「Erasor」インタビュー

神宿 塩見きら、作詞に込める“ありのままの自分”と創作への熱量「SNSに可愛い自撮りを上げたから動員が増えるとは限らない」

1年前は自分の思いなんて発信できなかった

ーー実際に作詞を経験してみて、それ以前と比べて歌うことに対する意識の変化は感じましたか?

塩見:全然違いましたね。今までの神宿の楽曲を歌うのと、今回の「在ルモノシラズ」や「Erasor」を歌っているときの感情も全然違ったし。言葉によって、1曲数分の中で誰かの心を動かすこともできるとも感じたし、だからこそ一言一言にすごく気をつけるというか重みを感じるようにもなりました。

ーーよく「この歌詞に人生を変えられました、救われました」という声も耳にしますが、歌に乗せることで言葉の持つ力ってより増幅されるんじゃないかと思うんですよ。それこそ、その言葉が歌い手によって綴られたものだったら、そのパワーはより増すと思いますし。

塩見:本当にそうだと思います。アイドルの中にも作詞をされている方がいらっしゃるじゃないですか。そういう楽曲を聴いていると、「この人はこう考えているんだ」と新しい発見もありますし。私たちの場合もファンの方がいろいろ考察してくださって、「塩見はそういうふうに考えているんだ」とか「塩見の考え方、すごく共感できるし好きだよ」と言ってもらえたのはすごくうれしかったです。

ーー神宿は今年1月に、これまでに発表した楽曲をまとめたアルバム3枚(※『kamiyado complete best 2018-2019』および『kamiyado complete best 2014-2015』『kamiyado complete best 2016-2017』)を同時リリースしました。塩見さんはそこで、ご自身が加入する前の楽曲をすべてリテイクしましたが、1年近く神宿での活動を経験してすべての楽曲を歌ったことで、グループのことをより深く理解できたのではないかと。そういう総括のタイミングを経て、メンバーが作詞に挑戦したのが非常に興味深いなと思っているんです。

塩見:例えば1年前の5月だったら、私はグループのイメージとか前任の(関口)なほさんのことを考えすぎていて、自分の思いなんて発信できなかったけど、アルバム3作同時リリースで神宿の楽曲を全部歌わせていただくことで、私自身が神宿の歴史をなぞっていくような感覚にもなれた。この3作を世の中に発信できたことによって、私にも少し自信が付いたかなって感じていて、それが終わったぐらいから自分の考えていることや思いもどんどん発信できるようになった気がして。そういう部分が作詞にも少なからず影響を与えているんじゃないかと思います。

ーーと同時に、その作詞を結成時からのメンバーではなくて、1年前に加入した塩見さんが担当するというのもまた面白いなと思って。塩見さんは加入前にグループを外側から見ていたことで、ある種の客観性も持っているのかなと思うので、そういう人がどういう言葉を綴るのかにも興味があったんです。

塩見:なるほど。やっぱりファン目線に立つことができるのは、最初の私の強みだったと思うんです。ファンの方も私がもともとアイドルファンだったことを知っているし、「オタクっぽいところを共感できるのがいいよね」と言っていただくことも多かったので、そういう面でも神宿を客観視できているメンバーになれているんじゃないかなと、ちょっと思っています。

自分の悩みや葛藤をありのまま表現

ーー新曲「Erasor」についても話を聞かせてください。塩見さんはこの曲のセリフパートを作詞していますが、どういう過程を経て完成したんですか?

塩見:実は、「Erasor」のデモを1年前にはすでに聴いていて、その時点では今回私が作詞したセリフの部分もKITAさんが書かれていたんです。すごく大人っぽい内容でしたし、当時聴いた印象では「これは難易度の高い曲だなと」と正直思っていました。でも、昨年後半の「ボクハプラチナ」あたりからどんどん楽曲の幅が広がっていって、みんなの大人の部分もどんどん見せられるようになったからこそ、このタイミングに3人ユニットとして歌うのがいいんじゃないかっていうことになったんです。

ーーでは、ボーカルパートの歌詞はすでに出来上がっていたと。それを踏まえて、塩見さんは自身の言葉でセリフパートを加えていったんですか?

塩見:それがですね、実はそことはあまりリンクしていないというか。私はこの曲を初めて聴いたとき、すごく自分のことを理解している人の歌詞だなと思ったんです。でも、私はまだまだ世の中のことも自分のことも理解できていない未熟者なので、この歌詞に私が言葉を加えるのはすごく難しくて。「これはどうしたものか?」と、最初はすごく悩んだんですよ。でも、そういう自分の悩みや葛藤をありのまま表現したらいいんじゃないかと、そういう思いをセリフパートに凝縮してみたんです。

ーーそうだったんですね。レコーディングはいかがでしたか? 歌と違って、セリフは感情の込め方が難しいかと思いますが?

塩見:自分の思いが綴られているので、そこに関してはあんまり苦戦しなかったんですけど、楽曲をより良いものに仕上げたいという意味でいろんなパターンを録ってみました。例えば電気を消して、暗闇の中でレコーディングしたり、ちょっと明るめに言ってみたり怒っているような感じで言ってみたりして、それを制作スタッフの方にうまい具合にミックスしてもらったんですよ。実際、すごくいい感じに仕上がったと思います。

ーー一聴した限りでは非常にナチュラルな仕上がりですよね。

塩見:本当ですか、よかった(笑)。

ーーMVも拝見しましたが、楽曲の持つクールさにマッチした内容だと思います。

塩見:今までは5人一緒にいる絵を撮っていたけど、今回は3人別々の場所で撮っていて、カット割りも多くしたりと、すごくこだわらせていただきました。楽曲もMVもすごく良い仕上がりで、私自身の自信にもつながったし、グループとしても一歩先に進めたんじゃないかなと思っています。

ーー「ボクハプラチナ」から短期間でのこの進化は、見ていて本当にワクワクさせられますよ。

塩見:ありがとうございます。正直、ファンの方の中には戸惑っている人もいるんじゃないかと思うこともあるんですけど、私たちは「これが正しい、これでいける」と自信を持ってやっているので、ついてきてほしいなと思っていますし、私は強い気持ちで活動しています。

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