アーバンギャルド 松永天馬に聞く、バンドの半生と音楽活動のこれから「変化をできるだけ楽しみたい」
これからは今までの常識が段々と非常識になっていく
――話は変わりますが、4月にリモートワークで制作した「マスクデリック」という新曲を公開されましたよね。これはどういった流れだったんでしょう?
松永天馬:アーバンギャルドは1月末から全国ツアー『TOKYOPOP TOUR』を開催していましたが、4月の公演以降は延期になり、最終的には中止になってしまいました。だから、ネット上でできるライブ感の賜物みたいなものを作ることで、この世相に対して何かリアクションをしたかったんです。星野源さんのように、皆でコラボして温かい気持ちになれる曲を作るというのも一つだと思うんですが、傷を抉るようにストレートな言葉を発信するのも表現者の仕事だと思います。で、見渡したところ皆”STAY HOME”を歌っていたので、アーバンギャルドは別のことを歌おうとなり、”マスクが健康を守ってくれる一方で、誰かに言葉のマスクをさせられていないですか?”ということを歌にしました。
――ライブが思うようにできなくなった今、松永さんは音楽業界の今後についてどう考えていますか?
松永天馬:日本の音楽業界は、ここ10年で地下アイドルとフェスの人気が上昇してきたことにより、現場主義になったんですよね。とにかく現場で何かが起こる、それをSNSでシェアする、という流れがシーンを支えてきた。CDが売れない代わりに、現場がシーンをバズらせてきたと思うんです。その現場がなくなった今、僕らはどうすべきかと考えると、やっぱりネットでできる方法を探っていくことかなと思います。仮に6月に首都圏の緊急事態宣言が解除されたとしても、今まで通りライブがやれるとは限らないですよね。韓国のクラブのように再び集団感染が起こる可能性も十分あると思いますし。じゃあどうするのかと考えると、たとえば200人キャパの会場に100人だけ入れる。さらにカメラを置き、常時配信できるようにして、その配信チケットを会場の入場料よりも安く売る。そうすれば、東京の会場に来られない全国の人たちもその配信を見られるので、結果的に残り100人分の利益を取り戻せます。あるいはライブハウス自体をブランディング化して、通販でグッズを売るという手もあると思います。そういったことが普通になっていくのかもしれないですね。
――その可能性も大いにありそうですね。
松永天馬:こういうことをネットに書いたら「そんなことあるわけねーだろ」ってリプライがきたんですが(笑)、これからは今までの常識が段々と非常識になっていくし、これまで非常識だと感じていたものが常識になってくるかもしれない。今はそういった瀬戸際に立っていると思います。人同士のコミュニケーションについては、すでに常識が変わり始めていますよね。具体的に言うと、コミュニケーションに対してのプライオリティが上がった。人同士が直接会うということが最もプライオリティが高いと思いますが、今僕がこうしてオンラインインタビューを受けているように、画面越しで話すこともかけがえのない時間になったと思います。一人暮らしをしている人にとっては、コンビニの店員さんとマスク越しに一言二言話すだけでも、心が洗われるような気持ちになるんじゃないでしょうか。これからはオンライン飲み会やオンラインマッチングアプリ、オンラインデートなども盛り上がっていくだろうし、音楽業界に限らず色々なことが変わっていくでしょう。でもその変化に対して、自分は適応できる人でありたいし、変化をできるだけ楽しみたいですね。
――確かに音楽業界に限らず、今後はさまざまな常識が変わっていくと思います。その上で今、リスナーに伝えたいことは?
松永:これまでもアーバンギャルドは、“生きろ これは命令形だ”と繰り返し伝えてきました。その上で、生きるために必要なのは、ほんの少しの勇気ではないかと思います。具体的に言うと、自分が変わること、変身することに対して恐れない勇気ですね。今まさに、世界が築き上げてきた常識がガラガラと音を立てて崩れていますけども、変化を恐れない勇気さえあれば、楽しくサバイブしてくこともできるんじゃないかと。それはすごい覚悟が必要というわけでもなく、ちょっと何かを発信したり、何かを告白したりするような、小さな勇気さえあれば案外簡単にできることなのだよ、と伝えたいですね。
<写真クレジット>
Photographer:ivana micic(vil tokyo)
Visual Coordinator:shun murakami(vil tokyo)
Assistant : T-city iwaki
Hair & Make-up:manami jin
Stylist(Yoko,Kei):LIM(pays des fées)
Accessory Stylist(Yoko):Mitake
■書籍情報
『水玉自伝~アーバンギャルド・クロニクル~』
著者:松永天馬 浜崎容子 おおくぼけい
藤谷千明
出版社:
ロフトブックス
通常版 ¥2500(+税)
4月27日一般発売
ロフトブックス
Amazon
初回限定BOX ¥10000(+税)
限定グッズ同梱(内容未定)
限定100部
※無くなり次第終了
5月発送予定
■イベント情報
『水玉自伝~アーバンギャルド・クロニクル~
刊行記念イベント・語らう水玉自伝』
【公演延期のお知らせ】
4月19日(日)『水玉自伝~アーバンギャルド・クロニクル~ 刊行記念イベント・語らう水玉自伝」』本公演は新型コロナウイルスの感染症拡大防止等の理由により、延期となりました。 振り替え公演・払い戻しの詳細につきましては後日発表いたします。
■リリース情報
『TOKYOPOP』
2020年1月1日発売
<収録曲>
01.東京は令和零時
02.言葉売り
03.修正主義者(SHINJUKU SYNDROME ver.)
04.水玉病(HARAJUKU HOLIC ver.)
05.メタ・セクスアリス
06.ビデオのように(Seiho REMIX)
07.FMっぽいの好き
08.スカート革命(ROPPONGI ROUGE ver.)
09.自撮入門(SHIBUYA SUCK ver.)
10.アンドロイド輪舞曲
11.少女にしやがれ(NAKANO NOSTALGIC ver.)
12.ももいろクロニクル(REIWA RAP ver.)
13.ワンピース心中(Yunomi REMIX)
14.東京爆発、その後
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