました。劇伴の延長のような感覚で作品を見終わったあとそのまま聴いていられる、親和性が高い曲を目指しました。そして、この作品は普遍的なことではあるんですけど、人の生き死にを扱う作品で。なおかつ、届けたい思いとか、遂げられずに終わってしまった希望や夢が描かれているので、それを包んであげられるような包容力のある楽曲にしたいなと思ってました。なので難しい言葉は使わずに子供でも直感的に感じるような……温もりのあるメロディや歌詞にしています。

ーー今日のお話の中であったように、作品を通して自分を見た時に感じたことは何でしたか。

TRUE:本当にいろんな人とお話をして。監督からの思いも聞いたし、関わっているいろんな人たちとお話もしたんですね。ヴァイオレットをどんな風にしたいか、どんな結末をみんなが望んでるのかを聞いて。その思いを背負って書かなければいけないと思うと同時に、自分が感じていることや、伝えたいことをそのまま歌詞にしようと思いました。

ーーTRUEさんが伝えたかった思いというのは?

TRUE:楽曲制作に入る少し前にとても近しい人との別れを経験して。最後にも会えなかったので、自分が思ってることや伝えたかったことが、本当に宙ぶらりんになってしまって。私が生まれた時からずっとそばにいて、ずっと一緒に育ってきた人だったんですね。でも、その人はいなくなってしまったけど、その人と一緒に歩んできたものとか、思いとか、目に見えないものって、私が今、生きているこのへんにもたくさんあって。そのものがなくても、その人がいなくても、そこに散らばっているその人の面影や温もり、大切な思いのかけらが私の身近にはたくさんあるんですよね。そういうものを1つ1つ拾いながら、大事に握り締めながら、一緒に生きてけたらいいなってすごく思います。曲を作りながら少しずつ整理していった感じだったんですけど。

ーー楽曲の主人公は過去の思い出を振り返りつつも、〈未来〉を見てますよね。

TRUE:悲しい出来事やすごく辛いことがあった時って、時が無情に進んでいってしまうことに腹が立つじゃないですか。なんで時間だけはこんなに流れていくんだろうってすごく不安にもなるし、そこで立ち止まってる自分にも腹が立つ。でも、このヴァイオレットという女の子は、決して、歩むことをやめなかったんですよね。どんなに辛いことがあっても、どんなに自分の犯した過ちに自分自身が傷付けられたとしても、すべてを抱えて歩み続けた。私も彼女みたいな人でありたいなと思ったたんです。私にはまだ叶えたい夢があるから、止まるわけにはいかないですからね。

ーー未来に前向きに進んでいく温かい歌になってると思います。また、カップリングにはアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のボーカルアルバムにイメージソングとして収録されていた「未来のひとへ」のオーケストラバージョンが収録されています。

TRUE:『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主題歌を作る打ち合わせが京都アニメーションさんであって。私がただ石立(太一)監督に会いたいのもあって、京都に行ったんですけど、そのときに、石立監督が「ずっと『未来のひとへ』を聴いてます」っておっしゃってくれたんですね。何百回も聴いてるって。ファンの方にライブを通して教わったことでもあるんですけど、私の曲に救われたって言ってくれる人がこんな身近にいたって、そこでも改めて気づいて。すごく嬉しいな、ありがたいことだなって思っていたんですけど、のちに、石立監督から「未来のひとへ」を主題歌として本編で使いたいっていうお話をいただいて。

ーーそうなんですね! もともとはいつ頃に作った曲だったんですか。

TRUE:テレビシリーズが終わったときくらいの時期だったんですけど、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を、ヴァイオレットが生きていた世界だけで終わらせてしまうのをもったいないなと思って、10話のアンのお話から着想を得て書き始めました。今、生きている私たちが感じるもの、受け取るものが多い作品だからこそ、もっともっと、未来に住む私たちにつながる歌を作れないかなと思って作った曲だったんです。それが、劇場版のシナリオとまさに同じだったんですね。最初はタイプライターで打っていたものが、文明が進化して電話が生まれて、もっともっと先にいる私たちにはメールもあるし、伝えるツールがたくさんある。だけども、伝えたい思いとか、伝えないといけない思いとか、今も昔も変わらないものがあって。私が「未来のひとへ」に込めた思いも同じだったので、劇場版でも使いたいっていうお話はとても嬉しいものでした。でも同時に、私には今、歌にしたい、今、曲に込めたい言葉や思いがあったから、新たに劇場版の主題歌を作りたいっていう気持ちがあって。今、作らなければ、アーティストとして一生後悔する! って思ったんですね。だから、今回、「Will」から「未来のひと」へとつながるような構成になりました。

ーーだから、この2曲がつながってるように感じるんですね。「WILL」には、〈未来へ/“あいしてる”と書いた手紙〉というフレーズがあり、「未来のひとへ」は〈わたしが生きる未来には/愛してるはあるのかな〉とあります。

TRUE:そうですね。ただ、あえて繋げようとか、同じフレーズを使ってとか、テクニック的なことは考えてなくて。「未来のひとへ」はもともとあった曲でもありますし、あくまでも「WILL」は別物として、映画版の主題歌として、私がこの作品を通して自分を見つめたときに感じたことをすごく素直な言葉で綴ったつもりです。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズのファイナル、一番最後の曲に相応しい曲になったかなって思ってます。

ーー「WILL」というタイトルにはどんな思いを込めましたか?

TRUE:私だけじゃなく、監督を始め、京都アニメーションのスタッフ、私と一緒に音楽を制作しているスタッフ、みんな、ヴァイオレットに対する愛がとても深くて。なかなかこんなに深く大勢の人に愛される女の子っていないと思うんですよね。なので、自分の嘘のない言葉で書いてはいるんですけども、個人的な歌にしてはいけないなっていうのがあって。たくさんの方の愛や意志をきちんと曲に反映させたいっていう思いがあったので、このタイトル『WILL』にしましたね。

ーー改めて、どんなWILL=意志を持って未来に進みたいと考えてますか。

TRUE:すごく強い人になりたいです。ありがたいことに、私の周りのスタッフのみなさんは「強くて、優しいです」っておっしゃってくださるんですけど、私自身はすごく弱いと感じていて。これまでも、何度も折れそうになったことがあって。そのたび、踏ん張って、立ち上がって。私は……アニソンシンガーになる前から憧れの人で、先輩でもある(茅原)実里さんに支えられて、やっと立っていられたんですよね。だから、もっと強い人にならないといけないと思うんです。私が作品を背負って歌わせていただいている意味や理由はきっとそこにあると思う。もっと前向きで強くて、だけど、しなやかで柔軟なアーティストでいたいなと思ってます。そんな意思がこの曲には反映できたと思ってます。

ーーすでに楽曲からは強さと優しさ、愛と命の重みを受け止める包容力を感じてます。最後に劇場に足を運ぶお客さんにメッセージをお願いします。

TRUE:テレビシリーズから応援してくださっていた皆様にとってもいいフィナーレになるのではと思います。また今回の劇場版で初めて作品を知ったというお客様にも、1つの作品として楽しんでいただければ嬉しい。そして幸せな気持ちになっていただけたら。監督も「見終わった後に、身近な人にほんのちょっとだけ優しくなれるような物語になるといいな」っておっしゃっていて。私も全くの同感です。ちょっとだけでもいい。見てくれた人の明日が、優しく穏やかなものになったらいいなって思いますし、こんな時だから、なおさら愛に触れていただきたいなって思います。

■リリース情報
『WILL』
発売:2020年9月16日(水)
価格:¥1,200(税抜)
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』主題歌
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイト

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