大原ゆい子の儚さと心温まる歌声ーーワンマンライブ『今夜は夢を見る』レポート

 シンガーソングライターの大原ゆい子が2月23日に、東京・恵比寿ザ・ガーデンホールで『大原ゆい子ワンマンライブ「今夜は夢を見る」』を開催した。

 アニメ『からかい上手の高木さん2』のオープニングテーマ「ゼロセンチメートル」など人気のアニメテーマソングの他、1stアルバム『星に名前をつけるとき』の収録曲やシングルのカップリング曲など、アンコールを含めて全19曲を演奏。

 ギター、ベース、ドラム、キーボードといった基本的な楽器にバイオリンとコーラスも加えた編成で、大原もアコギやエレキギターを弾きながら歌い、「セイセイせんべい!」では観客とコール&レスポンスを繰り広げるなど、一体感のあるステージを観客と共に楽しんだ。

大原ゆい子楽曲の魅力のすべてを詰め込んだライブ

 この日のライブは昼と夜の二部構成で、昼の「SHOW 1」は『ごにょごにょ、ららら』と題してトークとライブで構成。『お〜はらじお』(bayfm78)の公開収録も行われ、観客から集めた歌詞で番組の新ジングルを完成させる試みや、あらかじめ募集したリクエストに応えて楽曲を披露するなど、バラエティに富んだ内容で観客を楽しませた。そして夜の「SHOW 2」は、『今夜は夢を見る』と題して開催。大原の楽曲の歌詞には、夢や星、眠るといった言葉が多く登場するが、それらを合わせ持ったライブのタイトルからも分かる通り、大原ゆい子の魅力のすべてが詰まった一夜になった。

 ネイビーの衣装を着た大原を大きな拍手が出迎えると、バンドの息の合った演奏に続けて、勢いよくアコギがかき鳴らされた。オープニングを飾った「時のミラージュ」は、アップテンポで爽快さのあるナンバー。たくさんの声や音が重なり合うことで前に進めることを歌った歌詞は、まさにライブの風景を想像させ、この日のオープニングにぴったりだ。

 大原の楽曲は大きく分けて、夢を追いかける人の背中を押す応援歌、聴く者の胸をキュンとさせる淡いラブソング、静かなサウンドと共に切ない胸の内を吐露するような楽曲がある。

 自身も夢を追いかける者の一人として歌った代表格と呼べるのが、序盤に歌った「透明な翼」だろう。どんな人にもまだ何色にも染まっていない未来があり、奥底には可能性を秘めている。前向きだが、決してメッセージを押しつけることをしない大原の歌声が、まるでやさしく手を引いてくれるようだった。

 中盤で歌われたアルバム収録曲の「夢の途中で」は、「自分が好きな自分でいたい。そうすれば人と比べて落ち込むこともなくなるんじゃないか。そんな当たり前のことを、当たり前として曲にしていきたい。そんな気持ちで作りました」と、楽曲を制作した時の気持ちと共に届けてくれた。アッパーのバンドサウンドに背中を押されるようにして、力強い歌声を響かせた大原。〈進むだけ〉という歌詞が、きっと観客の夢を後押ししたことだろう。

 さらにアルバム収録曲の「からっぽになりたい」は、夢を追いかけることに疲れた時は、歩みを緩めて休んでもいいんだよと、優しく語りかけてくれる楽曲。口ずさみやすいシンプルなメロディとサウンドが心地良く、歩く時のように両手を振りながら歌う大原の親近感溢れる歌声が、スッと胸に飛び込んで来た。ただ背中を押すだけでなく、夢を追いかけることの苦しさも理解して、側にいてくれるような一面を持っていることも、彼女の応援ソングの魅力だろう。

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