RADWIMPSが新たに引き出した三浦透子の魅力とは? 「祝祭」「グランドエスケープ」で放たれる強い存在感

 三浦が歌った主題歌2曲はいずれもアッパーチューン。バンドやピアノ、電子音、手拍子などによるサウンドが鳴るなか、ボーカルはそのきらびやかさに押しつぶされることなく、強い存在感を示していた。喩えるならば、はじき絵におけるクレヨンだろうか。水彩絵の具が彩るカラフルな世界から、くっきりと浮き出る、一本の線。特に「グランドエスケープ」のサビでは、男声コーラスを重ね合わせることにより、彼女の歌がかえってクリアになっている。

 『天気の子』の主人公は、離島から逃げ出すように上京した男子高校生・帆高と、天候を変える能力を持つ少女・陽菜の2名。例えば「祝祭」の〈君の言葉はなぜだろう すべて映画で言うところの/クライマックスの決め台詞 のように大それていて好き〉というフレーズが「ねえ、今から晴れるよ」と笑う陽菜の姿を連想させるように、「祝祭」でも「グランドエスケープ」でも歌詞では“帆高から見た陽菜像”が描かれている。穂高の惹かれた陽菜とは、よく笑いよく泣き、自分の感情に正直で、身軽に動くことのできる人物(もちろん実際は陽菜には陽菜なりの背負っているものがあり、後に穂高もそれを知ることになるが)。野田や新海は、建て前や忖度とは無縁な陽菜のキャラクター性を、まだ透明な三浦の歌声に託したのだろう。

祝祭 (Movie edit) feat. 三浦透子 RADWIMPS MV

 「グランドエスケープ」は物語のクライマックス、陽菜の生存と世界の平和を天秤にかけざるをえなくなった穂高が決断をしたあとのシーンで流れる。あの曲の一人称〈僕ら〉は君と僕(≒帆高と陽菜)と解釈することもできるが、僕の心の中にいるあらゆる僕――つまり、“本能からの声”を指すのだと読むこともできる。穂高が陽菜から学び、そして作中に登場する大人たちが手放したものとして描かれていた“本能からの声”を三浦が体現していたのだとしたら、その歌がスクリーンを突き抜けて、現実を生きる私たちの心を掴むことができたのも合点が行く。初の『紅白』出場となる彼女は、どんな歌声を聴かせてくれるのだろうか。楽しみにしていたい。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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