ジャニーズから『ラブライブ!』まで幅広い楽曲を生み出すアップドリーム 代表取締役 山田公平氏が“作家たちの創造性”を語る

渡辺拓也

 ここまで、作品と長期的に関わる作家を紹介してきたが、今まさに、新たな歴史を作り出す後押しをしている作家も存在する。それが、前述した『ラブライブ!サンシャイン!!』などのアニソンから、これより紹介するジャニーズまで、幅広い領域で活躍する作編曲家の渡辺拓也だ。

 渡辺は、Sexy Zoneが今年8月に発売したシングル『RUN』にて、表題曲の作編曲を担当。Sexy Zoneは今年でデビュー10周年を迎え、今作より新レーベル<Top J Records>に移籍する新たなスタートを切っているだけに、その内容の重要性は誰もが理解するところ。なお、同楽曲については、以前の記事にてレビューしている(参考:嵐、SixTONES、Sexy Zone……『Mステ』3時間半SP出演ジャニーズ、最新シングル曲を分析)。

 そんな同楽曲でも、特に耳に残るトランペットの音色について、渡辺はあえてシンセサンプルを用いたと語る。これは、近年のトレンドであるループフレーズを奏でる上で、トラックへの馴染み具合を意識したからとのことだ。また、いわゆる“ロキノン系”と呼ばれるロックサウンドについても、以下のように明かしてくれた。

「『Sexy Zoneというロックバンド』の次回作、というつもりで楽曲制作に臨みました。ドラムもベースもギターもミュージシャンの意志やプライドがそこにしっかり見えるようなアレンジを意識しましたし、ミュージシャンにもそれを求めながらレコーディングを進めていきました。楽曲の中で全パートに『見せ場』や『アピールポイント』が出てくるよう意識しました。それこそがロックバンドだろう、と」

 また、楽曲に壮大なイメージを付与するべく、ストリングスにはある“仕掛け”も施したという。

「編成も4433というビオラの人数をスタンダードな編成より一人増やし、まさに『力強さ』をより演出し、バイオリンではスタッカートと大きなフレーズを交互に盛り込み、スリリングなセクションと、壮大なセクションを交互に登場させて、楽曲の流れを飽きが来ないように演出しています」

 渡辺について、山田氏は「歌詞とメロディーが渾然一体で創出するシンガーソングライター的な制作手法もできる」と評価していたが、Sexy Zoneが「RUN」で求めた“力強さ”を押し出す上で、上記のような考えを持つ渡辺はベストな采配だったのではないだろうか。

Sexy Zone「RUN」Music Video(short ver.)

 ここまで記したように、楽曲提供先のアーティストに対して、音楽作家が何作にもわたって継続的に関わり、彼らの特性や歌声の持ち味を明確に理解することで、初めて“名曲”と呼べる作品が生まれるのだろう。本稿の冒頭に記した楽曲同士の“結びつき”は、その積み重ねがあってようやく味わえるものだ。

 そして、このたび紹介した以外にも、アップドリームには桑原聖、結城アイラ、高橋諒など、自身がアーティストとしても活躍する作家が所属している。同社のように、様々な作家が幅広い音楽ジャンルで活躍することは、聴き手が新たな音楽に出会う機会の創出にも効果的に繋がってくるだろう。作詞・作曲家という観点から、様々な場所に転がっている音楽の点と点を結び合わせる行為は、いずれ我々をまだ見ぬ景色へと導いてくれるはずである。

◼︎一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

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