アリス九號. 将×WING WORKS RYO:SUKE×ユナイト 椎名未緒特別鼎談:ヴィジュアル系への愛とシーンの“今”
ヴィジュアル系は宝塚歌劇団のようになるべき(RYO:SUKE)
ーー“シーンの縮小化”というワードが出ましたが、やはりそれは感じるものですか?
将:元のマーケットがどれだけ巨大かというところが重要で、輸入したものを劣化コピーしていったら当然縮小するじゃないですか。
ーーそうですね。
将:元々、ヴィジュアル系はグラムロックとHR/HM、そこから派生したジャパメタブームの良い所をアレンジしたもので、それがさっき話にもあったファンタジー的な要素やヒーロー的な要素と結びついたものだと思うんです。僕はめちゃくちゃゲーマーで『FINAL FANTASY』シリーズが好きなんですけど、その主人公の出で立ちはまさしく小さい時から刷りこまれた“イケメン”なわけですよ。ドンキーコングがイケメンと刷り込まれてたら絶対にヴィジュアル系やらないじゃないですか。
一同:(笑)
将:そういう非日常と融合したからこそ世界に他にない文化になったし、白人が“vk”って真似するようなコンテンツになったと思うんですよね。
ーー日本のカルチャーとして世界に認知されましたもんね。
将:2000年代にバロックが、1990年代から続いていたヴィジュアル系の文脈に原宿系女子の世界観やファッションを輸入したことによって、グラムでもメタルでもハードロックでもないところで男性がメイクをするという文化を融合させる発明をしたんです。
ーーたしかに衝撃的でした。
将:当時“ヴィジュアル系を辞めよう”と思ったときに、『VOGUE』のファッション誌みたいなkannivalism(バロックの前身バンド)のアー写を見て“やっぱりヴィジュアル系ってかっこいいな”と思いとどまって今に至るし、まわりのインディーズバンドも原宿系女子が良いと思うような、カジュアルでファッショナブルなビジュアルになっていきました。
ーー結果的にバロックは結成から2年3カ月という早さで日本武道館公演まで登りつめるほど支持されました。
将:90年代のものよりは小さいかもしれないけど、イノベーションでした。やっぱり違うマーケットと何かを掛け合わせてファンが想像する先を生み出さないと、どんどん劣化していくんだと思います。
ーーこのイノベーションがきっかけとなって2000年代後半のネオ・ヴィジュアル系ブームにつながり、海外から評価されるようになりました。しかし、そのブームも長くは続かずに現在に至っていると思います。2000年代から2010年代への流れをどのように感じていましたか?
RYO:SUKE:僕自身としてはこの10年でマーケットどうのこうのというより、まず何よりも自分自身のクリエイションに注力することへと意識が変化しましたね。シーン全体の規模感みたいなものに対して危機感を持っていた時期もありましたけど、夢がないから今ここでそういう言葉遣いはしたくなくて。ただ、自分への戒めも含めてあえて言うなれば、こういう場でこの10年でX JAPANやバロックに肩を並べるようなイノベーションを語れていないのはアーティスト側の責任で、規模感が変わっていくマーケットに対して何も手を打たなかったのは業界全体の責任だと思うべきなんですよね。
未緒:俺は2011年にユナイトを結成したんですけど、その時点でシーンのお客さんのパイを鑑みると俺個人のヴィジュアル系キャリアとしてはラストチャンスだろうなとは思っていました。それくらいシーンの縮小を感じていたし、実際に始めるとその縮小のスピードが想像以上に速いのも感じました。
ーーそれはなぜでしょう?
