佐伯ユウスケの本質はライブで発揮されるーー吉野裕行をゲストに迎えた『ウラオモテンション2』レポート
大人になってもう一回、夢を見てみてもいい
後半は、笑って歌って踊って、とにかく楽しいステージを展開した。まず「絶対言わないシリーズ」では、短い歌ネタの連発に会場は爆笑。足つぼマッサージをしながら歌うという悪ノリもあり、予期せず吉野も巻き込まれてしまうというハプニングもあった。
「ダンシング」のC/W曲「カップリング」では、ラップを歌って会場を沸かせる。間奏では志村けんのヒゲダンスを踊り、バンドメンバーが1人ずつダンスに加わっていくという団体芸でも魅せた。「たのしいがとまらないよ」では〈ラ〜ラララ〜〉というコーラスを観客と一緒に歌って会場が1つに。「裏腹イエス」では、合いの手を観客が歌い、曲中の高速ラップをどんどん速くして聴かせるという超絶技巧でも沸かせた。
「作曲家としてデビューして4月で10周年が終わり、11年目に突入します。こうやってライブで歌うと、自分の作品をどう感じてもらえているか、みんなの表情からひしひしと伝わって、感謝の気持ちが沸き上がります。僕の初期衝動は何だろうと考えたりもしました。大人になってもう一回じゃないけど、それが現実的じゃないと言われたりバカにされたりしても、夢を見てみてもいいと思っています。みんなにもそう思ってもらえたら嬉しいです」
本編の最後に歌ったアニメ『Dr. STONE』第2クールエンディングテーマ「夢のような」には、彼のホンネや思いが溢れていた。R&B/ヒップホップのハネたリズムとメロウなサビメロ、エモーショナルなボーカル、そして〈夢をまだ 見ていたい〉〈今 本当の声を聴かせて そうすればきっと届くはずだから〉という、まっすぐなメッセージが胸を打った。
またアンコールでは、佐伯が作詞を提供し吉野裕行のミニアルバム『Emotional』に収録された「さよなら」を、佐伯がキーボード、吉野がアコースティックギターを弾きながら歌った。別れた相手を今も大切に思う温かく切ない楽曲。吉野の哀愁漂うボーカルに、観客はジッと静かに聴きほれていた。
観客を笑わせるユーモアとサービス精神たっぷりの一面がありながら、聴く人の心に優しく触れるようなミディアムナンバーも聴かせる佐伯ユウスケ。彼の本質は、ワンマンライブでなければ決して触れることの出来ない、ウラとオモテが表裏一体となった混沌の中にこそあった。