高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」第15回
the HIATUS、yonige、THE ORAL CIGARETTES……困難な日々を支えてくれるライブ映像
ライブやイベントの自粛が続いている今日この頃。それでもやっぱり、私には音楽が必要だ――そう、同じように思っている人たちに、リリースされたばかり&リリースが決まっている映像作品や、公開されている映像を紹介したい。
まずは4月15日にリリースされた、the HIATUSの『10th Anniversary Show at Tokyo International Forum』。結成10周年を記念して昨年10月1日に行われた東京国際フォーラムでのライブの模様が、全曲収録されている映像作品だ。10年前に胸を高鳴らせた「Ghost In The Rain」からの幕開けだが、この楽曲をはじめとして、演奏され続けてきたなかで起こっていった変化がダイレクトに反映されている。何より、相変わらず(見た目も)バラバラな5人なのに、圧倒的なバンド感があるのだ。そもそもキャリアもスキルもあったメンバーの、さらなる新しい扉を開いたバンドが10年続いてきたことに対する感慨も、パフォーマンスや表情から溢れ出ている。また、象徴的に眩しく照らされていたように、オーディエンスとの関わりが深まっていったことも、彼らにとっては大きかっただろう。オーディエンスが、彼らの探求心に満ちた世界観を覗き見るだけではなく楽しめるようになったことも、映像から感じ取ることができた。ホールならではの照明などの演出も素晴らしかったが、「Lone Train Running」のシンガロングや「紺碧の夜に」のハンドクラップが特に耳に残ったことが、その証だ。もちろん、これはひとつの節目。メンバー5人の演奏ではもちろん、柏倉隆史と一瀬正和のツインドラムや、徳澤青弦やストリングス隊とのコラボレーションで、楽器が重なり合う時のスリリングな感触、バンドだけが持っている阿吽の呼吸、そして音楽の聴き方の新たな角度を教えてくれる彼らは、まだまだ未知の可能性を秘めている。
続いて、5月20日にリリースされるyonigeの『日本武道館「一本」』。昨年8月に行われた、日本武道館でのライブの模様が全曲収録されている映像作品だ。ガツガツしていない、狙っているようにも見えない、なのにコツコツと自分自身のことを書き続け、自分自身の音を鳴らし続け、無邪気に階段を駆け上り続けることで、武道館に立った二人。そのスタンスが、大舞台にも関わらず洗いざらい見えるパフォーマンスだった。1曲目の「リボルバー」で歌詞を飛ばしてしまう様子や、トラブルを二人の喋りで乗り切った場面、そしてオーディエンスの決まり手のない盛り上がりなどを見ていると、これ武道館だっけ? と思ってしまうような――いや、もしかしたら今の若いバンドにとっての“武道館”観や、どんなに注目されてもフラットでいられる彼女たちを象徴しているのかもしれない。ドキュメンタリー映像で語られていた、ここまでの歩みも重ね合わせると、yonigeというバンドのスタンスは頑なに変わらないのだろうな、だからこそ経験や年齢を重ねるごとに自然と変わっていくのだろうな、そんな未来が見える。同日にリリースされるアルバムは『健全な社会』。まさに、今の彼女たちと、その楽曲が発するメッセージをまとめ上げたタイトルだと思う。