『SLEEP ASLEEP…。』インタビュー
2020年注目ユニット illiomote初インタビュー:幼なじみの二人が掲げる“HAPPY POP”とは? 音楽に対する姿勢も明らかに
「バカでも平和に安心して生活できるぐらいの世の中になって欲しい」(YOCO)
――今回、1stEP『SLEEP ASLEEP…。』がリリースされます。すでに配信されてる曲もありますが、「TELEDISCO」は冒頭のYOCOさんが引きこもっていたという話から、部屋でディスコするって意味かな? とも思いました。
YOCO:ドイツのベルリンに、テクノ発祥の文化の関係で、使わなくなった公衆電話をワンコインディスコみたいにしている「teledisco(テレディスコ)」というものがあって、今新しいものがどんどん増えてる時代の中では公衆電話ってステレオタイプだけど、telediscoの存在を知った時に「何それめっちゃ楽しいじゃん!」と。(参照:TABI LABO )
MAIYA:ジュークボックスみたいだよね。
YOCO:そうだね。スマホが普及して、使われなくなった公衆電話を残して芸術に消化するっていうアイデアがめちゃめちゃ素敵だなと思って。新しいものや、次の流行りを見つけては前の文化が「なんかダサいね」ってすごいスピードで淘汰されていくじゃないですか。もう今は、ギャルサーとかも太古の歴史みたいにされちゃってるけど、実際にはギャルのソウルは全然残ってると思うんです。それが新しいものにリバイバルって形で進化するし、みんな大人になると忘れてしまうことってたくさんあるけど、そういうのを大事に……
MAIYA:「古き良き」だね。
YOCO:そう、古き良きもの。この曲は、電話ともかけてるんですが、例えば私たちは悩みや苦しいことがあった時にそれを音楽で表現したり消化したりできるけど、世の中には何かに苦しんでても口に出して言えない人やどこにもそれをぶつけることができない人もいると思うんです。そういう時に、この曲が「相談ダイヤル」的な存在になったらいいって。困ったら電話をかけてほしいみたいに、困ったらTELEDISCOに入って踊って欲しいし、困ったら私たちの曲聴いて欲しいんです。「君と同じこと思ってる人、実はたくさんいるし、私たちも味方だよ」っていう思いがリスナーや悩みを口に出せない人たちに届いたらいいなと思って。ちょっと傲慢かもしれないけど。
MAIYA:電話くるかもね、まじで。「はい、illiomote相談所でございます。今日はどうされました?」とか言って出てみようか。
YOCO:そういうのがあったら楽しいね(笑)。
――(笑)。トラックメイクはほとんどMAIYAさんが?
MAIYA:そうですね。
――オールドロック育ちな側面もある?
MAIYA:ギターはそうですね。やっぱりギターを弾くとなったらそのあたりもちょっとは通らないとなって。今は違うかもしれないけど、お父さんが通ってきているから、ギターを教えてもらったりすると、ブルースとかThe BeatlesのDVDとかを一緒に見ることが多かったですね。
――それで、せっかくギターならこれでしょっていう美味しいフレーズを抽出できるんですね。
MAIYA:そうなのかな? 自分ではあんまり意識してないんです。
YOCO:抽出してるよ!
――しかもバリバリ弾けます! みたいな方向でもなく。
MAIYA:ライブではギターも弾いたりするけど。音源だと今、ギターを入れる塩梅が難しくて。邪魔しない程度にキャッチーに音を入れる具合が。ギターが多すぎると歌の邪魔になっちゃうじゃないですか。それが嫌いなんですよね。
――なるほど。「Sundayyyy」はトラックがドラムンベースっぽくて、一番暴れてる印象です。
MAIYA:「Sundayyyy」は、実験的な感じにしたかったっていうのもあって。
YOCO:昨日、J-WAVEの『SONAR MUSIC』で流してもらったんですけど、放送後SNSを見たらビリー・アイリッシュと比較されて「パクリだ」って言われててびっくりしました。
MAIYA:四つ打ちで、リフのキーが一緒だっただけなんですけど、結果、ビリー・アイリッシュに似てるって言われたらうちらの勝ちだね(笑)。
――そして「BLUE DIE YOUNG」は古今東西のユースカルチャーで用いられてきた慣用句が入っています。
YOCO:「BLUE DIE YOUNG」はメッセージ性が一番強い曲になっています。歌詞では〈The beautiful die young〉って歌っていて、四字熟語の「美人薄命」から取ったんですけど、それだとそのまますぎるし、もう少しシンプルに全てを要約して伝えたくてタイトルには「BLUE」を足しました。「BLUE」という言葉には地球の青だったり、若さの青だったり、単純な年齢の若さじゃなくて人間的な未熟さの青だったり、たくさんの意味を持たせたかった。そこには、戒めというか、私たちはいつでも忘れちゃいけないことがあるんだって。この曲を歌ったりライブで演奏する度に自分たちにも言い聞かせるし、聴いてる人にももしかしたら引っかかるものがあるかもしれないと思います。
――「自分だけでどうにもならないんだけど、このまま進んでいくとヤバいぞ」ってもうわかってることじゃないですか。それをポップな楽曲に落とし込んでいる?
YOCO:この曲はそういう感じで作っていますね。
――例えばグレタ・トゥーンベリはアクティビストとして発言していますね。
MAIYA:トゥーンベリは好きです。でも自分はアクティビストにはなれないし、伝える方法を選ぶならやっぱり音楽かなって。自分は一つひとつの小さいことしかできないけど、その小さいことをみんながしてくれたらいいな、せめてこの曲を聴いて誰かが気づいてくれたらいいなと思います。音楽ではさ、大きいことってたぶん変えれないじゃん?
YOCO:そうだね。
MAIYA:The Beatlesみたいに時代を変えられる人もいるけど、うちらには無理だから。
YOCO:限られてるからね、そういう人は。
MAIYA:せめてうちらのことを聴いてくれてる人だけでも気づいてくれたらいいなって思います。
――illiomoteの真面目さは全体に滲み出てます。
YOCO:出てますよねぇ……。
MAIYA:待って。“HAPPY POP”とか言ってるのに真面目とか言われたらちょっと恥ずかしくない?(笑)
YOCO:そういうこと言うのが一番真面目でしょ? 暴かれてるよ(笑)。“HAPPY POP”って私たちが言うのも、その平和を願っての“HAPPY POP”なんです。ただ単におバカなところもあるんですけど(笑)。でもそれも含めて平和を願っているし、そのぐらいバカでも平和に安心して生活できるぐらいの世の中になって欲しいっていう願いも込めて、今後の音楽活動で、世に“HAPPY POP”を放ちたいっていう思いはあります。
■リリース情報
『SLEEP ASLEEP...。』
発売:4月8日(水)
価格:¥1,500(税抜)
トラックリスト:
01.What is??
02.In your徒然
03.TELEDISCO
04.Sundayyyy
05.BLUE DIE YOUNG
06.summer night