未緒:ネオ・ヴィジュアル系ブームもあって業界全体がこのジャンルに対して“お金を稼げる”と思って、チケット代を上げて、CDも複数タイプリリースして……というクリエイトに比例してない値上げが起こっていったんです。それだけが理由ではないですが、今じゃワンマンのチケット代が5000円代とかに乗っかってきてるじゃないですか。例に漏れずユナイトも手を付けちゃってるからとやかくは言えないんですけど。
将:昔はワンマン3500円とかだったよね。
未緒:比較対象のエンタメが世の中にたくさんある中で、「これに対して5000円は払えない」って思ってるからライブに来ないんですよね。だってもっと安価で遊べるものが世の中にたくさんあるのに、5000円払わないと1時間半のライブが見られないって時代のニーズに見合ってないし、前時代的だと思います。かつて見合った金額で見合ったもの以上のものを見せてくれるのがヴィジュアル系だったのが、“お金を稼げる”と思った業界があの手この手でお金を集めようとしすぎて、リスナーが離れていったんだろうなと思います。
ーーとなるとヴィジュアル系の行く末はどうなるとお考えですか?
未緒:語弊があるかもしれないけど、演歌みたいに独立的なジャンルになりかけてるのかなって思います。好きな人は高くてもずっとお金を払い続けるけど、その反面そうでないティーンは手を付けないから新陳代謝は起こりにくい。
RYO:SUKE:僕は「質の高いエンターテインメント」という意味でヴィジュアル系は宝塚歌劇団のようになるべきだと思ってます。宝塚には親の影響で好きになる若い層がいつの時代もいるし、そういう流入の仕方もあるのではないかと。決してメインストリームではないけれど常にクオリティの高いものを提示することで、若い世代のファンを増やすというジャンルになりたいと思っています。現に90年代に活躍して、いまでも第一線でやってる方たちってそれが出来てると思うんですよ。なので我々もそこを目指すということを今後ますます突き詰めていくべきだと思います。
未緒:そうじゃない道を探すとすれば、全員で手を取ってチケット代をタダにして心中するしかないですよね(笑)。
一同:(笑)。
未緒: それは極端ですけど、お金を稼ぐということとバンドや音楽でロマンを追うのをある程度分けて考えられないと、どっちも破綻するんだろうなと思います。
将:社会の原理原則としてお金って信用じゃないですか。例えば、僕達のライブが全部無料で垂れ流せば感謝と信用が上がります。それが今のYouTuberとかなんですよね。タダで楽しいことを提供してくれれば信用が積み上がっていって、彼らはユーザーからではなく企業から収入を得るようなシステムになっているわけです。
ーーまさしくインターネットが進化したのも2000年代後半からですよね。
将:これってiPhoneの登場と共に起きたことですけど、ヴィジュアル系はそういうITのイノベーションやエポックメイキングと関係ないところで活動を続けてしまった結果、一緒に成長できなくて現在に至っていると思います。
(取材・文=オザキケイト)
■WING WORKSリリース情報
WING WORKS 2nd Album『ENTITY』
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■WING WORKSライブ情報
2019年1月16日(木)柏PALOOZA
『UCHUSENTAI NOIZ 20th Anniversary☆SPACE PALOOZA CAMP☆CAMP13 COLOR RUSH☆SHOW』
WING WORKS / UCHUSENTAI:NOIZ / Mr.ChickenHat Timers / ジャックケイパー
WING-MEN
<LIVE MEMBERS>
Gu.toshi(iMagic.)
Ba.進藤渉
Dr.海青(ex.DAMY)
2019年1月26日(日)TSUTAYA O-WEST
『ViSULOG 9th ANNIVERSARY』
<出演>
WING WORKS / DaizyStripper / POIDOL / マザー / ユナイト / and more
WING-MEN
<LIVE MEMBERS>
Gu.toshi(iMagic.)
Gu.Daichi(ex.NOCTURNAL BLOODLUST)
Ba.YUCHI(sukekiyo)
Dr.SHO
Mp.ryu(Lavitte)
2019年2月9日(日)高田馬場AREA
KØU 1st anniversary EVENT『Ø+1』
<出演>
WING WORKS / KØU / GRIMORE / HOWL / ジャックケイパー / ビバラッシュ
WING-MEN
<LIVE MEMBERS>
Gu.toshi(iMagic.)
Ba.進藤渉
Dr.海青(ex.DAMY)
2019年3月20日(金・祝)青山RizM
WING WORKS ONE MAN SHOW『ENTITY』
※詳細後日発表