キーワードは“世代交代”と“ジャンルレス化” Spotify 2019年年間ランキングにみる、音楽シーンの世界的変化
「世界で最も再生されたK-POPアーティスト」については、やはりBTS強しという結果となったが、柴氏はBLACKPINKとTWICEに注目する。
「BLACKPINKは今年、ヒットチューンの『Kill This Love』を出したり、『Coachella Valley Music and Arts Festival 2019』のステージに立ったりと、ガールズグループとしてワールドワイドな活躍を果たしました。K-POPというタグの付いたアーティストではありますが、彼女たちやTWICEは多国籍にルーツを持っている、実質的にはアジア圏の連合グループのようなものです。そういう意味では、シーンを挙げてアジアから世界へ発信することに成功しているうえ、ジャンル自体の再定義も進んでいるK-POPの凄さを思い知らされますね」
これらの結果を踏まえ、2020年はどのような年になるのだろうか。柴氏は最後に”Spotifyをはじめとするストリーミングサービスに期待すること”を述べた。
「ここ数年のポスト・マローンやエド・シーランなどの数字を見ていても顕著なのですが、各社が出す情報を見ていると、ストリーミングサービスでは年々、全体の0.01%以下しかいない数億レベルのリスナー数を持つトップアーティストの再生回数が総再生回数の多くを占めるようになってきていることがわかります。そういったランキングは世界の現状を知る上でものすごく大事なのですが、個人的には”ミドル層”ーー10万から100万人ほどのリスナー数を持つアーティストをチャート形式で見ることができると、より世界の音楽におけるリアルタイムな変化を感じとることができそうだなと思いました。従来の意味でのジャンル区分が無効になっている以上、今までにない形のランキングを発表することによってコミュニティ内でのトップアーティストがわかるようになってほしい。たとえば特定の人気プレイリストをフォローしているリスナーによる再生回数のランキングなども面白そうです。そうしてヒットチャートが多様化することが、リスナーにとってもより豊かな音楽体験につながるのではないかと思います」
2010年代、音楽の聴き方に革命を起こしたストリーミングサービスの勃興。今後これらのサービスは、2020年代以降のリスナーにどのような影響を与えていくのだろうか。
(文=中村拓海)