城 南海がたどり着いた現在地ーー自身のルーツ“奄美”への感謝と新たなチャレンジに取り組んだ10周年の活動を振り返る

城 南海、10周年の活動を振り返る
城 南海「ウタアシビ」10周年記念コンサート Bunkamuraオーチャードホール−2019.11.08−ティザー映像

 昨年デビュー10周年を迎えた城 南海が、2019年11月8日にBunkamuraオーチャードホールで行われた『城 南海「ウタアシビ」 10周年記念ツアー』初日公演の模様を映像作品としてリリースした。本稿では、以前、城 南海に取材した際のコメントを交えながら、同ツアーの振り返りや、10年を経てたどり着いた歌手としての現在地について書いていきたい。

(写真=古溪一道)

 2009年、シングル「アイツムギ」でデビューした城。元ちとせや中孝介などと同じく奄美大島出身。幼少期より培われた歌唱力を発揮し、奄美民謡・シマ唄の歌唱や、グィンと呼ばれる独特の歌唱法を活かしたオリジナル曲を通じて愛すべき故郷の魅力を発信してきた。2018年にはNHK大河ドラマ『西郷どん』挿入歌「愛加那」「愛、奏でて」、大河紀行の楽曲「西郷どん紀行~奄美大島・沖永良部島編~」を担当して脚光を集め、観光大使としての活動や奄美大島の世界自然遺産登録を目指す「唄島プロジェクト」に参加するなど、名実ともに奄美を代表する歌手である。

「奄美の民謡がきっかけで歌手になっているので、故郷に感謝をして、自分のルーツを大事にして歌うというところは変わらずにできているのかなと。変わったのは、お客さんとのやりとりがある中で曲が育っていくことを実感できたこと。デビュー以降、お客さんの顔を見て歌う機会が多くなって、みなさんから“自分にとってこの曲はこういう曲なんです”というお話を聞いて発見したことが自分の中で少しずつ積もっていって、自分の目線以外からも曲を伝えられるようになりました。自分の子供のようにみなさんからの愛情を受けて曲が育っていき、その都度みなさんからのメッセージを受けて歌の表現が育っていくということは、デビュー前には気づけなかった。この10年歌ってきて変わった部分ですね」

(写真=古溪一道)

 城は、自身の中で変わらないこと/変わったことについてそう語った。多くの仲間やファンに支えられた10年の感謝と新しい自分の姿を届けるためにーー『「ウタアシビ」 10周年記念ツアー』は、彼女の“これまで”と“これから”が存分に詰め込まれた公演だった。

 ギター、ベース、ドラムに加え、ピアノと弦楽四重奏を従えた演奏をバックに、Bunkamuraオーチャードホール全体を包み込むような壮観な歌声を響かせた城。オリジナル曲からカバーまで20曲を披露した中、なんといっても最大の見どころは、城も「本当に感無量でした」と語る、豪華ゲストとのセッションだ。デビュー以降多くの楽曲を手がけてきた川村結花のピアノに合わせて歌った「行かないで」「アカツキ」。沖縄民謡歌手・古謝美佐子とは、城がオーディションで歌ったという思い出深い古謝の楽曲「童神」を自己流にアレンジした「童神~私の宝物~」を、城の三味線、古謝の三線の演奏とともに披露。ピアニストの山下洋輔とはレコーディング以来の共演となる「西郷どん紀行 ~奄美大島・沖永良部島編~」を特別なジャズアレンジでパフォーマンスした。こうして錚々たる顔ぶれがお祝いに駆けつけるところにも、城の10年の歩みが実直なものであったことが物語られている。

(写真=古溪一道)

「ゲストのみなさんとのステージは自分の原点を思い出すことができましたし、大先輩の方々と間近で一緒に演奏しながらビシビシとオーラを感じることができました。これからまた私もこうやって演奏し続けることができるようにがんばろうと思えました」

 また、この日の公演では、ABBA「Dancing Queen」、長渕剛「乾杯」、中島みゆき「糸」などのカバーも披露された。この選曲にも城の“これまで”と“これから”が表れている。まず、邦楽の名曲カバーも城のキャリアを語る上では欠かせないものの一つだ。2014年から出場を重ねた『THEカラオケ★バトル』は、城の歌唱力をより広くの人に知らせる機会となった。技術的な上手さだけではなく、原曲の魅力を伝えるべく丁寧に紡がれる言葉たち。どんな歌でも城が歌えば城 南海の歌になってしまう、そんな歌手としての風格を見せつける機会にもなった。

 今回の映像作品の初回限定版には、2019年7月23日にCOTTON CLUBで行われた洋楽カバーライブ『ウラアシビ ~10th Anniversary~』ライブ音源ディスクが付属している。デビュー10周年、そして30歳を迎えたことを機に新たなチャレンジをしたいという城のたっての思いから実現したこのライブでも、先のABBA「Dancing Queen」が披露された。

「英語は言葉の中にリズムがあるので、日本語と全然違うリズムの取り方や響かせ方が必要。新しい経験ばかりでした」

 洋楽カバーを披露するにあたり、英語の発音のレッスンを受けていたという城。一見意外なように感じてしまうかもしれないが、彼女の洋楽カバーは惚れ惚れする心地よさだ。原曲に忠実なものから三味線を弾いた斬新なアレンジまで、上質な歌声を堪能できる名カバーが収められているので、ぜひこちらのライブ音源もお楽しみいただきたい。

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