嵐の“Rebornシリーズ”に込められたパーソナルなメッセージ BloodPop®︎による「Face Down」リミックスを解説

 一方で、少し残念に思う部分としては、前述した櫻井翔のラップパートがカットされている点が挙げられる。とはいえ、ラップの歌詞は楽曲のビートに合わせて制作されるため、今回のように大幅にトラック全体が生まれ変わった場合、そのまま入れるだけでは原曲のラップの良さが失われてしまう。そのため、「Turning Up(R3HAB Remix)」の際と同様、原曲の良さを残すために、敢えてパート自体をカットするという判断に至ったのであろう。

 “Rebornシリーズ”では、原曲の歌詞の一部が英語詞に変更され、しかもそれがただの翻訳ではなく、嵐からファンへの新たなメッセージとして読み取れるという特徴がある。原曲の「Face Down」ではタイアップ先となるドラマ側の世界観を踏襲し、鍵のかかった部屋で孤独に苦しみ、謎の人物に翻弄されていくというミステリアスな世界観を描いている。だが今回の「Face Down:Reborn」では、歌詞全体が大幅に書き換えられており、原曲のミステリアスな空気が薄れ、徹底して孤独に苦しんでいる人物に嵐が手を差し伸べる、光を照らそうとする様子が描かれているのである。これは、迫る別れの日を寂しく想うファンへの、嵐からのメッセージなのではないだろうか。

 実は、BloodPop®︎はそのような寂しさや孤独といった感情をポップミュージックに落とし込む手腕についても定評があり、前述した「Sorry」や「Rain On Me」といった大ヒット曲も、トラック自体はダンスミュージックを下地としているものの、歌声が訴えるメッセージは実にパーソナルなものとなっている。BloodPop®︎の作る音楽が求められる背景には、近年増加の一途を辿るメンタルヘルスの問題によって、そのようなパーソナルな内容を求める人々が増えていることも挙げられるかもしれない。実際、本楽曲のリリースに合わせて公開されたリリックビデオには、海外からのメッセージが数多く寄せられていることが確認出来る。その中には「この楽曲に込められたメッセージに救われている」、「辛い日々だけど、少し明るい気持ちになることが出来た」といったコメントもある。

ARASHI - Face Down : Reborn [Official Lyric Video]

 世界中にJ-POPを放とうとする嵐の活動の中心の一つである“Rebornシリーズ”は今後も新たなアプローチを取り入れながら、ファンを驚かせ、そして楽しませてくれるであろう。長年応援し続けてきた大切な人々へのメッセージを忍ばせながら。

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura

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