『R指定⼗周年記念47都道府県単独公演ツアー 「CLIMAX47」』

V系シーンを代表するバンド R指定とは何だったのか? “凍結”前ラストライブから感じたこと

 アンコールでは、黒いジャケットをまとったマモが登場(他のメンバーは黒いツアーTシャツを着用)。そして、先日発表されたばかりの『遺書』から、マモがアコースティックギターを奏でながら始まる「-青春-」に続いて「シンクロ」が披露された。

 その後、始まったフリートークでは、メンバー同士で47都道府県ツアーの感想や、国技館のステージに立った感慨を語り合ったり、マモの黒いジャケット衣装は90年代V系を意識したものだと明かされたりした。マモ曰く「今日は卒業式みたいなものだから」と、BGMにのせて、「楽しかった47ツアー(47ツアー)」「辛かった車移動~(車移動~)」と、卒業式風にツアーのエピソードが紹介された。大半がネットメディアに出すには憚られる飲酒関連の失敗で、場内は大爆笑。“凍結”ライブとは思えないほど、底抜けに笑える内容だった。 そして、ようやくマモの口から“凍結”の真意が告げられた。

「方向性やメンバーの仲とかありきたりなことは言いたくない。10年間休まずやってきて、今が最高潮。これ以上のことを、どうやっていこうかと考えた時、思い浮かばなかった。そんな気持ちでやっても皆に失礼になる。時間が欲しい」

 そんなふうに、丁寧に言葉を選びながら、今の心境を語っていった。

「マモから(凍結を)言われた時は、一瞬迷ったんだけど、バンド始めるときもそうだったけど、だいたい“いいよ”って。押さえつけられてやるのは嫌いで、後悔はない。これを無理やり押さえつけるほうが後悔すると思ったから。今すぐ死ぬわけではないから、受け止めてください」(Z)

「“俺が今日死ぬ”みたいな勢いのメッセージが沢山来てたんですが(マモ“俺も恐怖新聞みたいなDMめっちゃ来た”)。僕は今日で死なないし、R指定も死んだわけではないですから、“凍結”という形になりますけど、ぬるぬるやっていくよりは、1回止めて考えるだけ考えて、その先に何があるのかはわからないけど。とにかく、僕は死なないので(笑)」(宏崇)

「会えなくなるとは言いますけど、地球にいる限りは同じ空気を吸ってるわけだし、昼も夜も同じ空を観てる……南半球は違う(笑)? 今日を最高の思い出にしたいと望んでいました。親愛なる君たち、優秀なスタッフ、最高のメンバー、10年間で最高のライブを作りあげることができました」(七星)

「最初に活動を止める話が出た時に“活動しながら考えるのは無理なのか”と話したけど、付き合いも長いし、ここまで迷ってるマモを見るのは初めてだった。逆に、いつもイケイケなマモが不安そうに“どう思う?”と聞いてきたときに、時間がいるなって。辛いかもしれないけど、今日は残り楽しんで」(楓)

「今、“変わらないこと”にずっとモヤモヤしていて。今のヴィジュアル系シーンが、なあなあというか、ズルズル続いてることに“このままやってて意味あるのか”と思うこともあったし。“じゃあ自分で変えろ”という意見もあるかもしれない。けれど、変えたいからこそ、この道を選んだし、また革命を起こすかもしれない。今は“絶対復活する、また会おう”とか、期待させることはできない。でもこの10年間は輝かしいものだったし、皆さんには感謝しています」(マモ)

 優しい口調だけれど、安易な嘘はつかないマモ。そして言外にマモを尊重していることが伺える、メンバーの言葉。それをひとつひとつこぼさないように、聞き入る指定女子、男子たち。

 そして、ちょっと沈んでしまった空気を明るくするために、ツアー中に高崎clubFLEEZでもらったダルマに、楓のかなり適当な弾き語りに乗せて目玉を書き込む儀式(?)が行われた。「最後の最後までブチ切れて行こう! 最高の景色見せてくれ!」と、マモが悲しい雰囲気を打ち破るかのように、「規制虫」、「魅惑のサマーキラーズ」など、アッパーチューンを連打する。

 ダメ押しの「VISUAL IS DEAD」では、「誰もやらねえなら誰がやる誰がやる……俺しかいねえだんよ!」と咆哮するマモ。似たようなバンドが跋扈するシーンに対するフラストレーションを歌った曲だか、この日の「VISUAL IS DEAD」は後輩のバンドらに対して、“じゃあ、君たちはどうする?”という彼らなりの激励、発破のように思えた。

 思えばR指定はずっと、死にたいは生きたい、皮肉屋だけど真摯、そういった相反する要素が魅力のバンドだった。だからこそ、この時代を代表する存在になったのだ。

 最後に、改めて今日をもって“凍結”することを宣言するマモ。

「皆の青春を俺たちに預けてくれたからこその、俺らの青春でした。その青春を、一度お返しします。大事に素敵な思い出として、胸にとっておいてください」

 「心を込めて歌います」と、会場中に降り注ぐ銀テープの中、「-透明-」が届けられた。そして、メンバーの名前を呼ぶ歓声を愛おしそうに受け止めながら、彼らはステージをあとにした。終演を告知するアナウンスが繰り返される中、アンコールの声はずっと止まない。けれど、彼らがステージに再び姿を現すことはなかった。

 R指定とは何だったのか、“2010年代ヴィジュアル系シーンを代表するバンド”、“ヴィジュアル系シーンにメンヘラカルチャーを広めたバンド”、人によって様々な分析や捉え方ができると思う。けれど、確実にいえるのは、誰かの“青春”だったということで、それは若年層に人気があるという意味だけでなく、彼らと出会うことで“青春”を再び手にした、やり直した者だっていただろうし、青春をまっとうしている指定女子や男子をみて、懐かしく思う大人だっていた。この日のライブは、そんな人たちの“大事な想い出”であろうとする、彼らのプライドを感じるステージだった。

 おやすみなさい、R指定。またどこかで。この10年、ヴィジュアル系シーンに貴方たちがいてくれてよかったと心から思うのだ。

■藤谷千明
ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。執筆媒体は「ウレぴあ総研」「サイゾー」「SPA!」など。Twitter

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